ルノー・30

ルノー30：フランスが生んだ大型ハッチバックの傑作

ルノー30（Renault 30、R30）は、フランスの自動車メーカー、ルノーが1975年から1983年にかけて製造販売した乗用車です。フランス語で「30」は「トラント (trente)」と発音されます。この車は、それまで大衆車に力を入れてきたルノーにとって、久々の挑戦となる大型車市場への進出を象徴するモデルでした。

戦後フランス自動車史における挑戦

ルノー30の開発背景には、当時隆盛を極めていた大型車市場への参入という野望がありました。そのため、ルノーはプジョー、ボルボと共同開発したPRVエンジンを搭載することにしました。このエンジンは、ルノー30のパフォーマンスと信頼性を高める上で重要な役割を果たしました。また、当時としては画期的だった前輪駆動方式を採用することで、走行性能の向上にも貢献しています。

さらに、ルノー16で成功を収めた5ドアハッチバックスタイルを、最上級モデルであるルノー30にも採用した点が特筆されます。このスタイルは、広々とした室内空間と実用性の高さを両立し、多くの消費者に受け入れられました。

R20：4気筒モデルの登場

ルノー30のデビューから8ヶ月後には、直列4気筒エンジンを搭載したR20が追加されました。R20は、エンジンとヘッドライト（R30は丸型4灯、R20は矩形2灯）を除けば、R30と基本的に同じ車体を使用していました。この2つのモデルは、9年間で合計62万台以上も生産され、ルノーの販売に大きく貢献しました。

モデルバリエーションと進化

ルノー30は、販売期間中にいくつかのモデルチェンジを受けました。1975年3月の発売当初は、2,664cc V6エンジンを搭載したTSモデルがラインナップされ、4速マニュアルトランスミッションまたは3速オートマチックトランスミッションを選択できました。パワーステアリング、前席パワーウインドウ、セントラルドアロックなどを標準装備した豪華な仕様でした。

1977年から1978年モデルでは、最高出力が125馬力に調整され、インストルメントパネルのデザインも変更されました。オプションとしてミシュランTRXタイヤと専用ホイールが用意されるなど、高級感をさらに高める工夫が凝らされました。

1978年から1979年モデルでは、全車種にリアフォグランプと後席シートベルトが標準装備となり、安全性能が向上しました。また、R30TSの出力は128馬力に向上しました。

1978年10月には、トップモデルとしてR30TXが登場しました。ボッシュ・Kジェトロニック燃料噴射装置を搭載したこのモデルは、141馬力の高出力と5速マニュアルトランスミッションまたは3速オートマチックトランスミッションを選択できる点が特徴でした。アルミホイール、全ドアパワーウインドウ、電動サンルーフ、4席ヘッドレスト、ベロア内装などの豪華装備が充実していました。

1979年から1980年モデルでは内装デザインが刷新され、ルノー・フエゴを思わせるスポーティな雰囲気となりました。1980年から1981年モデルでは、R30TSが生産中止となり、R30TXに一本化されました。TXモデルのバンパーデザインも変更されています。

1982年には、R20のディーゼルエンジンをターボ化したR30ターボDが追加されました。このモデルは、85馬力の強力なトルクを誇り、実用性を重視するユーザーに好評でした。

1983年には、後継車であるルノー25への移行に伴い、R20と共に生産が終了しました。

日本市場でのR30

ルノー25が日本市場で比較的多く輸入されたことから、R20/R30にも一定の需要があったと考えられます。しかし、R30は対米輸出仕様が存在しなかったこともあり、日本の正規輸入代理店は正式な輸入を行いませんでした。1980年代以降、少数ながら30TXが輸入された事例があります。

まとめ

ルノー30は、ルノーが大型車市場に挑戦した意欲的なモデルであり、高級感と実用性を両立させたデザイン、そして共同開発された先進的なエンジンなどが特徴です。その存在は、戦後のフランス自動車史において重要な位置を占めています。

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