ロマン・ムスティスラーヴィチ

ロマン・ムスティスラーヴィチ：ハールィチ・ヴォルィーニ大公国の創始者

ロマン・ムスティスラーヴィチ（1150年頃？ - 1205年6月19日）は、リューリク朝に属する公の一人であり、ノヴゴロド公、ヴォルィーニ公、ハールィチ公、そしてキエフ大公を歴任しました。彼はハールィチ・ヴォルィーニ大公国の創始者であり、ロマノヴィチ家の祖でもあります。

当時の人々からは「偉大なるロマン大公」や「全ルーシの統治者」とも呼ばれ、その勢力は12世紀末から13世紀初頭にかけて、ルーシの公達の中で最も有力であったとされています。父はキエフ大公ムスチスラフ2世、母はポーランド大公ボレスワフ3世の娘アグネーサであり、彼はダヌィーロとヴァシリコの父でもありました。

生涯

1168年、父の意向によりノヴゴロド公に任命されますが、1170年にはヴォルィーニ公国へ移ります。1183年頃には、キエフ大公リューリク2世の娘プレドスラヴァと結婚し、一時的にリューリク2世との協力関係を築きました。

隣国であったハールィチ公国で公家が途絶えると、ロマンは後継者としてハールィチを巡る戦いに身を投じます。1199年、ポーランドの支援を得て、ハンガリー王国とハールィチ公国の反対勢力を打ち破り、ついにハールィチ公の座を手に入れました。同年、ヴォルィーニ公国とハールィチ公国を統合し、ハールィチ・ヴォルィーニ大公国を創設しました。

ロマンは、自身の権威に基づく強力な中央集権国家を目指し、現地の貴族の権利を制限し、政権に異を唱える者を厳しく処罰したと伝えられています。その一方で、ルーシ南部を苦しめていたクマン人の侵入を阻止することで、一般の人々からの支持を高めました。1201年から1202年、そして1203年から1204年の戦役では、クマン人の長たちを打ち破り、服従させ、多数のルーシ人捕虜を解放しました。

晩年になると、岳父であるキエフ大公リューリク2世（後に姻戚関係を解消）と対立し、1201年にはキエフを奪取しました。しかし、彼自身は大公にはならず、従兄弟のイングヴァルドを大公位に据えました。しかし、ロマンがハールィチへ帰国すると、リューリク2世はすぐにキエフを奪還しました。1204年、ロマンは再びリューリク2世からキエフを奪い返し、キエフ大公の座に就きました。捕らえたリューリク2世は、妃と娘（かつてロマンの妃であったプレドスラヴァ）を強制的に剃髪させ、修道院へ送りました。

1205年、ポーランドとの戦争が勃発し、ロマンはポーランドへ出征します。しかし、帰還の途中、ポーランド大公レシェク1世とマゾフシェ公コンラト1世兄弟が率いる敵軍に襲われ、戦死しました。

彼の死が伝えられると、剃髪させられていたリューリク2世は還俗し、チェルニゴフ系の諸公とクマン人の支援を得て、キエフ大公位に返り咲きました。

ロマンの治世は、キエフ・ルーシにとって、1240年のモンゴル侵攻前の最後の繁栄期でした。彼のルーシ諸国統一は、当時の人々にとって「善き行い」と見なされました。しかし、ロマンの戦死によって、一時的に統一された領土は再び分裂し、ルーシ南部は混乱に陥りました。

もう一度検索