ロバート・ベヴァン

ロバート・ポルヒル・ベヴァン（Robert Polhill Bevan、1865年 8月5日 - 1925年 7月8日）は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したイギリスの画家であり、版画も手掛けました。特にロンドンを拠点とした美術家グループの中心メンバーとして知られています。

若年期と初期の学び

ベヴァンは、イングランド南東部の海岸沿いの町、ホヴで生まれました。彼の父は敬虔なクエーカー教徒であり、銀行家として生計を立てていました。ベヴァンはロンドンのウエストミンスター美術学校で絵画の基礎を学んだ後、さらなる研鑽を積むためフランスへと渡ります。パリでは、当時多くの外国人芸術家が集っていた私立の美術学校、アカデミー・ジュリアンに入学しました。

アカデミー・ジュリアンでは、後にナビ派として知られるようになるポール・セリュジエ、ピエール・ボナール、エドゥアール・ヴュイヤール、モーリス・ドニといった同時代の優れた画家たちと共に学びました。この環境は、彼が当時の新しい芸術の潮流に触れる上で重要な機会となりました。

海外での経験と影響

1890年、ベヴァンは友人のエリック・フォーブス＝ロバートソンと共に、フランスのブルターニュ地方を初めて訪れました。彼らは、ポール・ゴーギャンをはじめとする画家たちが活動拠点としていたポン＝タヴァンに足を踏み入れます。翌年秋には再びポン＝タヴァンを訪れた後、旅を続け、スペインやモロッコへも足を延ばしました。スペインでは、プラド美術館などでディエゴ・ベラスケスやフランシスコ・デ・ゴヤといった巨匠たちの作品を熱心に研究し、古典絵画からの影響も受けました。

1894年にイギリスへ帰国すると、ベヴァンはしばらくの間、イングランド南西部のエクスムーア地方で生活しました。この地で絵を描き、またハンティングを楽しむなどして過ごしました。

結婚とポーランドとの繋がり

1897年の夏、ベヴァンは旧友エリック・フォーブス＝ロバートソンとその婚約者であるポーランド生まれの画家との結婚式で立会人を務めました。この結婚式で、花嫁側の立会人であったポーランド生まれの画家スタニスワヴァ・デ・カルウォフスカ（Stanisława de Karłowska: 1876-1952）と出会います。二人はその年のうちに結婚し、1900年までスタニスワヴァの母国ポーランドで暮らしました。その後ロンドンに戻りますが、1905年までは夏になるとポーランドを訪れる旅を続けました。このポーランドでの経験は、彼の作品にも影響を与えたと考えられています。

ロンドンでのグループ活動

ロンドンに戻ったベヴァンは、当時のイギリス美術界を牽引する様々な芸術家グループに関与するようになります。1911年には、ウォルター・シッカートを中心に、ハロルド・ギルマンやスペンサー・フレデリック・ゴアらとともに結成された「カムデン・タウン・グループ」に参加しました。このグループは、ポスト印象派などの新しい動向をイギリスに紹介し、イギリス近代美術の発展に貢献しました。

カムデン・タウン・グループは、その後、より前衛的な他のグループと合流し、「ロンドン・グループ」へと発展しました。ベヴァンはこの新しい組織にも参加し、その活動を支えました。また、ハロルド・ギルマン、チャールズ・ジナー、ジョン・ナッシュと共に「カンバーランド・マーケット・グループ」という小規模なグループとしても活動を展開しました。

作風と晩年

ベヴァンは主に風景画を描き、そのスタイルはフランスで学んだポスト印象派の影響を強く受けていました。明るい色彩、大胆な筆致、そして日常生活の中の何気ない風景を主題とすることが特徴です。彼の作品は、当時のロンドンや周辺地域の様子、あるいはポーランドでの情景などを捉えています。

1922年には、イギリスの主要な芸術団体の一つであるニュー・イングリッシュ・アート・クラブの会員となりました。

ロバート・ベヴァンは、1925年 7月8日、胃癌のためロンドンでその生涯を閉じました。享年59歳でした。彼は、新しい芸術運動が勃興していた時代のイギリスにおいて、大陸の芸術潮流を吸収し、自らのスタイルを確立した重要な画家の一人として、その功績が記憶されています。

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