ローレンス (マサチューセッツ州)

ローレンスの概要

ローレンスは、アメリカ合衆国マサチューセッツ州エセックス郡に位置する都市です。2020年の国勢調査によると、人口は約8万9千人です。北にはマスーアン市、南西にはアンドーバー町、南東にはノースアンドーバー町が隣接しています。かつてはセイラム市と共にエセックス郡の郡庁所在地でした。

工業都市として発展し、電子機器、繊維、靴、紙製品、コンピュータ、食材などを生産しています。また、詩人のロバート・フロストが学生時代に住んでいた地としても知られ、彼の初期の作品は地元の高校の会報に掲載されました。

歴史

設立と繊維産業の発展

ローレンス地域には、かつてペナコック族またはペンタケット族のインディアンが居住していました。彼らの農耕の痕跡や、鏃を製造していた証拠が発見されています。

ヨーロッパ人が最初にこの地域に到達したのは1640年頃で、ニューベリーからメリマック川を遡って入植しました。ローレンスは当初、マスーアンとアンドーバーの町の一部でした。1655年には、現在のサウスローレンスに小要塞が建設されました。

19世紀半ば、水力利用協会の会員であるアボット・ローレンス、エドマンド・バートレットらがメリマック川の滝の利用権を購入し、川沿いの開発を進めました。1845年にはエセックス・カンパニーが法人化され、グレート・ストーン・ダムの建設を開始し、水力を利用した工場が次々と建てられました。

これにより、アイルランドをはじめとする世界各地から労働者が集まり、急速に工業都市として発展しました。しかし、労働環境は厳しく、事故も多発しました。

パンと薔薇のストライキ

1912年、ローレンスはアメリカの労働運動史における重要な出来事である「パンと薔薇のストライキ」の舞台となりました。マサチューセッツ州法による労働時間短縮により賃金が減額されたことをきっかけに、工場労働者がストライキを起こしました。世界産業労働組合の指導の下、2万5千人の労働者が参加し、2ヶ月にわたる激しい争議が行われました。

ストライキは、州軍や警察との衝突、ダイナマイト事件など、多くの困難を伴いましたが、最終的には労働者の賃上げを勝ち取り、アメリカの労働運動史における大きな転換点となりました。

第二次世界大戦後の衰退と再開発

ローレンスは毛織物産業の中心地として栄えましたが、1950年代に入ると衰退が始まりました。人口は減少し、都市の再活性化が課題となりました。

1960年代以降、都市再開発が行われましたが、その過程で古い建物が取り壊され、駐車場やショッピングモールが建設されました。また、ゴミ処理施設や焼却炉が建設されるなど、産業構造の変化に対応するための様々な試みが行われました。

近年では、都市再生の焦点が保存へと移りつつあります。

1980年代と1990年代

1960年代後半から、ドミニカ共和国やプエルトリコからの移民が増加しました。しかし、1984年には、白人労働者とヒスパニック系住民の間で対立が激化し、暴動が発生しました。また、1990年代初頭には、不況による放火事件が多発しました。

1995年には、モールデン・ミルズの工場が全焼しましたが、CEOのアーロン・ヒューアスタインは、再建中も労働者の給与を支払い続けるという決断を行い、多くの賞賛を受けました。

近年の動向

2004年以降、暴力犯罪が減少し、メリマック川沿いの旧工場跡地への民間投資が進んでいます。また、ヒスパニック系の企業が中心街に進出するなど、経済の活性化が進んでいます。

移民社会の歴史

ローレンスは「移民の都市」として知られています。19世紀から20世紀初頭にかけて、アイルランド、ドイツ、イタリア、フランス系カナダ人など、多くのヨーロッパ人が移住してきました。1970年代以降は、ヒスパニック系住民が増加しています。

1845年～1920年

19世紀中頃には、アイルランドからの移民が急増し、ダム建設や工場労働に従事しました。その後、ドイツ人、フランス系カナダ人、ユダヤ人、ポーランド人、リトアニア人などが移住し、多様な民族が混在する都市となりました。各民族は、教会や社交クラブを中心にコミュニティを形成しました。

1970年代以降

1970年代以降は、ラテンアメリカからの移民が増加し、特にドミニカ共和国やプエルトリコからの人々が多くなりました。また、ベトナムなど東南アジアからの移民も増加しています。これにより、カトリック教会では、複数の言語でミサが行われるようになっています。

2020年の国勢調査によると、市の人口の82%がヒスパニック系です。

治安

かつて治安が悪化していたローレンスですが、近年は改善の兆しが見られています。しかし、2024年の民間調査会社による評価はD+と、まだ課題が残っています。

地理

ローレンスはメリマック川の両岸に位置し、大西洋から約42km上流にあります。市の北はマスーアン市、南はアンドーバー町、ノースアンドーバー町に接しています。

市内には、メリマック川のほかに、スピケット川とショーシーン川が流れています。また、かつて工場に水力を供給していた運河も残っています。

気候

ローレンスは、湿潤大陸性気候に属しています。

交通

ローレンスには、州間高速道路495号線が通っており、ボストンやニューハンプシャー州マンチェスターへのアクセスも良好です。市内には、バスや鉄道の駅もあり、公共交通機関も利用できます。

政治

ローレンス市は、強い市長と市議会制を採用しています。市長と市議会議員は、無党派選挙で選出されます。

医療

ローレンス総合病院が市内の主要な病院です。

教育

ローレンスには、公立学校のほか、チャータースクールや私立学校があります。また、ノーザン・エセックス・コミュニティカレッジなどの高等教育機関も存在します。

メディア

ローレンスの主要新聞は「イーグル・トリビューン」です。また、スペイン語や二言語新聞もあります。

経済

ローレンスには、ニューバランスの工場などがあります。また、医薬品やテストキットを製造する企業も存在します。

見どころ

ローレンスには、歴史的な建造物や公園、博物館など、多くの見どころがあります。

ベルビュー墓地
カンパニョン・コモン
エセックス芸術センター
グレート・ストーン・ダム
ハイサービス給水貯水塔
ローレンス・コミュニティ・ワークス
ローレンス実験所
ローレンス歴史遺産州立公園
ローレンス歴史センター
ローレンス公共図書館
聖心教区複合
セントアルフィオ協会
セマナ・ヒスパーナ
退役軍人記念スタジアム

著名な出身者

ローレンスは、著名な人物を数多く輩出しています。

レナード・バーンスタイン（作曲家、指揮者）
ロバート・フロスト（詩人）
ロバート・グーレ（歌手、俳優）
アボット・ローレンス（ローレンスの設立者）
* ジョー・ペリー（ギタリスト）

ローレンスは、その長い歴史の中で、様々な変化を経験してきました。しかし、移民を受け入れ、多様な文化が共存する都市として、これからも発展を続けていくでしょう。

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