ロータリーエンジン (星型エンジン)

ロータリーエンジンの概要

ロータリーエンジンとは、英語で「rotary engine」と呼ばれるエンジンで、特に航空機においてそのユニークな機構が注目されています。このエンジンの特徴は、クランクシャフトが機体に固定されているため、エンジン本体がプロペラと一緒に回転しながら動作する点にあります。1908年から1918年の間に多くの飛行機に採用され、「ロータリー・レシプロエンジン」または「回転式エンジン」とも呼ばれています。

仕組みと性能

このエンジンは、星型エンジンの形状を持ち、クランクシャフトを固定することでエンジン全体が回転します。この構造により、トルクを吸収するフライホイールの役割をエンジン自体が果たすため、軽量化を実現できました。さらに、シリンダーの冷却が均等に行えるため、当時の水冷エンジンよりも軽量であることが特徴的でした。

1910年代においては、他の航空エンジンと比較して、馬力あたりの重量が非常に少なく、1.3kg程度と非常に軽量でした。このため、航空機の性能を最大限に引き出し、数多くの世界記録がこのエンジンを搭載した航空機によって達成されたことが歴史に残されています。

特徴と設計

ロータリーエンジンの設計には、近代的なカウリングが施されており、これはエンジンの回転によって飛び散る潤滑油を制御するために考案されたものです。特に下部が切り欠かれた形状をしており、潤滑油が溜まって火災を引き起こさないよう配慮されています。これもまた、ロータリーエンジンならではの設計の工夫です。

操縦性と課題

ただし、ロータリーエンジンにはいくつかの欠点も含まれています。特に、ジャイロ効果の影響により、水平飛行からの旋回が非常に難しく、一度傾くとその傾きが継続する性質があります。そのため、操縦が難しくなる傾向があり、「ソッピース キャメル」と呼ばれる航空機で多くの事故が発生しました。また、スロットルがなく、出力調整は燃料と空気の混合比を変更する必要があり、迅速な調整が難しいため、エンジンのオン・オフによる「ブリップスイッチ」が多用されましたが、この操作によって故障が発生しやすいという問題も存在しました。

限界と後継技術

第一次世界大戦後の1920年代になると、冷却性能の向上や高出力化が進むにつれて、ロータリーエンジンは市場での競争に敗れ、次第に旧式となっていきました。その後は、アルミニウム製のシリンダーヘッドを持つ固定式星型エンジンや、より高出力の水冷エンジンが登場し、航空エンジンの主流となっていきます。さらに、エンジンの回転によって生じる遠心力や潤滑油の消耗問題など、経済的にも効率が悪かったことが、使用の減少につながりました。

自動車やオートバイへの応用

興味深いことに、19世紀末から20世紀初頭にかけて、自動車やオートバイにもロータリーエンジンが採用されました。1890年代にステファン・バルツァーが自動車用のロータリーエンジンを開発し、英国のチャールズ・レドラップが設計したモペッドには「Redrup星形エンジン」が搭載されました。また、ドイツではメゴラ社がインホイールエンジンを用いたオートバイを製造し、レースで成功を収めました。

最終的に、ロータリーエンジンは一時期の航空機や自動車において重要な役割を果たしましたが、その後の技術革新により姿を消していきました。しかし、そのユニークな機構と歴史的な影響は、今もなお多くのエンジン技術に影響を与えています。

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