レオポルト・ホフマン

1738年 8月14日、帝都ウィーンに生まれたレオポルト・ホフマン（Leopold Hofmann）は、オーストリアの古典派音楽を代表する作曲家、そしてヴァイオリン奏者でした。彼はウィーンのシュテファン大聖堂で楽長を務め、当時の音楽界で重要な役割を担いましたが、幻想文学で知られるE.T.A.ホフマンとは別人であり、注意が必要です。

生涯とキャリア

ホフマンは、学識豊かな宮廷官吏を父に持ち、恵まれた環境で育ちました。7歳という幼さで、神聖ローマ皇帝フランツ1世シュテファンの皇妃エリーザベト・クリスティーネの礼拝堂合唱団員に加わります。その後、ウィーン古典派の先駆者として知られるゲオルク・クリストフ・ヴァーゲンザイルに作曲を、そしてヴァイオリンの名手ジュセッペ・トラーニにヴァイオリンを師事し、音楽家としての基礎を築き上げました。

音楽家としてのキャリアは、1758年にウィーンの聖ミヒャエル教会で「音楽家」（Musicus）の地位を得たことから始まりました。順調に昇進を重ね、1764年には聖ピーター教会で合唱指揮者に、そして1766年には同教会の楽長に就任しました。さらに1769年には、オーストリア皇室の音楽教師として招かれ、幼い皇族たちにヴァイオリンや鍵盤楽器の指導にあたるなど、教育者としても手腕を発揮しました。

そのキャリアの頂点は、1772年にウィーン音楽の中心地であるシュテファン大聖堂の楽長に任命されたことでしょう。この要職は、当時のウィーン楽壇における最高の地位の一つでした。

モーツァルトとの関係

ホフマンの晩年には、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトとの興味深いつながりがありました。1791年、ホフマンは自身の健康問題を理由に、モーツァルトを俸給のない副楽長に任命するよう要請しました。モーツァルトは、ホフマンが病に倒れれば自分が後任の楽長になれると期待していたようです。しかし、ホフマンは病から回復し、その後も1793年に亡くなるまで楽長の座に留まりました。一方、モーツァルトは1791年末に急逝したため、シュテファン大聖堂の楽長に正式に就任することはありませんでした。ホフマンの死後、楽長の地位はヨハン・ゲオルク・アルブレヒツベルガーに引き継がれました。

同時代の評価

ホフマンは、同時代の音楽家や批評家から高く評価されていました。フランツ・ヨーゼフ・ハイドンやクリストフ・ヴィリバルト・グルックといった大家と並び称されることもあり、ウィーン市や皇室からの度重なる栄誉や賞がその証左となっています。作曲家カール・ディッタース・フォン・ディッタースドルフは、ホフマンを特に優れた作曲家として特筆しています。後の時代、19世紀の指揮者オットー・ニコライは、彼をウィーン・ヴァイオリン楽派の創始者と呼びました。

しかし、ハイドンだけはホフマンに対して必ずしも好意的ではなかったようです。1781年にアルタリア出版社に宛てた手紙の中で、ハイドンはホフマンを「ホラ吹き」（Aufschneider）と皮肉っています。音楽史における評価は、時に多様な視点が存在することを示唆するエピソードです。

作品

ホフマンは多作な作曲家であり、様々なジャンルの作品を残しています。特に有名なものとしては、かつて誤ってヨーゼフ・ハイドンの作品とされていたニ長調のフルート協奏曲（Badley D3）が挙げられます。これ以外にも、12曲のフルート協奏曲を含む多数の協奏曲（ハープシコード、オーボエ、チェロ、ヴァイオリンなど）、宗教音楽、室内楽曲、ディヴェルティメント、そして67曲もの交響曲を作曲しました。早くも1760年には、その6曲の交響曲がパリで出版されており、当時の国際的な評価の高さがうかがえます。

現在、ホフマンの作品はNAXOSレーベルから複数のCDがリリースされており、再評価が進んでいます。作品は研究者ホラス・バッドリーによって整理されており、協奏曲などはBadley番号で識別されることが一般的です。彼の交響曲や協奏曲の詳細は、英語版ウィキペディアなどでリストとして確認できます。

（例）
交響曲ハ長調 Badley C8
交響曲ヘ長調 Badley F1
ヴァイオリン協奏曲変ロ長調 Badley Bb1
チェロ協奏曲ニ長調 Badley D3
* フルート協奏曲ト長調 Badley G3

レオポルト・ホフマンは、ウィーン古典派初期において重要な役割を果たした作曲家・演奏家であり、その作品と生涯は、当時の音楽界の様相を知る上で貴重な資料となっています。

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