ロジャー・モーティマー (第4代マーチ伯)

第4代マーチ伯ロジャー・モーティマー:波乱に満ちた生涯



第4代マーチ伯ロジャー・モーティマー(1374年4月11日 - 1398年7月20日)は、中世イングランドの貴族であり、その血筋から王位継承権を持つ有力者でした。彼はアイルランド貴族としても第6代アルスター伯の地位を保持していました。

生い立ちと王室との繋がり


ロジャーは、第3代マーチ伯エドマンド・モーティマーと、イングランド王エドワード3世の次男であるクラレンス公ライオネル・オブ・アントワープの娘フィリッパの間に生まれました。この血筋から、彼は王室と密接な関係を持っていました。彼の姉エリザベスは、有名な貴族ヘンリー・ホットスパー・パーシーと結婚しており、弟エドマンドはウェールズ反乱の指導者オワイン・グリンドゥールの娘キャサリンと結婚しています。このように、彼の家族は当時、政界において重要な役割を果たしていました。

リチャード2世からの寵愛


ロジャーは、王家の血を引いていたことから、従伯父にあたるリチャード2世に重用されました。1381年、父がアイルランド総督在任中に亡くなると、ロジャーは爵位と称号を継承しました。1385年には、リチャード2世によって王位継承者に指名されました。これは、当時大きな影響力を持っていたランカスター公ジョン・オブ・ゴーントへの対抗策と見られています。1388年には、リチャード2世の姪にあたるエレノアと結婚し、王室との関係をさらに深めました。

アイルランドでの活動と最期


1394年から1395年にかけて、ロジャーはリチャード2世のアイルランド遠征に同行しました。遠征後、彼はアイルランドの統治を任されましたが、イングランド軍によって抑えつけられていた現地のゲール人部族長たちが蜂起し、反乱に巻き込まれました。ロジャーは1398年にこの反乱で戦死するという、不運な最期を遂げました。

ロジャーの死後、リチャード2世は報復として翌1399年に再度のアイルランド遠征を敢行しましたが、その留守中にヘンリー・ボリングブルック(後のヘンリー4世)によってクーデターが起こり、リチャード2世は支持者を失って廃位されるという、歴史的な転換期を迎えます。ロジャーの爵位は、幼い息子のエドマンドが継承しました。

子女とその後


ロジャーは、リチャード2世の異父兄にあたる第2代ケント伯トマス・ホランドの娘エレノアと結婚し、2男2女をもうけました。

アン(1390年 - 1411年):ケンブリッジ伯リチャード・オブ・コニスバラと結婚
エドマンド(1391年 - 1425年):第5代マーチ伯
ロジャー(1393年 - 1413年頃)
エレノア(1395年以前 - ?):サー・エドワード・コートニーと結婚

ロジャーの未亡人エレノアは、1399年6月に第5代チャールトン男爵エドワード・チャールトンと再婚し、さらに2女をもうけました。

ジョーン:初代タンカーヴィル伯爵ジョン・グレイ(サウサンプトンの陰謀事件で処刑されたサー・トマス・グレイの弟)と結婚。1425年に異父兄・第5代マーチ伯エドマンドの女子共同相続人となった。
ジョイス:初代ティプトフト男爵ジョン・ティプトフトと結婚

エレノアは1405年10月6日または18日に亡くなりました。

系図


(系図については、提供された情報のみでは作成が困難なため、省略します)

まとめ


ロジャー・モーティマーは、中世イングランドの激動期を生きた貴族であり、その生涯は王室との深い繋がり、アイルランドでの活動、そして不運な最期という、波乱に満ちたものでした。彼の人生は、当時の政治情勢や王位継承問題に深く関わっており、歴史を理解する上で重要な人物の一人と言えるでしょう。

参考文献


森護『英国王室史話』大修館書店、1986年。
川北稔編『新版世界各国史11 イギリス史』山川出版社、1998年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
エドマンド・キング著、吉武憲司監訳『中世のイギリス』慶應義塾大学出版会、2006年。
* トレヴァー・ロイル著、陶山昇平訳『薔薇戦争新史』彩流社、2014年。

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