サポジラ

サポジラ：熱帯の恵み

サポジラ（学名：Manilkara zapota）は、アカテツ科マニルカラ属に属する常緑高木です。別名として、チクル、チューインガムノキ、メキシコガキなどとも呼ばれています。メキシコが原産で、中央アメリカを征服したスペイン人が、現地の言葉で「ツァポトル」と呼ばれていた木を「サポジラ」と名付けました。その後、スペインの植民地化に伴い、フィリピンを経由して東南アジアや南アジアに広まり、日本では沖縄でも見ることができます。

サポジラの樹木としての特徴

サポジラは、メキシコ南部やグアテマラ、ベリーズ北部などの地域が原産です。現地のスペイン語では「チクル」（チューインガムの意味）と呼ばれています。

成長が遅い常緑樹で、樹高は30〜40メートルにも達します。皮質の葉が密生し、暗緑色の大きな樹冠を形成します。樹皮を傷つけるとピンク色の内樹皮から乳液（ラテックス）が染み出します。葉は7〜15センチメートルほどの卵形で光沢があり、枝に螺旋状に付いています。花は先端が6つに分かれた釣鐘型の合弁花で、花弁の色は白く、あまり目立ちません。花は季節を問わず咲き、球形や楕円形の果実は年に2回収穫できます。

果実は直径4〜8センチメートルほどで、薄い果皮の質感はジャガイモに似ています。果肉は干し柿に似た茶色または浅黄色で、石細胞を含みます。食感は柿に比べて柔らかく、中には2〜10個ほどの種子があります。未熟なものは渋みが強く食べられませんが、熟したものは非常に甘く美味しく、風味も干し柿に極めて近い香りと甘さがあります。ビタミン、ミネラル、タンニン、ポリフェノールを豊富に含みます。種子は黒く、柿の種に似た形状をしています。

チューインガムの原料としての利用

サポジラの樹皮には、白く粘り気のあるラテックス（チクル）が多く含まれており、これがチューインガムの原料となります。ラテックスが乾燥すると天然の絆創膏となり、感染症を防ぐのに役立ちます。アステカ族やマヤ族は、何千年も前からチクルをチューインガムとして利用したり、口臭予防や喉の渇きを癒すために利用してきました。

チクルを集める人々はチクレロと呼ばれ、幹にジグザグの傷をつけて大量に出てくるラテックスを集め、これを煮詰めて凝固させてチクルガムという天然のゴム質を生成します。チューインガムは、19世紀中頃のニューヨークの起業家トーマス・アダムズが、チクルガムに砂糖と香辛料で味を付けて発明しました。チューインガム作りは一大産業となり、1930年代にはアメリカが毎年8000トンものチクルガムを輸入していました。しかし、ラテックスの大量採取はサポジラの木に大きなダメージを与え、1940年代に石油系合成樹脂が開発されるとチクルはほとんど利用されなくなりました。現代では、チクルゴムを使ったチューインガムは、少数のメーカーが製造するのみとなっています。

食用としての利用

東南アジアでは、サポジラの果実が果物として広く親しまれています。独特の甘さと風味が特徴で、デザートやおやつとして楽しまれています。

学名について

リンネは最初にサポジラを Achras zapota という学名で記載しました。そのため、かつては Achras 属を「サポジラ属」としていた文献もありますが、現在ではマニルカラ属（Manilkara）に分類されるようになり、 Achras 属は Manilkara 属のシノニムとして扱われています。

まとめ

サポジラは、その甘い果実とチューインガムの原料となる樹液で知られる熱帯の恵みです。歴史と文化の中で重要な役割を果たしてきたこの木は、多様な利用価値を持つ魅力的な植物です。

参考文献
ジョナサン・ドローリ 著、三枝小夜子 訳『世界の樹木をめぐる80の物語』柏書房、2019年12月1日。ISBN 978-4-7601-5190-5。

関連項目
サワノキ（学名: Manilkara kauki）

外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、サポジラに関するメディアがあります。
* ウィキスピーシーズには、サポジラに関する情報があります。

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