ロビンソン (曲)

スピッツ「ロビンソン」：時代を超えて愛される名曲

「ロビンソン」は、日本のロックバンド・スピッツが1995年 4月5日にリリースした11枚目のシングルです。ポリドールから発売され、バンドにとって初のオリコンチャートトップ10入りを果たし、最大のヒット曲となりました。160万枚を超える売上を記録し、日本の音楽史に残る名曲として、今もなお多くの人に愛されています。

制作背景

「ロビンソン」とカップリング曲「俺のすべて」は、1995年初頭に東京都内のグリーンバード杉並でレコーディングされました。「ロビンソン」は1月17日に録音されています。当初、バンドはどちらをA面にするか決めておらず、「俺のすべて」からリハーサルを開始しました。最終的に「ロビンソン」が1曲目に選ばれましたが、作詞・作曲を担当した草野マサムネは、この曲の音楽性が「ポップすぎる」と感じ、シングルとしての発表に乗り気ではありませんでした。

草野は制作中、「ロビンソン」を「いつものスピッツの、地味な曲」と感じており、バンドメンバーやプロデューサーの笹路正徳にもそのように話していました。フジテレビ系のバラエティ番組のテーマ曲として1ヶ月間オンエアされた以外、目立ったプロモーション活動は行われませんでした。しかし、1995年初夏にスリーパーヒットとなり、多くの人に支持されるようになりました。草野は、この楽曲が予期せず大衆的な支持を集めた理由について、「人気テレビ番組やCMのタイアップではないし、テレビによく出ていたわけでもないのに、なぜこの曲がこんなに長く売れているのか、当時抱いた疑問の答えはいまだにわからない」と回顧録で語っています。

また、イントロやサビで繰り返される印象的なアルペジオフレーズは、リードギターの三輪テツヤが持ち込んだものをそのまま採用したものです。プロデューサーの笹路正徳は、このアルペジオが楽曲の印象を決定づける重要な要素だったと述べています。

リリース

「ロビンソン」のシングルは、1995年 4月5日に8cmCDとして発売されました。フロントカバーの写真は、2006年に発売されたコンピレーションアルバム『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』の歌詞カードにも掲載されています。

同年8月25日には、スピッツ初のアナログ盤となる7インチシングルが限定生産されました。B面には、次のシングルとして発売されヒットしていた「涙がキラリ☆」が収録されています。フロントカバーには、草野がCDシングルのジャケットやプロモーションビデオで手に持っているものと同じ型のレコードプレーヤーのイラストが描かれています。このアナログ盤は「GOLDEN HIT SERIES」としてシリーズ化され、1997年まで3年連続でヒット曲を両面に収録したEPがリリースされました。

2000年6月28日には、Spitz Single Archivesシリーズとして、12cm盤のマキシCDシングルがリリースされました。

タイアップ

「ロビンソン」は、発売時にフジテレビ系バラエティ番組『今田耕司のシブヤ系うらりんご』のエンディングテーマとして使用されました。また、1996年にはフジテレビ系ドラマ『白線流し』の挿入歌、2001年にはキリンビバレッジ「午後の紅茶」CMソング、2016年には「Google Play Music」CMソングとしても起用されています。

日本テレビ系ドラマ『君といた未来のために〜I'll be back〜』（1999年）では、主人公が1995年にタイムスリップするたびに「ロビンソン」が流れる演出がなされました。

収録曲

1. ロビンソン
2. 俺のすべて

楽曲解説

ロビンソン

曲名は、草野がタイ旅行中に印象に残ったロビンソン百貨店から取られました。制作時の仮タイトルがそのまま正式名称になりましたが、楽曲の内容とは直接的な関連性はありません。歌詞中には「ロビンソン」というフレーズは一切登場せず、冒頭の「河原の道」は草野の出身地である福岡市早良区の室見川が着想となっています。一部のファンからは「ロビンソン川」と呼ばれています。

イントロはギターの三輪テツヤが手掛けました。この曲は、6枚目のオリジナルアルバム『ハチミツ』や、ベストアルバム『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』、『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』、コンプリートシングル集『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』にも収録されています。キーはイ長調です。

俺のすべて

草野はシングル制作時、この曲をより気に入っていましたが、「俺」という一人称を使ったことで「不自然に急に男っぽくなった」と感じ、A面にするのを躊躇しました。そのため、2曲目に収録されることになりました。

1999年3月にリリースされたスペシャルアルバム『花鳥風月』で初めてアルバム収録されました。ライブでは草野がタンバリンを叩きながら歌うのが特徴です。

演奏メンバー

草野マサムネ: ボーカル
三輪テツヤ: ギター
田村明浩: ベース
﨑山龍男: ドラムス、パーカッション
笹路正徳: キーボード、ビブラフォン (「ロビンソン」)
横山剛: プログラミング (「俺のすべて」)

反響と評価

チャート成績

制作者の予想に反して、「ロビンソン」は発売と同時に商業的な成功を収めました。オリコン週間チャートで9位に初登場し、バンド初のトップ10入りを果たしました。その後数ヶ月にわたってトップ10圏内にランクインし続け、最高位は4位ながら、最終的に160万枚を超えるセールスを記録しました。1995年5月から3ヶ月連続で月間ランキングトップ10入りし、年間ランキングでは9位となりました。2020年現在、スピッツにとってキャリア最大のヒットシングルとなっています。また、オリコン史上、トップ3に入らなかったシングルの中で最も売れた作品という記録も持っています。

「ロビンソン」のCDシングルは、120万枚以上の出荷枚数により、1995年10月に日本レコード協会からトリプルプラチナに認定されました。また、発売から10年以上経過した後も、音楽配信分野で売上を伸ばし続け、PCと着うたフルの2つのカテゴリでそれぞれゴールドとプラチナ認定を受けています。

2010年4月にYouTubeで配信された公式ミュージックビデオは、2019年9月2日に1億回再生を突破しました。1990年代にリリースされた楽曲としては初の快挙となりました。

受賞

1995年の『第37回日本レコード大賞』で、「ロビンソン」は優秀作品賞を受賞しました。また、この曲を収録したアルバム『ハチミツ』も優秀アルバム賞に選ばれています。

主なカバー

「ロビンソン」は、2020年時点で40組以上のアーティストによってカバーされています。また、前奏はエイジアエンジニアの「ウレイヨ」や加藤ミリヤの「X.O.X.O.」でサンプリングされています。

カバーアーティスト（一部）

羅針盤 (2002)
山本潤子 (2007)
佐藤竹善 (2007)
美吉田月 (2007)
中西保志 (2008)
Salon (宮良彩子) (2008)
桑田佳祐 (2009)
中村あゆみ (2009)
髙橋真梨子 (2009)
ゴスペラーズ (2013)
絢香 (2013)
UNCHAIN (2014)
朝倉さや (2014) ※山形弁バージョン
9mm Parabellum Bullet (2015)
森恵 (2016)
Uru (2019)
ハラミちゃん (2020)
小野賢章 (2022)

英語詞カバー

アウチ!(OUCH!) (1996)
エフェメラ (Ephemera) (2003)
ピエール・ジャン・ジドン (2004)
デビー・ギブソン (2011)
BENI (2012)
ルーカス・ティーグ (2015)

韓国語詞カバー

李博士 (1996)

替え歌

嘉門タツオ (1997)