ロング・アイランド (護衛空母)

アメリカ海軍護衛空母ロング・アイランド (USS Long Island, AVG-1/ACV-1/CVE-1)

「ロング・アイランド」は、アメリカ海軍が太平洋戦争で使用した護衛空母です。元々は貨物船「モーマックメイル」として就役していましたが、第二次世界大戦勃発後、航空母艦に改造されました。この艦は、補助空母（護衛空母）に分類され、その運用実績は後の護衛空母の設計に大きな影響を与えました。

艦種と分類

竣工時は通常用途航空機用母艦（AVG）に分類されていましたが、1942年8月に特設空母（ACV）という呼称が制定され、類別変更されました。さらに1943年6月以降は護衛空母（CVE）として運用されました。艦名は、アメリカ合衆国本土最大の島であるロングアイランド島に由来します。

建造経緯

商船や貨物船を航空母艦に改造するというアイデアは、第一次世界大戦後から存在しており、イギリス海軍の「アーガス」やアメリカ海軍最初の空母「ラングレー」がその例です。アメリカ海軍は、1920年代中期から対日戦役における補給部隊に随伴する商船改造空母の研究を進めていました。

1939年に第二次世界大戦が勃発すると、ドイツ海軍の潜水艦による攻撃が激化し、イギリス海軍は船団護衛のために貨客船を空母に改造する取り組みを始めました。アメリカでも、1940年にルーズベルト大統領が商船改造小型空母の建造を提案し、ハルゼー中将の意見が取り入れられ、貨物船改造空母の計画が具体化しました。こうして、C3型貨物船「モーマックメイル」が空母「ロング・アイランド」に、姉妹艦「モーマックランド」が空母「アーチャー」に改造されたのです。

「ロング・アイランド」の運用実績は、護衛空母が対潜攻撃だけでなく防空にも使えることを示し、その後の護衛空母の発展に大きく貢献しました。

艦歴

戦前の民間船時代

「ロング・アイランド」は、ペンシルベニア州のサン造船ドライドック社で、C3型貨物船「モーマックメイル」として1939年7月に起工され、1940年1月に進水しました。その後、商業路線に投入されました。

空母時代

1941年1月、「モーマックメイル」は空母改造予定艦に指定され、同年6月2日に「ロング・アイランド（AVG-1）」として就役しました。就役当初、飛行甲板は短く、戦闘機の発着が困難でしたが、油圧式カタパルトの装備によって、重量のある艦上爆撃機や艦上攻撃機の運用が可能になりました。また、安定性に優れており、悪天候下でも飛行甲板が乾燥していたと報告されています。

太平洋戦争勃発時、「ロング・アイランド」は商船団の護衛任務に従事していました。1942年3月には護衛空母「チャージャー」が就役し、大西洋艦隊に配備されました。同年5月、「ロング・アイランド」は西海岸へ向かう前にパイロットを乗艦させ、サンフランシスコに到着しました。太平洋艦隊に配属された本艦は、ミッドウェー海戦での航空援護も行いました。

太平洋方面のアメリカ軍正規空母が不足していたため、「ロング・アイランド」は補助航空母艦として航空機輸送任務に従事することになりました。1942年8月、ガダルカナル島に海兵隊機を空輸するため、軽巡「ヘレナ」と駆逐艦に護衛されて同島に接近しました。8月20日、「ロング・アイランド」はSBD ドーントレス急降下爆撃機12機とF4F ワイルドキャット戦闘機12機をヘンダーソン飛行場に向けて発進させ、ガダルカナル島における制空権確保に貢献しました。

その後、「ロング・アイランド」はパイロット養成訓練のため西海岸に帰投しました。1943年6月中旬には、護衛空母（CVE）に類別変更されました。1946年に退役しましたが、1948年にパナマの会社に売却されました。

戦後の民間船時代

1948年、「ロング・アイランド」はC3型貨物船に復元され、船名も『NELLY（ネリー）』に変更されました。その後、移民船やクルーズ客船として使用され、『SEVEN SEAS（セブンシーズ）』と改名。北大西洋航路で運用されました。1963年からは洋上大学としても利用されましたが、老朽化のため1966年に船舶としては退役しました。退役後は、オランダのロッテルダム大学で寮として使用され、1977年に解体されました。

参考文献

『不沈艦伝説多彩な運命を背負った30隻の生涯』（光人社NF文庫・大内建二）
大内建二『護衛空母入門　その誕生と運用メカニズム』光人社
木俣滋郎『日本空母戦史』図書出版社
編集人木津徹、発行人石渡長門『世界の艦船　2008.No.685　航空母艦全史』株式会社海人社
バレット・ティルマン『第二次大戦のワイルドキャットエース』株式会社大日本絵画
バレット・ティルマン『第二次大戦のSBDドーントレス部隊と戦歴』株式会社大日本絵画
チェスター・ニミッツ、E・B・ポッター『ニミッツの太平洋海戦史』恒文社
R・F・ニューカム著、田中至訳『サボ島沖海戦　米軍史上最大の敗北』光人社
防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書　南東方面海軍作戦＜1＞　ガ島奪還作戦開始まで』第49巻、朝雲新聞社
細川忠雄「第三章　米海軍の現勢力」『米海軍』木村書店
ドナルド・マッキンタイヤー『空母　日米機動部隊の激突』株式会社サンケイ出版
歴史群像編集部編『ソロモン海戦　米軍ガダルカナル島上陸により惹起されたソロモンの制海権争奪の前半戦を徹底解析』学習研究社
歴史群像編集部編『アメリカの空母　対日戦を勝利に導いた艦隊航空兵力のプラットフォーム』学習研究社

外部リンク

NavSource Online: Escort Carrier Photo Archive USS LONG ISLAND (AVG-1)(later ACV-1 and CVE-1)
MS Seven Seas - 戦後、民間船となってよりの解説と写真

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