レージョ劇場 (トリノ)

トリノ・レージョ劇場：歴史と変貌を遂げた歌劇場

イタリアの古都トリノの中心部に位置するトリノ・レージョ劇場は、豊かな歴史を誇る歌劇場です。1740年の開場以来、数々の名作オペラの上演や、著名な音楽家たちの活躍の場として、イタリアのみならず世界中の音楽愛好家から注目を集めてきました。しかし、その歴史は決して平坦なものではありませんでした。幾度かの閉鎖と再建を経て、現在の劇場は1973年に誕生した、いわば新生レージョ劇場なのです。

18世紀の華麗なる開幕と栄光の時代

1730年代、サルデーニャ王国の発展に伴い活気づくトリノにおいて、新たな劇場の建設が計画されました。建築家ベネデット・アルフィエリによって設計されたレージョ劇場は、2,500席を擁する壮麗な馬蹄形オペラハウスとして1740年に完成。杮落としは、ナポリの作曲家フランチェスコ・フェオのオペラ『アルサーチェ』でした。

その後約40年間、レージョ劇場は北イタリアを代表する歌劇場として、その地位を不動のものとしていました。しかし、18世紀後半になると、ミラノのスカラ座やヴェネツィアのフェニーチェ劇場といったライバル劇場の台頭により、徐々にその輝きは失われ始めます。19世紀に入ると、イタリア統一後、トリノは一時首都となりましたが、それも長くは続かず、劇場の近代化や発展は停滞しました。

19世紀後半：復活への序章

そんな状況の中、1865年、実力派指揮者カルロ・ペドロッティが音楽監督に就任。ペドロッティは15年間にわたり、ヴェルディのオペラを高水準で上演し、劇場の評価を高めました。さらに、ワーグナー作品の紹介にも積極的に取り組み、レージョ劇場の芸術的レベルの向上に大きく貢献しました。

その後、アルトゥーロ・トスカニーニが音楽監督を務めた時期には、カタラーニの『ローレライ』、プッチーニの『マノン・レスコー』と『ラ・ボエーム』など、数々の重要なオペラの初演が行われ、レージョ劇場は再びイタリアを代表する歌劇場としての地位を確立しました。1901年から1905年にかけての大改装を経て、1905年にはリヒャルト・シュトラウス自らが指揮する『サロメ』のイタリア初演という快挙を成し遂げました。

20世紀前半：苦難と再生

しかし20世紀に入ると、スカラ座やローマ歌劇場との競争激化により、レージョ劇場は再び苦境に立たされます。そして1936年、悲劇が訪れます。火災により、外壁を残して劇場は全焼。オペラ劇場としての機能は完全に停止しました。

第二次世界大戦、そして戦後の混乱期を経て、再建計画は長らく頓挫していましたが、1965年にようやく再建工事が開始。そして、火災から37年後の1973年、念願の再オープンを果たしました。杮落としはヴェルディの『シチリアの晩鐘』。マリア・カラスとジュゼッペ・ディ・ステファーノという、当時を代表する歌手たちが演出を手掛けたことでも大きな話題となりました。

再建された劇場：新たな挑戦

再建されたレージョ劇場は、旧劇場の外壁をそのまま残し、その内側にガラスとコンクリートを組み合わせた現代的なデザインが取り入れられました。内部は、従来の馬蹄形ボックス席を廃し、緩やかな傾斜のアリーナ席のみのシンプルな構造。全席から舞台を見渡せる優れた視認性を確保しました。しかし、音響面では、クッション性の高い座席による吸音効果などが影響し、必ずしも高い評価を得ているわけではありません。

現代のレージョ劇場は、歴史と伝統を受け継ぎつつ、新たな挑戦を続ける歌劇場です。これからも、世界中から優れた音楽家たちを迎え入れ、名作オペラの上演を通して、音楽文化の発展に貢献していくことでしょう。

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