ロミオとジュリエット (ダイアー・ストレイツの曲)

ロミオとジュリエット（ダイアー・ストレイツ）

「ロミオとジュリエット」（原題: Romeo and Juliet）は、英国を代表するロックバンド、ダイアー・ストレイツが1980年にリリースしたアルバム『メイキング・ムーヴィーズ』に収録された楽曲です。その後、1981年にはシングルとしても正式に発表され、バンドの歴史において重要な位置を占める一曲となりました。

この楽曲は、バンドの中心人物であるマーク・ノップラーが作詞・作曲を手掛けました。歌詞の背景には、当時ノップラーが交際していたホリー・アンド・ジ・イタリアンズのリードシンガー、ホリー・ヴィンセントとの関係が終わったことが強く影響しているとされています。シェイクスピアの不朽の悲劇に登場するタイトルロールに自身の失われた恋を重ね合わせ、個人的な感情を普遍的な愛と別れの物語へと昇華させた、叙情的で感動的な作品です。

音楽的には、ノップラーの繊細かつ技巧的なギターワークが際立つ、メロディックで心に響くバラード調の楽曲です。その詩的な歌詞と美しい旋律は、発表当時から多くの批評家によって称賛されました。例えば、音楽ウェブサイトultimateclassicrock.comのマイケル・ガルーチは、ダイアー・ストレイツの優れた楽曲ランキングにおいて本作を4位に選び、「シェイクスピア劇やミュージカル『ウエスト・サイド物語』、そして現代における名声に引き裂かれる若き恋人たちといった要素を見事に結びつけた、現代版ロックンロール・ラブストーリー」と評しています。ガルーチはさらに、「ノップラーが生み出した中でも特に時代を超えた楽曲の一つ」と高く評価する一方で、シングルとしてアメリカ合衆国ではチャートインしなかったという意外な事実にも触れています。

商業的な成果としては、母国イギリスで成功を収めました。1981年1月17日付の全英シングルチャートに初めて登場し、その後着実に順位を上げ、2月21日には最高位となる8位を記録しました。これは、バンドのデビューシングル「悲しきサルタン」以来となる全英トップ10入りであり、ダイアー・ストレイツの人気と影響力を確固たるものにしました。

「ロミオとジュリエット」は、その人気の高さから、ダイアー・ストレイツのライヴパフォーマンスにおいても欠かせない楽曲となりました。バンドは頻繁にこの曲を演奏し、その模様は複数の公式ライヴ・アルバムに収録されています。代表的なものとしては、1984年にリリースされた『アルケミィ〜ダイアー・ストレイツ・ライヴ』や、1993年の『オン・ザ・ナイト〜ダイアー・ストレイツ・ライヴ』などが挙げられます。バンド解散後も、マーク・ノップラーはソロ名義や他のミュージシャンとの共演時にこの曲を演奏し続けており、2006年6月28日にエミルー・ハリスと共に行ったライヴの音源と映像を収めた作品『Real Live Roadrunning』にも、彼の歌唱によるバージョンが収められています。

また、この楽曲は、その普遍的なテーマと情感豊かな雰囲気から、様々な映画作品のサウンドトラックとして頻繁に使用されています。確認されているだけでも、以下のような映画で聴くことができます。

『エンパイア レコード』（1995年公開）
『待ちきれなくて…』（1998年公開）
『200本のたばこ』（1999年公開）
『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』（2007年公開）

これらの作品を通じて、「ロミオとジュリエット」は映画ファンを含む幅広い層にその存在を知らしめました。

さらに、「ロミオとジュリエット」は、その楽曲としての完成度の高さゆえに、多くのアーティストによってカバーされています。例えば、米国のフォークロック・デュオ、インディゴ・ガールズは、1992年のアルバム『Rites of Passage』の中で、メンバーの一人であるエイミー・レイのソロトラックとしてこの曲をカバーしています。また、オルタナティブ・ロックバンド、ザ・キラーズもカバーバージョンを発表しており、2007年のシングル「For Reasons Unknown」のカップリングに、ロンドンの有名なアビー・ロード・スタジオでレコーディングされたスタジオ・ライヴ音源を収録しました。ザ・キラーズのボーカリストであるブランドン・フラワーズは、この楽曲に対する敬意を表しており、「史上最高の曲の一つだ。素晴らしいメロディだよ」と公言するなど、後世のアーティストからも高い評価と影響を受け続けていることが分かります。

ダイアー・ストレイツの「ロミオとジュリエット」は、作詞家の個人的な経験から生まれながらも、多くの人々が共感できる普遍的な悲哀や愛の物語を歌い上げた、時代を超えて愛される名曲と言えるでしょう。その音楽的な美しさと情感豊かな歌詞は、今なお多くのリスナーを魅了し続けています。

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