レイカー航空

レイカー航空：格安航空の先駆け

レイカー航空は、1966年から1982年まで存在したイギリスの航空会社です。格安航空会社の先駆けとして知られ、その革新的なビジネスモデルは、後の航空業界に大きな影響を与えました。

設立と初期の展開

レイカー航空は、航空業界で豊富な経験を持つ実業家フレデリック・レイカー（後にナイトの称号を得る）によって設立されました。当初は、アフィニティ・チャーター便（特定の会員グループ向けの団体ツアー）専門の航空会社としてスタートし、イギリスのガトウィック空港を拠点に、ヨーロッパ各地のリゾート地への運航を行っていました。

「カルテル」への挑戦

当時、航空業界は既存の大手航空会社が形成する「IATAカルテル」によって支配されており、高額な国際航空運賃が設定されていました。レイカー航空は、この状況に風穴を開けるべく、アフィニティ・チャーター便で実績を積み重ね、その後、短中距離路線にBAC 1-11型機を導入、さらにボーイング707-138型機を購入するなど、事業規模を拡大していきました。

1970年には、高収益路線であるオーストラリア路線への参入を計画しましたが、既存の大手航空会社の妨害により、この計画は頓挫しました。しかし、1973年4月に、英米両国の航空当局がアフィニティ・チャーターの基準を大幅に変更したことで、レイカー航空は新たなチャンスを得ます。

「スカイトレイン」の成功

レイカー航空は、「アドバンスド・ブックキング・チャーター」制度を利用し、格安運賃で英米間路線に参入。1977年には、「スカイトレイン」というブランドで、ガトウィック空港とニューアーク国際空港を結ぶ定期便の就航に成功しました。「スカイトレイン」は、機内サービスを簡略化する代わりに、格安運賃を提供するという革新的なサービスで、多くの乗客の支持を集めました。

その後、ロサンゼルス国際空港など、アメリカの他の主要都市にも乗り入れを開始し、1981年には、大西洋横断路線におけるシェアで43社中6位にまで成長しました。

経営状況の悪化と破産

レイカー航空は順調に事業を拡大していましたが、1979年の第二次オイルショックによる燃料価格の高騰、アメリカン航空のDC-10型機墜落事故による運航停止、さらにイギリス経済の不況などの要因が重なり、経営状況が悪化しました。

また、大手航空会社がレイカー航空に対抗して割引運賃を導入したことで、顧客が減少し、負債を抱えていたレイカー航空の経営はさらに厳しくなりました。主要取引銀行からの融資が打ち切られ、最終的に1982年2月5日、レイカー航空は破産しました。

破産後の動きと「共同謀議」

レイカー航空の破産後、管財人による調査の結果、ブリティッシュ・エアウェイズなどの大手航空会社が、レイカー航空の破産を企てた「共同謀議」があったことが判明しました。

1985年には、ブリティッシュ・エアウェイズなど12社が、フレディ・レイカーとレイカー航空の無効になった航空券を持つ利用客に対し、計5600万アメリカドルを支払うことで和解しました。

レイカー航空の遺産

レイカー航空は短命に終わりましたが、その革新的なビジネスモデルは、後の格安航空会社の設立に大きな影響を与えました。特に、中長距離国際線における格安運賃と簡略化されたサービスは、ピープル・エクスプレス、ライアンエア、オアシス香港航空など、多くの航空会社に模倣され、航空業界の価格競争を加速させました。

また、レイカー航空の創業者であるフレディ・レイカーは、1992年と1996年に同名の格安航空会社を設立しましたが、いずれも現在は運航していません。しかし、彼の残した遺産は、現代の航空業界においても、その影響力を持ち続けています。

主な機材

ブリストル ブリタニア
BAC-111
ボーイング707-138
マクドネル・ダグラス DC-10-10/30
エアバスA300B4-200

レイカー航空を扱った作品

ドキュメンタリーTV番組『一流企業:華麗なる失策事例』シリーズ 第3回（ディスカバリーチャンネル）

関連項目

* かつて存在した航空会社の一覧

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