レ・ボレアード

オペラ『レ・ボレアード』について

『レ・ボレアード』（原題: Abaris ou les Boréades）は、フランスの作曲家ジャン＝フィリップ・ラモーが手がけた全5幕からなるオペラ、または抒情悲劇です。パリ・オペラ座の委嘱により作曲されましたが、初演されることなく長らく忘れられていました。リブレットはルイ・ド・カユザックによるものと考えられています。

作品の概要

1763年にリハーサルが開始されたものの、初演に至らず放棄された本作は、ラモーの死後、長い間日の目を見ませんでした。しかし、1964年にフランス放送協会がラジオ放送を行ったことをきっかけに、その存在が再び注目されるようになります。1975年にはジョン・エリオット・ガーディナーの指揮によってコンサート形式での全曲上演が実現し、1982年にはエクサン・プロヴァンス音楽祭で初の舞台上演が行われ、大きな反響を呼びました。

音楽的特徴

『レ・ボレアード』は、ラモーの他の音楽悲劇とは一線を画す作品でありながら、バロック美学の集大成とも言える傑作です。特に、器楽曲（サンフォニー）の豊かさや力強さが特徴的で、嵐や風の場面は圧巻です。また、アルフィーズ役の抒情性と優しさが、対立するボレアスの怒りの音楽と見事に調和しています。この作品は、ラモーの円熟期における音楽的創意工夫を示すものであり、後世の音楽家にも大きな影響を与えました。

あらすじ

物語は、バクトリアの女王アルフィーズが、ボレアードの王子たちの求婚を拒み、異邦人のアバリスを愛してしまうところから始まります。神殿での場面、アムールの登場など、さまざまな出来事が起こりますが、最終的にアバリスとアルフィーズの愛が成就するという結末を迎えます。

第1幕

宮廷の人々が狩りをする中、女王アルフィーズは、夫を選ぶように促されます。彼女はボレアードの王子たちの求婚を拒み、アバリスへの愛を告白します。セミールは、ボレアスの怒りを恐れ、彼女に考え直すよう懇願します。

第2幕

アバリスはアポロン神殿で、自分の出自について悩んでいます。大祭司アダマスは、アバリスが神の血筋を引く者であることを明かします。アルフィーズは、夢の中でボレアスが宮殿と王国を破壊すると脅されたと語ります。アバリスは、司祭としての立場を忘れ、アルフィーズに愛を告白し、彼女もまた同じ気持ちであることを打ち明けます。ボレアスとオリティの伝説を模倣したバレエが踊られ、アムールが登場し、アルフィーズに曖昧な言葉が書かれた矢を渡します。

第3幕

アルフィーズは、自分の夢の恐怖やボレアスへの嫌悪感から、様々なことを思い悩んでいます。アバリスは、自分が王位の犠牲になることを懸念しています。アルフィーズは、愛する男と結婚するために女王の座から退位すると宣言します。アバリスは女王を守る覚悟を示すが、カリシスとボリレはボレアスに復讐を訴え、嵐が起こり、アルフィーズはつむじ風にさらわれてしまいます。

第4幕

嵐が続く中、アバリスは悲嘆に暮れています。アダマスは、アバリスに愛を捨てて国を救うように告げます。アバリスはアポロンに助けを求め、讃歌と雄弁を司る女神ポリムニーが応じます。アバリスは風に立ち向かい、ボレアスに戦いを挑みます。

第5幕

ボレアスの領地で、アルフィーズはボレアスから王子の一人を夫として迎えるよう迫られます。アバリスが現れ、ボレアスたちに立ち向かいます。アポロンが登場し、アバリスがボレアスの血を引く息子であることを明かします。ボレアスは敗北を認め、恋人たちが再会し、愛と喜びが約束されるという結末を迎えます。

日本初演

日本初演は、2023年12月に北とぴあさくらホールにて、セミ・ステージ形式で行われました。

楽器編成

木管楽器: ピッコロ2、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2
金管楽器: ホルン2
打楽器: ティンパニ
弦楽合奏（ヴィオラは2つに分割されている）
チェンバロ2

参考文献

Philippe Beaussant (dir), Rameau de A à Z, Paris, Fayard, mai 1983
(en) Cuthbert Girdlestone, Jean-Philippe Rameau : His life and work, New York, Dover Publications, 1969
『ラルース世界音楽事典』　福武書店刊

外部リンク

レ・ボレアードの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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