ルノー・4CV

ルノー4CV：フランス国民車誕生秘話

ルノー4CVは、1946年から1961年までフランスのルノー社が製造した小型乗用車です。モデル名は「4馬力」を意味しますが、これはフランスの旧自動車課税基準に由来し、実際の馬力とは異なります。フォルクスワーゲン・タイプ1の影響を受け、リアエンジン・リアドライブ方式を採用した経済的な国民車として設計されました。フランスで初めて100万台以上の販売を達成した、まさに国民的愛車と言えます。

4CVの構造と性能

4CVは、軽量なフルモノコック構造の4ドア4人乗りセダンです。前後独立懸架のコイルスプリングサスペンション、後部座席に縦置きされた水冷直列4気筒OHVエンジンを搭載。ステアリングは操縦性に優れたラック・アンド・ピニオン式でした。

初期モデルは760cc、17馬力でしたが、後に748ccに減少されました。この変更は、750ccがレースのクラス分け基準であったためです。戦後の復興期において、小型車にもレース出場を考慮した変更は注目に値します。3速MTと600kg弱の車体により、最高速度100km/hを達成しました。

開発秘話：戦時下とポルシェとの関わり

4CVの開発は、フランスがナチス・ドイツの占領下にあった時代に秘密裏に進められました。フェルナン・ピカール率いる設計チームが、社会情勢を反映した経済的な小型車の開発に取り組みました。1942年には最初の試作車が完成し、その後3年間で2台の試作車が製作されました。

しばしば、フェルディナント・ポルシェが設計に関わったという俗説が流布していますが、これは事実ではありません。終戦後、ルノーはポルシェに試作車の評価と助言を求めたに過ぎず、ポルシェは設計を賞賛し、サスペンション改良の助言を行いました。

1944年の解放時には、ルノーは小型車（4CV）と中型セダンの2つの新型車の開発計画を進めていました。社会情勢から小型車へのニーズが高く、中型セダン「ルノー・フレガート」の発売は1950年まで遅れました。

発売後と生産

1946年のパリサロンで発表された4CVは、「バターのかたまり」という愛称で呼ばれました。その形状と、ドイツ軍が使用したサンドイエローの色合いが由来です。初期モデルはサンドイエローが多く使用されました。生産においてはトランスファーマシンの導入による効率化が進められ、近代的な量産体制が確立されました。

発売当初は経済情勢の影響で販売は低迷しましたが、徐々に軌道に乗り、戦後国営化されたルノーの経営を支えるまでに成長しました。1949年にはフランスで最も人気のある車となり、生産は10年以上継続されました。

1956年に後継車ルノー・ドーフィンが登場しましたが、4CVは低価格モデルとして1961年まで生産され続けました。総生産台数は1,105,547台に達し、フランス車初のミリオンセラーとなりました。事実上の後継車として、ルノー4が登場しました。

モータースポーツでの活躍

優れたシャーシ設計と操縦性から、4CVはモータースポーツでも活躍しました。改造も容易で、ル・マン24時間レースやミッレミリアなど、数々のレースで優勝を飾りました。アルピーヌとのコラボレーションにおいても、4CVをベースとしたアルピーヌA106が製作され、後のWRC優勝車であるアルピーヌA110へと繋がる技術の礎となりました。

日野自動車によるライセンス生産

日本においては、日野自動車が1953年からルノーとの契約のもと、4CVのノックダウン生産を開始しました。1958年には完全国産化を達成し、フランス本国での生産終了後も1963年まで生産されました。日本の悪路に適合するよう足回りやエンジンを強化し、車体長も延長されました。愛称は「亀の子ルノー」と呼ばれ親しまれました。

4CVは、戦後の復興期におけるフランスの国民車として、そして日本の自動車産業発展にも貢献した重要なモデルと言えます。その歴史的意義と魅力は、今なお人々を惹きつけています。

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