ワイズ天文台

フローレンス・アンド・ジョージ・ワイズ天文台

フローレンス・アンド・ジョージ・ワイズ天文台は、イスラエル南部のネゲブ砂漠に位置するテルアビブ大学の天文台です。1971年に開設され、イスラエル初の研究を専門とする天文台として、天文学研究の発展に貢献してきました。

開設の経緯

ワイズ天文台は、1971年10月26日に完成しました。当時イスラエルでは理論天文学が中心で、夜間の観測天文学を担う施設が不足していました。そこで、ワイズ天文台は、アメリカのスミソニアン協会やプリンストン高等研究所などの協力のもと建設されました。初代天文台長は、アメリカの物理学者ユリ・フェルドマンが務めました。

天文台の名前は、テルアビブ大学の初代学長であるジョージ・S・ワイズ氏とその妻フローレンスに由来します。ワイズ氏が望遠鏡の購入に多額の寄付を行ったことがきっかけで、その功績を称え、夫妻の名前が天文台に付けられました。

立地

ワイズ天文台は、ネゲブ砂漠の中央部、ミツペ・ラモンの街から西へ約5kmの場所に位置しています。周辺には自然保護区が広がっており、砂漠地帯のため、砂塵の影響は少なく、晴天率が高いという特徴があります。年間を通して約7割が晴天夜で、特に6月から8月にかけては晴天率が高く、観測に適しています。

風は、9月から11月にかけては比較的強いものの、夜間は微風になることが多いです。気温は、昼夜の温度差が大きいため、日没後は温度勾配が大きいものの、夜中には安定します。湿度は年間を通して高めで、特に9月から12月にかけては高い日が多くなります。

シーイングは、典型的には2秒角から3秒角程度で、1秒角未満の非常に良好な条件となる日は年間数日程度に限られます。これは、標高が875メートルと高くないため、大気による減光の影響が比較的大きいためです。

観測機器

ワイズ天文台には、以下のような観測機器が備えられています。

40インチ望遠鏡（T40）：開設当初からある主力の望遠鏡です。口径1016mmのリッチー・クレチアン式[[望遠鏡]]で、アイラ・ボーエンが光学設計を行い、米Boller and Chivens社が製造しました。当初はラスカンパナス天文台のスウォープ望遠鏡と同型でしたが、独自の調整により差異が生じています。撮像観測には、CCDカメラが使用されており、現在はプリンストン・インスツルメンツ製とサンタバーバラ・インスツルメンツ・グループ製のものが使われています。また、広視野の観測には、モザイクCCDカメラLAIWOが用いられています。
18インチ望遠鏡（C18）：2005年に導入された口径46cmの主焦点反射[[望遠鏡]]です。米アストロワークス社製で、遠隔制御に対応しています。2015年からは完全に自動化された運用が可能になっています。
* ジェイ・ボーム・リッチ望遠鏡（C28IL）：2013年に導入された口径71cmの主焦点反射[[望遠鏡]]です。C18を大型化したもので、完全自動運用に対応しています。

その他、ハンガリー自動望遠鏡（HAT）の観測拠点としても利用されており、全天監視用の魚眼レンズ付きCCDカメラも設置されています。

研究・業績

ワイズ天文台は、口径1メートルの望遠鏡としては比較的小口径ですが、その立地条件から時間領域天文学において重要な観測を行っています。インドとギリシャの間、コーカサスと南アフリカの間という、現代的な天文台の空白地帯に位置しており、国際的な観測ネットワークにも参加しています。

主な研究テーマは、活動銀河核の変動監視、超新星の探索と追観測、ガンマ線バーストや重力マイクロレンズ現象の監視、地球近傍天体や小惑星の観測、太陽系外惑星のトランジット観測、激変星の観測、連星の軌道追跡など多岐にわたります。

特に、広視野掃天観測に力を入れており、小惑星の観測で多くの成果を上げています。2022年時点では、19個の小惑星の発見者となっています。また、観測者個人の名義で発見されたものも多数あります。

利用について

ワイズ天文台の利用は、10月から3月までと4月から9月までの2期に分かれ、観測提案を募集しています。テルアビブ大学の附属天文台であり、大学院生の研究計画にも重要な役割を果たしています。

まとめ

フローレンス・アンド・ジョージ・ワイズ天文台は、イスラエルにおける天文学研究の中心的な役割を担っており、国際的な共同研究にも積極的に参加しています。その立地と観測機器を活用し、時間領域天文学における重要な発見に貢献し続けています。

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