ワスカル (装甲艦)

ワスカル（Huáscar）の詳細

概要

ワスカル（Huáscar）はペルー海軍に属する装甲艦であり、1864年にイギリスの造船所で建造されました。南米の大国として繁栄していたペルーは、海軍力の強化が急務であった背景を持ちます。この艦は、特有の砲塔艦形式を採用しており、後にチリ海軍に鹵獲され、現在は記念艦として保存されています。

建造の経緯

1859年から1864年にかけて勃発したチンチャ諸島戦争は、ペルーとスペインの間の緊張を生む要因となりました。そのため、ペルー海軍は海軍力の強化に取り組み、ワスカルを1864年に発注しました。イギリスのレアード・ブラザースによって建造され、1865年10月に進水し翌月に就役しました。艦名はインカ皇帝ワスカルに由来し、2代目となります。

船体と装備

ワスカルは短船首楼板型船体を採用し、海面での性能が重視された設計です。当初は帆装による航行能力も持っていましたが、後に帆走設備は取り外されました。中央部には砲塔が設けられ、アームストロング製の25.4cm滑腔砲が装備されています。また、近接火器として12cmライフル砲も艦尾に配置されていました。主砲塔はコールズ式砲塔で、砲弾の揚弾作業は人力で行われる仕様でした。

艦歴と戦闘

チンチャ諸島戦争

ワスカルは1865年にチリがスペインに宣戦布告した際、ペルー側としても戦争に参加しました。艦長のミゲル・グラウが着任し、その後ペルー海軍での経験は南米の太平洋戦争においても活かされることになります。

1877年、ワスカルはNicolás de Piérola支持者に乗っ取られる事件が発生し、チリ海軍との接触を持ちながらも、逃げる際の戦闘など数々の戦歴を残しました。特に、イギリス海軍艦艇との関りもあり、戦場での多くの接触や、激しい戦闘が展開されましたが、人的被害も比較的抑えられていました。

太平洋戦争

1879年にはペルー・ボリビア連合がチリに対抗する太平洋戦争が開戦。この時、ワスカルはチリ海軍と交戦し、戦闘の中での攻撃任務を果たしました。特にイキケの海戦では、チリ艦エスメラルダを沈没させる功績を収めましたが、その過程で艦首の損傷や軽微な人的被害もありました。戦闘後、様々な船舶との接触が続き、さらに他のチリ艦との交戦も記録されています。

内戦と歴史的背景

1891年のチリの内戦が起こると、ワスカルは議会派に利用され、様々な任務に従事しました。その後も艦は改装を受けつつ、第二次世界大戦まで活動を続け、最終的には記念艦として保存される運命が待っていました。

現在の保存状況

1930年代からワスカルは修復工事を受け、記念艦としての保存状態は良好です。1970年代には大規模な整備が行われ、現在もタルカワノに展示されています。ワスカルの長い歴史を通じて、南米における海軍戦局の重要な存在として記憶されています。

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