ロッジアの聖母 (ボッティチェッリ)

ロッジアの聖母：ボッティチェッリ初期の聖母子像



サンドロ・ボッティチェッリの『ロッジアの聖母』（別名『聖母子』）は、1467年頃に制作された油彩作品で、初期ルネサンス美術の重要な作品の一つです。この作品は、聖母マリアと幼子イエスを、ルネサンス様式の開廊（ロッジア）の中に描いたことで知られています。

作品の特徴



ボッティチェッリは、聖母子を田園風景を望むロッジアに配置しました。幼子イエスは、母親マリアの膝と欄干に足をかけながら立ち、マリアを抱きしめています。頬を寄せ合う二人の姿は愛情に満ちていますが、マリアの表情には、息子の受難を予感するような憂いが漂います。

マリアの衣装の左肩には、「聖ベルナルディーノの太陽」に似た文様が刺繍されており、太陽光を象徴する波線が放射状に描かれています。聖母子それぞれの光輪にも同様の波状模様が見られ、幼子イエスの光輪には赤い十字架が加えられています。これらの要素は、キリスト教における光と救いの象徴を強調しています。

残念ながら、作品の保存状態は良好とは言えず、後世の加筆が目立ちます。そのため、ボッティチェッリの本来の繊細な筆致が損なわれている部分もあります。

図像的源泉と影響



『ロッジアの聖母』の図像は、ボッティチェッリの師であるフィリッポ・リッピが描いた『メディチ・リッカルディ宮殿の聖母』に大きな影響を受けています。リッピの作品は、聖母マリアが幼子イエスを抱きしめる姿を半身像で表現しており、本作と共通の構図が見られます。

ボッティチェッリは、初期の制作段階において、リッピの工房で働いていた時期、ヴェロッキオの工房で共同制作者として働いていた時期、そして独立後に自身の工房を開いた時期など、いくつかの時代に区分できます。その初期において、リッピの図像を踏襲した聖母子画を制作しました。リッピの作品自体も、ロレンツォ・ギベルティやドナテッロ、ルカ・デッラ・ロッビアなどの彫刻家による作品や、ビザンティン美術のグリュコフィルサ型の聖母像から影響を受けており、その流れを汲んでいると考えられます。

額縁について



この作品には、オリジナルの額縁が現存しています。聖龕型と呼ばれるこの額縁は、個人礼拝用に作られた「寝室の調度品」の好例です。この種の小型礼拝図像は、豪華な装飾が施された額縁に収められることが多かったようです。額縁は金で塗装され、下部にはラテン語で「めでたし、恩寵に満てる者よ」という銘文が刻まれています。また、上部のリュネットには聖霊を表す鳩が描かれ、内側の枠には聖母子の光輪と同様の波状線が施されています。

来歴と現状



『ロッジアの聖母』は、1784年に商工会議所と商業組合によってウフィツィ美術館に寄贈されました。2004年には修復作業が実施され、現在も同美術館で展示されています。

関連作品



ボッティチェッリは、本作品以外にも多数の聖母子像を手がけています。これらの作品群は、彼の芸術的発展と初期ルネサンス美術における聖母子像の多様な表現を理解する上で重要な資料となっています。

『ロッジアの聖母』は、ボッティチェッリの初期の傑作として、その後の彼の作品に繋がる重要な要素を内包しています。作品に込められた深い信仰心と芸術的な表現は、見る者に感動を与え続けています。

参考文献



外部リンク


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