ブリストル ブリタニア

ブリストル ブリタニア：静かなる巨人

ブリストル ブリタニア（Bristol Type 175 Britannia）は、イギリスのブリストル社が開発した長距離ターボプロップ4発旅客機です。第二次世界大戦後、ダグラス DC-4の後継機を目指して開発が始まりました。その静かでスムーズな飛行から「ささやく巨人」（The Whispering Giant）という愛称で親しまれました。

開発の経緯

1947年に開発が開始されたブリタニアは、1952年に初飛行を迎えましたが、エンジンに問題が発生し、開発は難航しました。その間に2機の試作機が失われるというアクシデントも発生しました。また同時期には、世界初のジェット旅客機であるデ・ハビランド DH.106 コメットIや、ボーイング707、ダグラス DC-8といったジェット旅客機が開発され、航空業界はジェット機時代へと突入しました。

このような状況下で、ブリタニアは1960年の生産終了までにわずか85機しか生産されませんでした。しかし、その性能は西側の長距離ターボプロップ旅客機の中で最高峰と評価されています。同じイギリス製の中距離旅客機であるビッカース バイカウントと比較すると、生産数ははるかに少ないものでした。

ブリタニアの開発は、第二次世界大戦中にイギリスの旅客機開発を審査したブラバゾン委員会の答申に基づいています。ブリストル社は、この委員会の答申に基づいて、Type IとType IIIの旅客機開発契約を得ました。当初は48人乗りとして計画されていましたが、様々な紆余曲折を経て、より大型のブリタニアが完成しました。

しかしながら、開発の遅れが響き、受注は伸び悩みました。量産型である100型シリーズは、主に中距離帝国ルート向けに開発されましたが、英国海外航空（BOAC）にわずか15機が引き渡されたに過ぎません。イギリス空軍には、貨客混載タイプの250型が23機受注されましたが、胴体を延長した300型ではBOACの18機以外には大きな受注を得ることができず、商業的な成功を収めることはできませんでした。

ブリタニアは、デ・ハヴィランド・コメット4の導入前年の1957年に、ようやくロンドン-シドニーやロンドン-東京などの主要路線への就航を開始しました。しかし、1960年代以降になると、コメットやボーイング707、ヴィッカース VC-10などのジェット機が導入され、ブリタニアはモナーク航空などのチャーター航空会社に売却されたり、貨物機に改造されたりし、1970年代には姿を消しました。

その他の展開

カナディア社は、1950年代にブリタニアの製造ライセンスを取得し、軍用輸送機および貨物機であるCC-106・CL-44シリーズを開発・生産しました。

導入航空会社

ブリタニアは、以下の航空会社で導入されました。

英国海外航空（現在の英国航空）
キャセイパシフィック航空
カナダ太平洋航空
クバーナ航空
エル・アル航空
アエロメヒコ航空
カレドニアン航空
モナーク航空
レイカー航空

注釈

アドルフ・アイヒマン: モサドがアルゼンチンで逮捕したアイヒマンをイスラエルへ移送する際に、エル・アル航空のブリタニアが使用されました。
ブラバゾン委員会: 第二次世界大戦後のイギリスにおける旅客機開発を審査した委員会。
ハンドレページ マラソン: ブラバゾン委員会の答申4機種の1つ。
ビッカース バイカウント: ブラバゾン委員会の答申4機種の1つ。
デ・ハビランド DH.106 コメット: ブラバゾン委員会の答申4機種の1つ。

ブリストル ブリタニアは、開発には苦労したものの、その静かで快適な飛行は多くの人に愛されました。ジェット機時代への移行とともに旅客機としての役割を終えましたが、その歴史は航空史に深く刻まれています。

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