ルーカス・マティセー

ルーカス・マティセー（Lucas Matthysse）は、1982年9月27日にアルゼンチンのチュブ州トレレウで生まれた元プロボクサーです。そのキャリアを通じて、スーパーライト級とウェルター級の2階級で世界王座を獲得し、強打を武器にしたアグレッシブなファイトスタイルで知られました。

アマチュア時代

プロ転向前、マティセーはアマチュアボクシングで経験を積みました。2001年には北アイルランド・ベルファストで開催された世界ボクシング選手権にライトウェルター級で出場しましたが、初戦で敗退。2003年のドミニカ共和国・サントドミンゴでのパンアメリカン競技大会でも、ライトウェルター級の初戦でブレイディス・プレスコットに敗れるなど、国際大会では苦戦を強いられました。また、後にプロで激しいライバル関係となるマルコス・マイダナとはアマチュア時代に4度対戦しており、その戦績は3敗1引き分けと一度も勝利を挙げることはできませんでした。

プロキャリアの開始と地域タイトル獲得

2004年6月4日、故郷のチュブ州トレレウでプロデビュー。レアンドロ・アルマグロを相手に2回TKO勝利を飾り、幸先の良いスタートを切りました。
キャリア初期はアルゼンチン国内を中心に試合を重ね、KO勝利を量産します。2006年4月1日にはビクトル・ダニエル・リオスとのWBOラテンアメリカスーパーライト級王座決定戦を制し、初のタイトルを獲得。その後もこのタイトルを防衛し、順調にキャリアを積んでいきました。

世界挑戦権を巡る戦い

世界ランキングを上げたマティセーは、2010年11月6日、アメリカのニュージャージー州で元世界王者のザブ・ジュダーと対戦。これはIBFおよびWBO世界スーパーライト級王座への挑戦権をかけた重要な一戦でしたが、接戦の末に1-2の判定負けを喫し、プロ初黒星となりました。この敗戦から立ち直り、2011年1月にはデマーカス・コーリーを破ってWBOインターコンチネンタルスーパーライト級王座を獲得。しかし、同年6月にはデボン・アレクサンダーにも判定で敗れ、再び世界トップクラスへの壁にぶつかります。

暫定世界王座獲得と防衛

困難を乗り越え、マティセーは再び世界戦線に浮上します。2012年9月8日、ネバダ州ラスベガスでアホセ・オルセグンとWBC世界スーパーライト級暫定王座決定戦を行い、10回TKO勝利で悲願の世界タイトル（暫定）を獲得しました。
暫定王者として、マティセーは強烈なパンチ力を存分に発揮します。2013年1月にはマイク・ダラス・ジュニアを初回KOで一蹴して初防衛に成功。同年5月にはIBF世界王者のラモン・ピーターソンとノンタイトル戦ながら対戦し、3度のダウンを奪った末に3回TKOで圧勝。この試合はスーパーライト級リミットを超えたキャッチウェイトで行われたにも関わらず、WBC暫定王座の防衛回数としてカウントされるという異例の事態となりました。

ビッグマッチと激闘

WBC暫定王者としての強さを見せつけたマティセーは、WBAスーパー・WBC統一世界スーパーライト級王者のダニー・ガルシアとの統一戦に臨みます。2013年9月14日、ボクシングの聖地ラスベガスでのビッグマッチとなりましたが、12回判定で敗れ、王座統一はなりませんでした。
ガルシア戦の敗北後、マティセーはWBCアメリカ大陸王座を再び獲得するなど再起を図ります。2015年4月には、同じ強打者として知られるルスラン・プロボドニコフと対戦。この試合は年間最高試合候補とも謳われた激しい打撃戦となり、フルラウンドの末にマティセーが判定勝利を収めました。

世界王座返り咲きと階級制覇への挑戦

暫定ではない正規の世界王座を目指し、マティセーは2015年10月3日にWBC世界スーパーライト級王座決定戦でビクトル・ポストルと対戦しました。しかし、この試合でプロキャリア初のKO負けを喫し、王座獲得はなりませんでした。さらに、この試合で負った左目の眼窩底骨折により、予定されていたウェルター級転向戦が中止となるなど、試練が続きました。

怪我からの回復を経て、2017年5月にウェルター級での再起戦に勝利。そして、2018年1月27日、WBA世界ウェルター級レギュラー王座決定戦でティーラチャイ・クラティンデーンジムを8回KOで下し、2階級制覇を達成しました。この功績により、WBAの月間優秀選手に選出されました。

最後の戦いと引退

ウェルター級王者となったマティセーは、2018年7月15日に元世界6階級制覇王者のマニー・パッキャオを相手に初防衛戦を行いました。しかし、レジェンドを相手に苦戦し、7回TKO負けを喫して王座から陥落。この試合を最後に、マティセーは2018年8月2日に現役からの引退を表明しました。

ルーカス・マティセーは、その強烈なパンチと倒すか倒されるかのエキサイティングなファイトスタイルで、多くのファンに記憶されるボクサーです。幾度かの挫折を経験しながらも世界王座に輝き、ボクシング史にその名を刻みました。

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