ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ

『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』は、イギリスの劇作家トム・ストッパードが1966年に発表した戯曲です。この作品は、シェイクスピアの悲劇『ハムレット』に登場するローゼンクランツとギルデンスターンという二人の脇役を主人公としています。彼らは『ハムレット』では、王に雇われハムレットの動向を探る役どころですが、この戯曲では、彼らの視点から『ハムレット』の物語の裏側が描かれます。

劇中、ローゼンクランツとギルデンスターンは、自分たちが何者なのか、なぜここにいるのかを理解できないまま、不条理な状況に翻弄されます。彼らは『ハムレット』と同様に、無能で状況を把握することが苦手な小悪党として描かれています。ハムレットを監視する立場でありながら、実際にはハムレットに手玉に取られており、最終的には彼が仕掛けた策略によって死を迎える運命にあります。しかし、状況を理解できない二人は、その運命に抵抗するのではなく、状況分析や機知に富んだ会話に時間を費やします。この無意味ともいえる会話の応酬は、サミュエル・ベケットの不条理劇『ゴドーを待ちながら』との類似性が指摘されています。劇の中心人物が目的を持たず、自らの置かれた状況を理解していない点が共通しているためです。

この戯曲は、1990年にストッパード自身が監督を務め映画化されました。ローゼンクランツ役をゲイリー・オールドマン、ギルデンスターン役をティム・ロスが演じ、ヴェネツィア国際[[映画祭]]で金獅子賞を受賞しました。映画版では、舞台版の不条理な雰囲気を残しつつ、映像ならではの表現が加えられています。

日本語訳としては、松岡和子訳（劇書房、1985年）と、小川絵梨子訳（早川書房、2017年）があります。どちらも原文のニュアンスを忠実に再現しており、作品の理解を深めるのに役立ちます。

主な登場人物

ローゼンクランツ：ゲイリー・オールドマン（日本語吹替：大平シロー）
ギルデンスターン：ティム・ロス（日本語吹替：大平サブロー）
座長：リチャード・ドレイファス（日本語吹替：青野武）
ハムレット：イアン・グレン（日本語吹替：田中秀幸）
オフィーリア：ジョアンナ・ロス（日本語吹替：吉田美保）
クローディアス王：ドナルド・サンプター（日本語吹替：寺島幹夫）
ガートルード王妃：ジョアンナ・マイルズ（日本語吹替：藤波京子）
ポローニアス：イアン・リチャードソン（日本語吹替：納谷悟朗）
* イングランド大使：ジョン・バージェス（日本語吹替：藤本譲）

『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』は、不条理演劇の傑作として、今なお世界中で上演され続けています。シェイクスピア劇を新たな視点から捉え直し、人間の存在や運命について深く考えさせる作品です。

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