ローソン石

ローソン石：青色片岩相を象徴する鉱物

ローソン石(Lawsonite)は、化学式CaAl₂Si₂O₇(OH)₂・H₂Oで表される、カルシウムとアルミニウムを含む含水ケイ酸塩鉱物です。直方晶系に属し、一般的に角柱状や板状の結晶を形成します。しばしば双晶が見られ、透明から半透明で、無色、白色、青灰色、淡ピンク色など様々な色調を示します。ガラス光沢または脂肪光沢を持ち、モース硬度は8、比重は約3.09です。2方向に完全なへき開性を示し、衝撃に対しては脆性破壊を起こします。

ローソン石の結晶構造と化学組成

ローソン石の結晶構造は、灰長石(Anorthite, CaAl₂Si₂O₈)と類似した組成を持ちますが、重要な違いがあります。灰長石は(Al, Si)O₄四面体構造を有するのに対し、ローソン石はAlを含む八面体とSi₂O₇基、水分子(H₂O)を含む複雑な構造を持っています。Al八面体とSi₂O₇基、そして水分子は、環状構造を形成しているのが特徴です。この構造は、緑簾石グループの鉱物と非常に近縁です。ローソン石は、かなりの量の水を分子として含んでいるため、その分解過程で大量の水を放出します。この性質は、プレートテクトニクスにおいて、沈み込み帯での水の移動に重要な役割を果たしていると考えられています。

ローソン石の物性

ローソン石は、その光学的性質も特徴的です。薄片標本では、無色から淡黄色、淡青色の多[[色性]]を示す場合があり、偏光顕微鏡下では、干渉色として青色、黄色、無色などが観察されます。屈折率はnα=1.665、nβ=1.672～1.676、nγ=1.684～1.686と報告されています。

ローソン石の産出と地質学的意義

ローソン石は、世界中で広く分布していますが、特に環太平洋火山帯のような沈み込み帯で頻繁に産出します。変成岩、特に青色片岩相の代表的な鉱物として知られ、緑簾石、チタン石、藍閃石、柘榴石、石英など他の変成鉱物と共存することが多く、稀にエクロジャイト中に産出することもあります。変質した斑れい岩や閃緑岩中にも二次鉱物として生成することもあります。

ローソン石は、低温高圧条件下で生成されるため、高圧変成作用の指標鉱物として非常に重要です。特に、冷たい海洋プレートが沈み込む海溝において、周囲のマントルよりも温度が低い環境で生成されることから、沈み込み帯の温度圧力条件を推定する上で重要な役割を果たします。藍閃石、藍晶石、灰簾石などの鉱物と共存する場合は、青色片岩相の存在を示す指標となります。

ローソン石の発見と命名

ローソン石は、1895年にアメリカ合衆国カリフォルニア州マリン郡のティブロン半島で発見されました。その名称は、カリフォルニア大学の地質学者であったアンドリュー・ローソンに因んで命名されました。命名者は、ローソンの教え子であったCharles PalacheとFrederick Leslie Ransomeです。

まとめ

ローソン石は、その独特の結晶構造、化学組成、そして産出環境から、地球科学、特に変成岩研究において重要な鉱物です。高圧変成作用の指標鉱物としての役割に加え、沈み込み帯における水の移動過程の解明にも貢献する可能性を秘めています。今後の研究によって、ローソン石に関する知見がさらに深まることが期待されます。

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