ルノー・12

ルノー・12（Renault 12）

ルノー・12は、1969年にフランスの自動車メーカーであるルノーによって発表された自動車です。このモデルは、開発が1965年に始まり、当時の他の車種の隙間を埋める中間車両としての役割を持っていました。設計の目的は、訪れる市場での成功を狙い、経済的かつ広々とした居住空間を提供することでした。

開発の背景

ルノー・12の開発は、「プロジェクト117」と名付けられ、リアエンジン車であるR8と新たに登場したR16の中間モデルとして位置づけられました。ルノー・12は、シンプルな構造を持ちながらも、高い生産効率性を実現し、発展途上国向けのライセンス生産にも適していました。この結果、フランス国内だけでなく多くの国で生産されることとなります。

機構とデザイン

ルノー・12は、フロントエンジン、前輪駆動の設計で、R16と多くのパーツを共有していましたが、独自の特徴も持っていました。エンジンは前方に配置されており、通常のフロアシフトが可能なレイアウトになっていました。サスペンションに関しても、他モデルの独立懸架とは異なり、リアが固定軸で構成されていました。

その外観は、一般的な3ボックスセダンであり、主にハッチバック車両が主流であったルノーのラインナップの中でも異色の存在でした。エンジンは水冷直列4気筒OHVで、1,289 ccの排気量を持っていましたが、デザイン的にはシンプルで控えめでした。にもかかわらず、その居住性や快適性、量販に必要なパフォーマンスは評価され、欧州の自動車ジャーナリズムからも好意的に迎えられました。

モデルの変遷

ルノー・12は、発表当初は4ドアセダンの「L」と「TL」の2グレードが設定されていましたが、翌1970年には5ドアのワゴンモデルと、高性能版の「R12ゴルディーニ」も加わりました。ゴルディーニには高出力のエンジンが搭載され、スポーティーな仕様となったものの、前輪駆動になったことが影響し、R8ゴルディーニの人気には及びませんでした。その後も、1,289 ccエンジンのバリエーションが増え、1972年にはさらなる高出力の「12TS」が追加され、1973年には3速ATを搭載した「12TR」が登場しました。

1975年のマイナーチェンジではデザインが一新され、ラインナップからはゴルディーニが外されました。その後、1980年まで生産が続けられました。

国際的な生産と影響

ルノー・12は、その設計の保守性から海外での現地生産が進みました。ルーマニアのダチアでは、R12の製造権を取得し、ダチア・1300として生産が始まりました。さらにトルコ、オーストラリア、ブラジルなどでも生産され、特にブラジル市場ではシャシーが他のモデルのベースとなるほどの人気を博しました。

コロンビアやアルゼンチンでも現地生産が行われ、特にアルゼンチンでは約45万台が長期にわたって生産されました。このように、ルノー・12は多国籍な生産体制を通じ、各国において親しまれ続けました。

結論

ルノー・12はそのユニークな設計と多様なモデル展開により、単なる移動手段を超えた存在となりました。居住性や経済性、デザインの個性が評価され、長い間自動車市場での重要な役割を果たしました。現在でも、本モデルはクラシックカー愛好家にとって魅力的な一台として、歴史的な価値を持っています。

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