ロンドン・コーリング (曲)

ザ・クラッシュ「ロンドン・コーリング」：時代を映す黙示録的パンクアンセム

「ロンドン・コーリング」は、イギリスのパンク・ロックバンド、ザ・クラッシュが1979年に発表したアルバム『ロンドン・コーリング』のオープニングを飾る楽曲であり、同アルバムからのシングルカットとしてもリリースされました。この曲は、ジョー・ストラマーとミック・ジョーンズによって作詞作曲され、当時の社会情勢や不安を反映した歌詞と、レゲエのリズムを取り入れた斬新なサウンドが特徴です。

タイトルと歌詞の背景

曲のタイトルは、BBCが第二次世界大戦中に占領地向け放送で使用した「こちらロンドン (This is London calling ...)」というフレーズに由来しています。歌詞には、1979年に発生したスリーマイル島原子力発電所事故に対するジョー・ストラマーの懸念や、当時のイギリス社会が抱えていた閉塞感、そしてバンド自身の経済的な苦境などが反映されています。

サビの歌詞にある「London is drowning/And I live by the river（ロンドンは水没しつつあり、俺は川のほとりに住んでいる）」という一節は、テムズ・バリアーの建設にもかかわらず、テムズ川の氾濫によってロンドン中心部が水没するのではないかという当時の人々の不安を表現したものです。

音楽的特徴

「ロンドン・コーリング」は、初期のザ・クラッシュの楽曲に多く見られた狂熱的なコード進行から脱却し、短調で葬送歌のような雰囲気を醸し出しています。トッパー・ヒードンの勇ましいドラミング、ポール・シムノンの脈打つベースライン、そしてジョー・ストラマーの氷のような歌詞と悪意に満ちたボーカルが、曲全体の天啓的、黙示録的な感覚を強調しています。また、曲の終わりには、ピート・タウンゼントの影響を受けたモールス信号の繰り返しが用いられており、独特の雰囲気を醸し出しています。

レコーディング

この曲は、北ロンドンのハイベリーにあるウェセックス・スタジオで録音されました。プロデューサーはガイ・スティーヴンス、エンジニアはビル・プライスが担当しました。

リリースと評価

「ロンドン・コーリング」は、イギリスではアルバムからの唯一のリカット・シングルとしてリリースされ、1979年12月に11位を記録しました。アメリカでは、「トレイン・イン・ヴェイン」のB面曲としてリリースされましたが、全米ポップチャートで23位となり、バンドのブレイクのきっかけとなりました。また、オーストラリアでは、ザ・クラッシュにとって初のトップ40入りを果たした楽曲となりました。

この曲の成功には、ドン・レッツが撮影した印象的なミュージックビデオも大きく貢献しています。雨の中、テムズ川の船上で演奏するバンドの姿を捉えたこのビデオは、曲の持つメッセージ性と相まって、多くの人々に強烈な印象を与えました。

「ロンドン・コーリング」は、長年にわたりザ・クラッシュの代表作として評価されており、ローリングストーン誌の「最も偉大な500曲」では15位に選ばれています。また、同名のアルバムも、同誌の「1980年代のベストアルバム」に選ばれています。

2003年のグラミー賞授賞式では、ブルース・スプリングスティーン、エルヴィス・コステロ、デイヴ・グロールらによるスーパーバンドが、ジョー・ストラマーの追悼としてこの曲を演奏しました。

まとめ

「ロンドン・コーリング」は、ザ・クラッシュの音楽性を象徴するだけでなく、当時の社会情勢や人々の不安を反映した、時代を超えて愛されるパンクアンセムです。そのメッセージ性と革新的なサウンドは、今もなお多くの音楽ファンに影響を与え続けています。

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