ルノー・14

ルノー・14

ルノー・14（Renault 14/R14）は、フランスの自動車メーカー、ルノーが1970年代に製造・販売した小型ファミリーカーです。当時、フォルクスワーゲン・ゴルフやシトロエン・GSといった強力なライバルがひしめき合っていたヨーロッパのCセグメント市場において、ルノーの戦略的な主力モデルとして投入されました。

開発と生産

本モデルは、1970年に操業を開始したフランス北部にあるドゥエー工場の主要生産車種として位置づけられました。開発にあたり、ルノーはそれまで縦置きFFレイアウトに固執していましたが、ルノー・14で初めて横置きFF方式を採用するという大きな転換を図りました。このパワートレインは、当時のPSA（プジョー）との共同開発によるもので、先行してデビューしていたプジョー・104と共通のエンジンおよびギアボックスが用いられています。

ボディタイプは、実用性の高い5ドアハッチバックのみが展開されました。

デザインと評価

ルノー・14のスタイリングは、シンプルでありながら非常に先進的なものでした。鋭角的なウェッジシェイプや、前後のフェンダーに与えられた立体的な膨らみといったデザイン要素は、他の自動車メーカーが後の時代になって採用するトレンドを先取りしていました。この革新性が専門家筋からは高く評価され、1976年には工業デザイン賞を受賞しています。

しかしながら、その斬新なデザインを一般大衆にアピールするために企画された、車体を洋梨に例えた広告キャンペーンは、かえって消費者の間で困惑を招き、不評を買って早期に打ち切りとなるなど、マーケティング面では成功しませんでした。

メカニズム

搭載されたエンジンは、デビュー当初はプジョー・104と共通の1,218cc SOHC直列4気筒（X5G型、最高出力58hp/43kW）でした。このエンジンは、プジョー独特のレイアウトで搭載されており、車体後方に72度傾けられ、その真下にギアボックスが配置されていました。エンジンの上に生まれた空間にはスペアタイヤを格納できる構造となっており、これはフィアットのダンテ・ジアコーサやBMCのアレック・イシゴニスのFF方式とは異なる独創的なものでした。

1979年には、より排気量の大きい1,361cc（X6J型、最高出力69hp/51kW）エンジンを搭載するTSグレードが追加されました。

トランスミッションは、当初4段マニュアルトランスミッションが標準でしたが、1982年からはTSに5段マニュアルトランスミッションが標準装備となり、他のグレードでもオプションで選択可能となりました。

室内空間と販売状況

ルノー・14は、広い室内空間や、フルフラットに折りたたむことができ、さらには取り外しも可能なリアシートなど、使い勝手の良さもセールスポイントとしていました。

しかし、販売面ではスタートから苦戦を強いられました。加えて、特に初期のモデルにおいて、ボディの早期腐食といった品質問題が発生したこともあり、車両の評判は悪化の一途をたどることになります。

マイナーチェンジと終焉

ルノーは状況を打開するため、1980年にマイナーチェンジを実施し、フロントマスクなどを小変更した「フェイズ2」へと移行しました。その後、装備の充実などを図ることで評価の回復を図りましたが、初期のネガティブなイメージを完全に払拭することは困難でした。

結果として、ルノー・14は約7年という比較的短いモデルライフで生産を終えることとなりました。総生産台数は999,193台でした。後継モデルは、ルノー9および11に引き継がれました。

その他

本モデルは日本市場への正規導入は行われませんでした。

車名の「14」は、フランス語では「キャトーズ」（quatorze）と読みます。

参考資料：
* ルノー（Renault SA）公式ウェブサイト

（この項目は、関連資料に基づき作成されたものです。）

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