レトロ (アルバム)

ニュー・オーダーの集大成『レトロ』：多様な魅力が詰まった4枚組アルバム

2002年、イギリスのロックバンド、ニュー・オーダーが発表した『レトロ (Retro)』は、単なるベストアルバムの枠を超えた、バンドの軌跡を凝縮した作品です。5枚目のベストアルバムとしてリリースされたこの作品は、4枚のCDから構成される豪華なボックスセットとなっており、日本のファンにも翌2003年に届けられました。

選りすぐりの楽曲、多彩な視点

このアルバムの最大の特徴は、選曲に4人の著名人が携わっている点です。それぞれのCDは、異なる視点からニュー・オーダーの音楽世界を切り取っています。

DISC 1「POP」: ジャーナリスト、ミランダ・ソーヤーが選曲したこのディスクには、「ブルー・マンデー」や「トゥルー・フェイス」といった代表的なシングルヒット曲が並びます。彼女ならではのポップな視点から、ニュー・オーダーの商業的な成功を支えた楽曲たちがセレクトされています。
DISC 2「FAN」: 音楽ジャーナリスト、ジョン・マクレディが選出したこのディスクは、アルバムの深部へと迫ります。『ロウ・ライフ』や『権力の美学』といった代表的なアルバムからの選曲に加え、シングルB面曲や映画サウンドトラックからの楽曲も含まれており、ニュー・オーダーの音楽的多様性を示す内容となっています。
DISC 3「CLUB」: マンチェスターの伝説的クラブ「ハシエンダ」のDJとしても知られるマイク・ピッカリングが選曲したこのディスクは、リミックスの宝庫です。「ブルー・マンデー」や「ビザール・ラヴ・トライアングル」といった代表曲が、様々なアーティストによるリミックスで新たな魅力を放ちます。
DISC 4「LIVE」: プライマル・スクリームのボビー・ギレスピーが選曲したこのディスクには、ライブパフォーマンスの魅力が凝縮されています。1980年代から1990年代にかけて行われたライブ音源が収録されており、当時の熱気を伝えます。様々な会場、時期のライブ音源が収録されている点も見どころです。

充実のブックレットと未発表音源

4枚のCDに加え、72ページにも及ぶブックレットが付属しているのも『レトロ』の特徴です。全曲の歌詞と対訳はもちろんのこと、メンバーへのインタビュー形式によるライナーノーツも収録。メンバー間の関係性や過去の活動について、貴重な情報が記されています。

さらに、海外盤にはボーナスディスクが追加されていましたが、日本盤には4枚組がリリースされました。これらの収録曲には、初収録となる楽曲や、これまで未発表だったライブ音源などが含まれており、コレクターにとっても大きな魅力となっています。

各ディスクの収録曲詳細

各ディスクには、ニュー・オーダーの代表曲からレアな楽曲まで、幅広い選曲が収録されています。特に、映画『ザ・ビーチ』のサウンドトラックに収録された「ブルータル」や、映画『サルベーション』のサウンドトラックに収録された「Let's Go」など、オリジナルアルバムには収録されていない貴重な楽曲も含まれています。また、リミックス盤には、著名なリミキサーによるアレンジが施された、ダンスミュージックとしても楽しめる楽曲が収録されています。ライブ音源においては、長年に渡るニュー・オーダーのライブの歴史が垣間見えます。

まとめ

『レトロ』は、単なるベスト盤ではなく、ニュー・オーダーというバンドの多様な側面を凝縮した、究極のアンソロジーと言えるでしょう。音楽ファンのみならず、音楽史を学ぶ上でも貴重な一枚となるでしょう。それぞれのディスクに込められた選曲者の想いと、72ページに及ぶブックレットに収められた詳細な情報、そして未発表音源の存在は、このアルバムをより魅力的なものとしています。ニュー・オーダーの音楽世界を深く理解したい方には、必聴のアルバムです。

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