ロバート・トゥームズ
ロバート・オーガスタス・トゥームズ（Robert Augustus Toombs, 1810年7月2日 - 1885年12月15日）は、アメリカ合衆国の政治家であり、アメリカ連合国の初代国務長官を務めた人物です。南北戦争においては、連合国の指揮官としても活躍しました。
1810年、トゥームズはジョージア州ウィルクス郡で生まれました。ジョージア大学フランクリン校に入学しますが、学内での賭博が問題となり、ニューヨーク州のユニオン大学へ転校し、1828年に卒業します。その後、バージニア大学法学大学院で法律を学び、ジョージア州で弁護士資格を得て、故郷で弁護士業を開業しました。1830年には、幼馴染のジュリア・アン・デュボースと結婚し、3人の子供をもうけました。
1830年に弁護士として活動を開始した後、1837年から1840年、そして1841年から1843年までジョージア州下院議員を務めました。トゥームズは、その温厚な人柄とエンターテイナーとしての才能、そして若くして政界に進出した手腕により、ジョージア州民から高い関心と支持を集めました。人気の波に乗って連邦議会下院の議席も獲得し、1844年から1853年まで4期8年を務めました。アレクサンダー・スティーヴンズらと緊密な政治同盟を結び、ジョージア州が抱える問題の明確化と州の権利拡大を主張しました。1850年代初頭、ホイッグ党の衰退に伴い、民主党に加わり、1853年から1861年まで上院議員として活動しました。
1840年代から1850年代にかけて、トゥームズはジョージア州の利益と国の政策を一致させるべく尽力しました。1850年のジョージア政治要綱を支持し、奴隷制をめぐる南北の対立の中で連邦制を維持しようと努めました。テキサス併合、米墨戦争、ジェイムズ・ポーク大統領のオレゴン政策、1846年のウォーカー関税には反対し、南北の勢力均衡を図りました。奴隷制に関する対立を解消するため、アレクサンダー・スティーヴンズやハウエル・コブらが主張した南部諸州の連邦離脱論にも反対し、ヘンリー・クレイが提案した1850年の妥協を擁護しました。ただし、トゥームズの連邦離脱反対は、離脱そのものが間違いであるという判断ではなく、当時は非合理的であるという判断からでした。カンザス・ネブラスカ法やルコンプトン憲法、イングリッシュ法案には賛成しました。しかし、1850年代末には南北間の衝突回避が難しくなり、トゥームズの求心力も徐々に低下していきました。
1856年6月には、連邦上院にトゥームズ法案を提出し、反奴隷制を主張する指導者の同意を得てカンザス州憲法制定会議を開催することを提案しました。この法案は上院を通過しましたが、下院で否決されました。しかし、この動きは翌1857年のルコンプトン憲法採択につながりました。
トゥームズは、北部諸州の奴隷解放論に強く反対しました。1860年の大統領選挙ではジョン・ブレッキンリッジを支持しましたが、共和党のエイブラハム・リンカーンが勝利すると、トゥームズは「ジョージア州の連邦離脱の是非を問う投票を3月4日までに実施すべき」という電報をジョージア州に送りました。
1861年1月7日、トゥームズは上院議員を辞任する演説を行い、ジョージア州に戻りました。ジョージア州知事のジョセフ・ブラウンと共に連邦離脱を主張し、反対派のアレクサンダー・ステファンやハーシェル・ジョンソンと論戦を繰り広げました。この論争は、トゥームズに南部諸州による新国家の長となる野心を抱かせました。しかし、1861年2月18日、ジェファーソン・デイヴィスがアメリカ連合国の大統領に選出されると、トゥームズは連合国の政策に対する批判者の道を歩むことになりました。
しかし、トゥームズの意に反して、デイヴィスは彼を連合国の初代国務長官に指名しました。トゥームズは数ヶ月間の約束でこれを受諾しました。1861年2月25日に国務長官に就任すると、合衆国との外交関係を確立するためにワシントンD.C.へ使節を派遣しましたが、リンカーン大統領は連合国を国家として承認しなかったため、使節は追い返されました。
連合国の首都モンゴメリーに帰還した使節から「戦争が起こりそうである」との報告を受けたトゥームズは、デイヴィス大統領にこれを伝えましたが、デイヴィス大統領は「寛容に構えよ」と応じただけでした。納得しなかったトゥームズは、連合国の対応を議会に委ねることに成功しました。そして1861年4月12日、連合国はサウスカロライナ州チャールストンのサムター砦を砲撃し、南北戦争が開戦しました。
1861年5月21日、連合国議会は休会期間を7月20日まで延長し、首都をリッチモンドに移しました。トゥームズは武器獲得のためにヨーロッパに綿を輸出することを提案しましたが、デイヴィス大統領はこれを拒否。さらに、イギリスとフランスへの綿輸出停止を命令し、トゥームズを憤慨させました。1861年7月21日、トゥームズは国務長官を辞職し、連合国陸軍での任務を受け入れました。
連合国陸軍に加わるため国務長官を辞任したトゥームズは、1861年7月19日に准将として任務を受け、連合国ポトマック軍の旅団長に着任しました。北バージニア軍のデイヴィッド・ジョーンズ率いる師団の下で、半島戦役、七日間の戦い、北バージニア戦役、メリーランド戦役に参加しました。アンティータムの戦いでは手に傷を負いました。
1863年3月3日、トゥームズは連合国軍の任務を退き、ジョージア州民兵第3騎兵隊の連隊長に就任しました。その後、准将を経て、グスタヴス・ウッドソン・スミスの師団で監察長官を務めました。そして間もなくジョージア州民兵からも辞任し、故郷ワシントンに帰郷しました。
1865年の南北戦争終結時、トゥームズは合衆国による逮捕を逃れ、キューバへ逃亡しました。その後、ロンドン、パリを経て、1867年にカナダ経由で合衆国へ帰国しました。連邦議会への恩赦請求を拒否したため、市民権は回復できませんでしたが、ジョージア州では弁護士業を再開し、南部人としての評価を得ました。
1877年のジョージア州憲法制定会議では、政治的手腕を発揮し、優位な立場に立ちました。ジョージア州で最も有力な指導者の一人として、再び高い評判を得ました。1885年12月15日、ジョージア州ワシントンで死去し、同市内のレスト・ヘイヴン墓地に埋葬されました。
生涯
青年期
1810年、トゥームズはジョージア州ウィルクス郡で生まれました。ジョージア大学フランクリン校に入学しますが、学内での賭博が問題となり、ニューヨーク州のユニオン大学へ転校し、1828年に卒業します。その後、バージニア大学法学大学院で法律を学び、ジョージア州で弁護士資格を得て、故郷で弁護士業を開業しました。1830年には、幼馴染のジュリア・アン・デュボースと結婚し、3人の子供をもうけました。
連邦議会への進出
1830年に弁護士として活動を開始した後、1837年から1840年、そして1841年から1843年までジョージア州下院議員を務めました。トゥームズは、その温厚な人柄とエンターテイナーとしての才能、そして若くして政界に進出した手腕により、ジョージア州民から高い関心と支持を集めました。人気の波に乗って連邦議会下院の議席も獲得し、1844年から1853年まで4期8年を務めました。アレクサンダー・スティーヴンズらと緊密な政治同盟を結び、ジョージア州が抱える問題の明確化と州の権利拡大を主張しました。1850年代初頭、ホイッグ党の衰退に伴い、民主党に加わり、1853年から1861年まで上院議員として活動しました。
1840年代から1850年代にかけて、トゥームズはジョージア州の利益と国の政策を一致させるべく尽力しました。1850年のジョージア政治要綱を支持し、奴隷制をめぐる南北の対立の中で連邦制を維持しようと努めました。テキサス併合、米墨戦争、ジェイムズ・ポーク大統領のオレゴン政策、1846年のウォーカー関税には反対し、南北の勢力均衡を図りました。奴隷制に関する対立を解消するため、アレクサンダー・スティーヴンズやハウエル・コブらが主張した南部諸州の連邦離脱論にも反対し、ヘンリー・クレイが提案した1850年の妥協を擁護しました。ただし、トゥームズの連邦離脱反対は、離脱そのものが間違いであるという判断ではなく、当時は非合理的であるという判断からでした。カンザス・ネブラスカ法やルコンプトン憲法、イングリッシュ法案には賛成しました。しかし、1850年代末には南北間の衝突回避が難しくなり、トゥームズの求心力も徐々に低下していきました。
1856年6月には、連邦上院にトゥームズ法案を提出し、反奴隷制を主張する指導者の同意を得てカンザス州憲法制定会議を開催することを提案しました。この法案は上院を通過しましたが、下院で否決されました。しかし、この動きは翌1857年のルコンプトン憲法採択につながりました。
連邦離脱と南部連邦の設立
トゥームズは、北部諸州の奴隷解放論に強く反対しました。1860年の大統領選挙ではジョン・ブレッキンリッジを支持しましたが、共和党のエイブラハム・リンカーンが勝利すると、トゥームズは「ジョージア州の連邦離脱の是非を問う投票を3月4日までに実施すべき」という電報をジョージア州に送りました。
1861年1月7日、トゥームズは上院議員を辞任する演説を行い、ジョージア州に戻りました。ジョージア州知事のジョセフ・ブラウンと共に連邦離脱を主張し、反対派のアレクサンダー・ステファンやハーシェル・ジョンソンと論戦を繰り広げました。この論争は、トゥームズに南部諸州による新国家の長となる野心を抱かせました。しかし、1861年2月18日、ジェファーソン・デイヴィスがアメリカ連合国の大統領に選出されると、トゥームズは連合国の政策に対する批判者の道を歩むことになりました。
しかし、トゥームズの意に反して、デイヴィスは彼を連合国の初代国務長官に指名しました。トゥームズは数ヶ月間の約束でこれを受諾しました。1861年2月25日に国務長官に就任すると、合衆国との外交関係を確立するためにワシントンD.C.へ使節を派遣しましたが、リンカーン大統領は連合国を国家として承認しなかったため、使節は追い返されました。
連合国の首都モンゴメリーに帰還した使節から「戦争が起こりそうである」との報告を受けたトゥームズは、デイヴィス大統領にこれを伝えましたが、デイヴィス大統領は「寛容に構えよ」と応じただけでした。納得しなかったトゥームズは、連合国の対応を議会に委ねることに成功しました。そして1861年4月12日、連合国はサウスカロライナ州チャールストンのサムター砦を砲撃し、南北戦争が開戦しました。
1861年5月21日、連合国議会は休会期間を7月20日まで延長し、首都をリッチモンドに移しました。トゥームズは武器獲得のためにヨーロッパに綿を輸出することを提案しましたが、デイヴィス大統領はこれを拒否。さらに、イギリスとフランスへの綿輸出停止を命令し、トゥームズを憤慨させました。1861年7月21日、トゥームズは国務長官を辞職し、連合国陸軍での任務を受け入れました。
南北戦争
連合国陸軍に加わるため国務長官を辞任したトゥームズは、1861年7月19日に准将として任務を受け、連合国ポトマック軍の旅団長に着任しました。北バージニア軍のデイヴィッド・ジョーンズ率いる師団の下で、半島戦役、七日間の戦い、北バージニア戦役、メリーランド戦役に参加しました。アンティータムの戦いでは手に傷を負いました。
1863年3月3日、トゥームズは連合国軍の任務を退き、ジョージア州民兵第3騎兵隊の連隊長に就任しました。その後、准将を経て、グスタヴス・ウッドソン・スミスの師団で監察長官を務めました。そして間もなくジョージア州民兵からも辞任し、故郷ワシントンに帰郷しました。
晩年
1865年の南北戦争終結時、トゥームズは合衆国による逮捕を逃れ、キューバへ逃亡しました。その後、ロンドン、パリを経て、1867年にカナダ経由で合衆国へ帰国しました。連邦議会への恩赦請求を拒否したため、市民権は回復できませんでしたが、ジョージア州では弁護士業を再開し、南部人としての評価を得ました。
1877年のジョージア州憲法制定会議では、政治的手腕を発揮し、優位な立場に立ちました。ジョージア州で最も有力な指導者の一人として、再び高い評判を得ました。1885年12月15日、ジョージア州ワシントンで死去し、同市内のレスト・ヘイヴン墓地に埋葬されました。
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