ワン・ストップ・サービス

ワンストップサービスとは

ワンストップサービスとは、様々な種類のサービスや手続きを、一か所でまとめて提供する仕組みのことです。行政機関や商業施設など、幅広い分野で導入が進められています。

行政におけるワンストップサービス

行政分野では、複数の部署や機関にまたがる手続きを一度に行えるようにする「ワンストップ行政サービス」が推進されています。近年では、情報通信技術の発展に伴い、インターネットを通じて自宅などから行政手続きを完結できる電子政府の構築が進められています。

イギリスでは、引越しに伴う住所変更手続きをオンラインで一括処理できるサービスが提供されていました。これは、パスポートや運転免許証などの公的手続きから、水道やガス、電気などの民間サービスまで、約750もの機関の手続きをまとめて行えるものでした。このサービスは、後にDirectgovというポータルサイトに発展し、日本のデジタル庁による政府ウェブサイト一元化のモデルの一つとなっています。

また、デンマークでも国民ポータルサイトが立ち上げられ、公的サービスが提供されています。国際的な例としては、国境の検問所における出入国手続きを簡素化するワンストップボーダーポスト（OSBP）などが挙げられます。多くの国で、行政窓口の一本化が進められていますが、各国の制度や個人情報の保護などの制約から、その形態や程度は様々です。

日本におけるワンストップサービスの状況

日本では、2001年にe-Japan戦略が示され、電子政府の実現による行政サービスのワンストップ化が計画されました。総務省が開設した行政ポータルサイトe-Govは、行政手続き情報の案内や電子申請、パブリックコメントの受付などを行っています。しかし、かつて実施されたパスポートの電子申請は、利用率の低さから廃止されました。また、自動車保有関係手続のワンストップサービスも利用率が伸び悩むなど、課題も残っています。

一方、地方自治体では、死亡時の手続きをまとめた「おくやみコーナー」の設置や、外国人居住者向けの「ワンストップ型相談センター」の設置など、住民の利便性を高める動きが広がっています。また、ハローワークでは失業者向けの生活支援として、複数の機関と連携した「ワンストップ・サービス・デイ」を実施しています。これらの地域拠点を軸としたワンストップサービスは、コンパクトシティやスマートシティの思想にも通じ、人口減少社会における住民サービスの維持策としても重要です。

しかし、ブロードバンドの普及にも関わらず、縦割り行政の弊害からワンストップ行政サービスが十分に促進されているとは言い難い状況でした。新型コロナウイルスの流行は、日本のデジタル化の遅れを浮き彫りにしました。

総合窓口について

多くの自治体では、窓口業務の一本化を目指した総合窓口を導入しています。総合窓口は、住民が様々な手続きを一つの窓口で行えるようにするものです。しかし、実際には、住民票関係業務は高い実施率を示すものの、教育委員会関係業務では実施率が低いなど、ワンストップサービスが限定的な場合もあります。また、総合窓口の導入には、業務システムの構築や庁舎の改修など、高いハードルが存在するとされています。

総合窓口の例

愛媛県松山市では、2000年に総合窓口センターを導入し、市民課窓口業務を中心に182業務をワンストップで提供しています。福岡県大野城市では、「まどかフロア」という総合窓口を設置し、新潟県長岡市では、市役所機能の移転を機に、来庁者ではなく市職員が入れ替わる形でワンストップサービスを提供しています。

商業におけるワンストップサービス

商業分野では、一つの店舗で全ての買い物を済ませる「ワンストップショッピング」が普及しています。このような店舗やサービスを「ワンストップショップ」と呼びます。また、インターネットを利用したオンラインショッピングサイトでもワンストップサービスが提供されています。行政サービスと同様に、民間企業でも、引っ越し時の手続きなどを一括して行えるサービスが提供されていましたが、現在は終了しています。

まとめ

ワンストップサービスは、行政と商業の両分野で、私たちの生活をより便利にするために重要な役割を果たしています。行政手続きの効率化や商業施設の利便性向上だけでなく、地域住民の生活を支える仕組みとしても、その重要性は増しています。

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