レッド・ホルツマン

レッド・ホルツマン：ニューヨーク・ニックスを黄金時代に導いた名将

ウィリアム・"レッド"・ホルツマン（William "Red" Holzman, 1920年8月10日 - 1998年11月13日）は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ブルックリン出身のバスケットボール選手、そして指導者として輝かしいキャリアを築きました。身長178cm、体重79kgと小柄ながら、ポイントガードとして活躍し、後にヘッドコーチとしてニューヨーク・ニックスを2度のNBA制覇に導きました。その功績が認められ、1986年にはバスケットボール殿堂入りを果たしています。

選手時代の活躍

ホルツマンは、少年時代から地元のストリートバスケットボールでその名を馳せていました。高校最終学年の1938年には、ニューヨーク市の公立学校スポーツ選手殿堂入りを果たすなど、早くから才能を発揮していました。高校卒業後はボルチモア大学、後にニューヨーク市立大学シティカレッジに進学し、1942年に卒業。大学卒業後は海軍に入隊し、バスケットボールを続けました。

1945年に海軍を除隊後、ナショナル・バスケットボール・リーグ（NBL）のロチェスター・ロイヤルズに入団。1946年にはNBLで優勝を経験し、ロイヤルズがNBAに加盟した後の1951年にも優勝チームの一員として貢献しました。1946年と1948年には、オールNBLファーストチームにも選出されるなど、リーグを代表する選手として活躍しました。

ホルツマンは1953年までロイヤルズでプレイし、続く1953-54シーズンにはミルウォーキー・ホークスに選手兼監督として迎えられ、このシーズンを最後に選手としては引退しました。9年間の選手生活で496試合に出場し、生涯通算得点は3,668点、1試合平均得点は7.4点でした。

指導者としての手腕

ホルツマンは、ミルウォーキー・ホークス（1955年からはセントルイス・ホークス）で4年間監督を務め、83勝120敗、勝率40.8%という成績を残しました。ホークスでの監督時代には、後にスター選手となるボブ・ペティットが在籍していました。

ホークスでの監督を終えた後、1957年よりアシスタントコーチとしてニューヨーク・ニックスに加わり、翌年からはチーフスカウトも兼任しました。アシスタントコーチ時代のニックスは、勝率が5割に満たないシーズンが多く、監督も長く定着しないなど、リーグの弱小チームという位置づけでした。

しかし、ニックスはなかなか勝利を挙げられない状況でしたが、この時期には後にホルツマン指揮下の黄金時代を支えることになる選手たちがチームに加入しています。1965年にはビル・ブラッドリーとウィリス・リード、1967年にはウォルト・フレイジャーやフィル・ジャクソン、翌1968年にはデイブ・ディバッシャーがトレードでチームに加わりました。

1967-68シーズンの途中で、ホルツマンはアシスタントコーチから監督へと昇格。残りのシーズンを28勝17敗という好成績で終え、チームのシーズン成績は43勝39敗となりました。続く1968-69シーズンには54勝28敗を記録し、プレイオフではイースタン・ディビジョンの決勝まで進出。しかし、当時の強豪ボストン・セルティックスに2勝4敗で敗退しました。

翌1969-70シーズン、ニックスはリーグ首位の60勝22敗という成績を収め、ホルツマンは最優秀コーチ賞を受賞しました。プレイオフではNBAファイナルに進出し、もう一つの強豪ロサンゼルス・レイカーズを相手に4勝3敗で勝利し、ニックスは初の優勝を果たしました。

次の1970-71シーズンは52勝30敗の成績でしたが、プレイオフではイースタン・カンファレンス決勝でボルティモア・ブレッツに3勝4敗で敗れました。翌1971-72シーズン初めには、ニックスはトレードでアール・モンローを獲得。シーズン成績は48勝34敗でしたが、ニックスは再びNBAファイナルに進出し、このシーズン69勝13敗という圧倒的な成績を残したロサンゼルス・レイカーズに1勝4敗で敗れました。

翌1972-73シーズン、ニックスのシーズン成績は57勝25敗。2年連続でNBAファイナルに進出したニックスは、再びレイカーズと対戦し、この年は4勝1敗で勝利し、見事優勝を飾りました。

その後、ホルツマンは1977年までニックスの監督を務めましたが、勝率5割前後のシーズンが続き、1978-79シーズンの途中に再び監督職に戻り、4年間チームを率いましたが、同様の成績でした。ホルツマンは1982年を最後に監督職を退きました。

1953年以降、ホルツマンは18年間の監督生活で696勝604敗、通算勝率は.535を記録しました。ニックスの監督としては613勝484敗、勝率.558という成績を残しており、ニックスでの613勝は、彼の功績を称え、同チームで永久欠番扱いとなっています。ホルツマンはプロバスケットボール記者協会により1970年代最高の監督賞を与えられ、1985年にはバスケットボール殿堂へ推薦され、翌年殿堂入りを果たしました。

ホルツマンはディフェンスを重視する姿勢で知られており、「ディフェンスが良ければオフェンスも自ずと良くなる」という信念を持っていました。彼が指揮したニックスは、後に殿堂入りする選手を多数擁する才能あふれるチームでしたが、選手たちは無私の精神でプレイに取り組みました。ホルツマンの下でプレイし、後に監督として有名になったフィル・ジャクソンは、ホルツマンと当時のニックスの風潮が自身の監督としてのスタイルに影響を与えたと語っています。

引退後の生活

ニックスの監督を退いた後、ホルツマンは1991年より同チームでバスケットボールコンサルタントの役職に就き、1998年に白血病により78歳で亡くなるまでこの職を務めました。

レッド・ホルツマンは、その卓越した指導力と選手育成能力で、ニューヨーク・ニックスをNBAの頂点に導いた名将として、バスケットボール史にその名を深く刻んでいます。

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