ロレーヌ 12E

ロレーヌ 12Eについて

ロレーヌ 12E（フランス語: Lorraine 12 E）は、1922年から1924年にかけてフランスのロレーヌ・ディートリッヒによって設計された、航空機用の水冷W型12気筒エンジンです。この発動機は別名ローレン 12Eとも呼ばれています。生産期間中には、ライセンス生産を含めて総計8,000台が製造され、そのうち約2,000台がライセンス生産として出荷されました。

概要と技術的特性

ロレーヌ 12Eは、独自のデザインによるW型12気筒の水冷エンジンで、イギリスのネイピア ライオンエンジンを基にして改良されました。エンジンは3つのブロックに分かれ、各ブロックは60度のバンク角を持っています。また、燃料供給には2つのゼニス式気化器が使用され、点火には2つのマグネトー設備が採用されています。点火シーケンスは計算された順序で行われ、安定したエンジン運転を実現しています。

1923年から1924年にかけて一連の試験が行われ、その結果、1924年3月に耐久試験に合格しました。この成功を受けて、すぐに生産が開始され、同年末までに約100台が完成しました。特に、ポテ社は自社製のポテ 25にロレーヌ 12Ebを標準エンジンとして採用し、この発動機の市場での成功に大きく貢献しました。価格は14万フランでした。ロレーヌ 12Ebは、他にもブレゲー 19やフランス海軍のルヴァッスール PL.4に搭載されました。

1920年代には、数多くの飛行記録がロレーヌ 12Ebによって樹立され、特に飛行距離や速度の記録更新、郵便航空路の開拓などに寄与しました。これらの業績は、フランチェスコ・デ・ピネードやシャルル・ナンジェッセといった著名な航空機操縦士によって実現されました。

1930年代の挑戦とその後

1930年代に入ると、ロレーヌ 12Ebは、元になったネイピア ライオンよりも高出力のエンジンとの競争が激化しました。これにより、売上は次第に減少し、ロレーヌ社は3,200馬力のエンジン開発に取り組みましたが、技術的な難しさから目標を達成することができませんでした。最終的に、会社は経営破綻に至ります。製造された8,000台以上のロレーヌ 12Ebの中で、現存するのはわずか2台のみで、パリのシテ科学産業博物館とビスカロッスの水上機博物館に保管されています。

国外でのライセンス生産

ロレーヌ 12Eは海外でもライセンス生産が行われました。ポーランドでは723台が製造され、SPAD 61、ブレゲー 19、ポテ 25、PWS-103などに搭載されました。また、スペインではブレゲー 19との組み合わせでエリザルドによるライセンス生産が行われ、アルゼンチンではドボワチン D.21およびナウエル DL43戦車に搭載されました。

日本における導入

1924年に日本海軍は中島飛行機からロレーヌ・ディートリッヒのライセンス生産権を購入し、ローレン450馬力の発動機として正式に採用しました。その後、1927年から1929年までの間に約120台が製造されました。この他、愛知[[航空機]]や海軍広工廠でも同様の生産が行われました。第二次世界大戦の際、日本海軍は魚雷艇の大量生産を計画しましたが、当時、高出力の液冷発動機が不足していたため、ロレーヌ 12Eも乙型魚雷艇に搭載されたという記録があります。

性能諸元

• - 形式: 水冷W型12気筒
• - 筒径×行程: 120 mm×180 mm
• - 排気量: 24.4 L
• - 圧縮比: 6.1
• - 出力: 450 hp / 1,850 rpm
• - 乾燥重量: 435 kg
• - 燃料供給方式: 気化器式

主な搭載機

• - ロレーヌ 12Eb: ポテ 25、ルヴァッスール PL.4、ルヴァッスール PL.8、ブレゲー 19
• - ローレン450馬力発動機: 一四式水上偵察機、一五式飛行艇

ロレーヌ 12Eは、航空機の発展において重要な役割を果たし、歴史的な飛行記録の達成に寄与した発動機であり、航空技術の進化の一端を担った存在と言えるでしょう。

もう一度検索