ルーシー (アウストラロピテクス)

ルーシー：人類進化の扉を開いた化石

ルーシー（Lucy）は、1974年11月24日にエチオピアのアワッシュ川下流域で発見された、約318万年前の化石人骨です。アウストラロピテクス・アファレンシス（アファール猿人）に分類され、その中でも最初期に発見された個体の一つとして知られています。

発見の経緯

ルーシーを発見したのは、モーリス・タイーブ率いる国際アファール調査隊（IARE）です。調査隊には、ドナルド・ジョハンソン、メアリ・リーキー、イヴ・コパンといった著名な古人類学者も参加していました。

1973年の第一次調査で脛骨の一部を発見した後、1974年11月24日、ジョハンソンとトム・グレイはアワッシュ川近くで発掘調査を行いました。酷暑の中、調査を終えようとした時、ジョハンソンは以前調査員が調べていた小さな谷底に立ち寄ることを思い立ちます。そこで偶然、上腕骨の断片を発見し、周辺を調査した結果、椎骨、骨盤、肋骨、顎骨など、多数の骨の破片が次々と見つかりました。

調査隊はキャンプに戻り、発見を祝いました。ビートルズの楽曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」が繰り返し流れる中、この化石人骨に「ルーシー」という愛称が与えられました。

ルーシーの重要性

ルーシーの骨格は約40%がまとまって発見されており、これは当時の古人類学において画期的な出来事でした。骨盤の形状から女性であることが判明し、身長は約1.1m、体重は約29kgと推定されています。

ルーシーの骨格は、類人猿に近い脳容量を持ちながらも、直立二足歩行をしていた痕跡を示しています。これは、人類の進化において、脳の大型化よりも先に二足歩行が獲得されたという説を裏付ける重要な証拠となりました。

ただし、後の研究では、アファール猿人が現代人の直接的な祖先ではない可能性も指摘されています。

ルーシーの骨格の特徴

二足歩行の痕跡: 外反足であり、大腿骨の形状も直立二足歩行に適応していることを示唆しています。
骨盤: 類人猿よりもヒトに近い形状をしており、上半身を支える機能を備えていたと考えられています。
* 頭蓋: 脳容量は400cc未満と推定され、チンパンジーとほぼ同程度です。

現在のルーシー

ルーシーのオリジナル標本は、エチオピアの国立博物館に保管されており、一般公開はされていません。代わりに石膏模型が展示されています。アリゾナ州立大学人類起源研究所やクリーブランド自然史博物館には、ルーシーの複製や復元された姿が展示されています。

ルーシーが与えた影響

ルーシーの発見は、人類進化の研究に大きな影響を与えました。彼女の骨格は、二足歩行の進化や人類の祖先に関する理解を深める上で重要な役割を果たしています。また、ルーシーは世界的に有名な化石人骨となり、多くの書籍やドキュメンタリーで紹介されています。

ルーシーは、人類の進化の歴史を物語る貴重な存在として、これからも人々に語り継がれていくでしょう。

アワッシュ川下流域は、1980年にユネスコの世界遺産に登録されています。ルーシーをはじめとするアファール猿人の化石人骨群が発見された場所であり、人類の起源を研究する上で重要な地域となっています。

もう一度検索