ロールス・ロイス ダート

ダートエンジン（Dart Engine）

ダートは、1947年にロールス・ロイスの手により進空された、実用機としては初のターボプロップエンジンです。この名は、イギリス南西部を流れるダート川に由来しています。ダートエンジンはその革新的な設計によって、商業航空機や軍用機両方において重要な役割を果たしました。

概要

ダートは、直列2段遠心式圧縮機を搭載し、10本のカン式燃焼筒を用います。また、3段のタービンがパワーリカバリ用として機能します。この設計はアーサー・ラッブラによるもので、同軸遊星減速ギアボックスを持つ単軸式エンジンです。ダートは開発段階から純粋なターボプロップエンジンとして作られ、非常に高い信頼性と経済性を持つことで知られています。

1948年には、ダートを搭載した世界初のターボプロップ旅客機であるヴィッカース・バイカウントが進空しました。これにより、ダートは商業航空の世界で大きな影響を与えることとなります。第二次世界大戦中には各国の軍を支える戦闘機に搭載されることもあり、1,000から2,000馬力クラスの航空用中出力レシプロエンジンの優れた代替品として、広く使用されました。

ダートはフォッカーF27やBAe 748など、多くの機種で長年にわたり利用され、1987年に生産が終了するまでの40年間、さらにはインドでのライセンス生産が続くなど、非常に長い寿命を誇るエンジンです。ロールス・ロイスの品質基準により、搭載された航空機は長寿命を維持し、今なお多くの機体が現役で運用されています。

特徴と音

ダートエンジンは、特有のサウンドでも知られています。高回転型遠心コンプレッサによる鋭い高音、ジェットブラストの低音、ギアのノイズ、さらに4翅プロペラの風切り音が混ざり合うこの音は「ダート・サウンド」として親しまれています。この音は耳だけでダート搭載機の飛来を識別できるほど独特であり、現在でも多くのファンに愛されています。

高外気温時の出力低下を補うために水・メタノール噴射装置がオプションとして利用可能であり、最初の量産型では1,000 shp（シャフト馬力）を発揮しましたが、改良が進むことでYS-11に搭載された型では出力が3,060 shpに達しました。初期のターボプロップエンジンの中では、余剰推力が比較的低めで、2,440 shpの型では304 kgの余剰推力を実現しています。また、軽量（約600kg）であるため、出力重量比にも優れています。

主な搭載航空機

ダートエンジンは、様々な航空機に搭載されています。主な機種には以下があります：

• - ヴィッカース ヴァイカウント
• - アームストロング・ホイットワース AW.660 アーゴシー
• - アブロ 748
• - ホーカー・シドレー HS.780 アンドーヴァー
• - ハンドレページ H.P.R.7 ダートヘラルド
• - フォッカー F.27 フレンドシップ
• - 日本航空機製造 YS-11 など

さらに、ダグラス DC-3/C-47やコンベア CV600〜640といったレシプロエンジン機も、ダートエンジンに改修（レトロフィット）される事例が少なくありません。

まとめ

ダートエンジンは、その開発から長年にわたり高い信頼性と経済性を持ち続け、商業航空や軍用航空機において重要な役割を果たしてきました。そのユニークな音と高性能から、ダートは航空エンジンの中でも特に人気のある存在となっています。

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