ワシャクトゥン

ワシャクトゥン：古代マヤ文明の遺跡

ワシャクトゥンは、グアテマラのペテン県に位置する重要な古代マヤ遺跡です。ティカルから約24キロメートル北にあるこの遺跡は、先古典期から古典期にかけて長い間都市として繁栄しました。名前の「ワシャクトゥン」は、「8の石」を意味し、石碑9号に刻まれた古い長期暦の日付に由来しています。この石碑は、328年を示しており、当時の歴史的背景を物語っています。

発見と発掘の歴史

20世紀初頭、アメリカでのチューインガム流行の際、チクルを採取していた「チクレロ」と呼ばれる人々がマヤ遺跡に遭遇しました。彼らはワシャクトゥンを含む地域でサポジラなどを育てていました。ワシャクトゥンの存在は1916年にシルヴェイナス・モーリーによって初めて報告され、彼が率いるカーネギー研究所によって1924年から1938年にかけて本格的な発掘が行われました。この遺跡は、マヤの発掘の先駆けとなったものの、その方法論は後に批判されることになります。1980年代から1990年代にかけては、フアン・アントニオ・バルデス率いるグアテマラ国立考古学研究所が新たな発掘を実施しました。

1982年、ワシャクトゥンはティカル国立公園の一部として保護されることとなりました。遺跡は、グループAからHまでいくつかのエリアに分けられ、特にグループEとHが古い時代のものであることが確認されています。グループEには、南北に並んだ3つの建物があり、これらは冬至や夏至等の天文学的観測に用いられたと考えられています。

建築と文化

ワシャクトゥンでは、先古典期中期にはすでに建物の建設が始まっていました。グループEの建物が最も古く、グループHは紀元前150年から西暦250年頃まで使用されていました。その後、再びグループEが使用され、300年ごろに西に移転したグループAに主な活動拠点が移りました。その時期には、マヤ文字が記された石碑も現れ、特に石碑9号は328年の日付が記録されています。

378年には、ティカルを征服したシヤフ・カックがワシャクトゥンを征服し、新たな王朝を樹立しました。このことにより、ワシャクトゥンの王族は削除され、王はティカルに連れ去られたと考えられています。この歴史的事件は、石碑5号や石碑22号にも記されていますが、描かれたスタイルがマヤ様式とは異なっていたことが注目されています。

文化の変遷

ワシャクトゥンは古典期の初期にはティカルと肩を並べる存在でしたが、シヤフ・カックによる征服の後、ティカルに従属する形となり、その後の運命は共に歩むこととなります。557年から702年の間に訪れた石碑の消失期は、ティカルでも同時期に起こった現象です。9世紀に入ると、ワシャクトゥンも他の中央マヤの都市と同様に衰退し始め、8.8.9.10.0（889年）の日付をもって長期暦の日付は途絶えてしまいました。

結論

ワシャクトゥンは、古代マヤ文明の中で重要な文化的、歴史的役割を果たしてきた遺跡であり、その発掘や研究は今後のマヤでの研究にも欠かせないものです。多様な建築物や石碑の発見は、当時の人々の生活や文化を知る手がかりとなっています。

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