ワーズ&ミュージック
『ワーズ&ミュージック』（WORDS AND MUSIC）は、1948年にアメリカで制作された伝記ミュージカル映画です。日本では劇場公開されませんでした。
この作品は、20世紀前半にブロードウェイで一時代を築いた作曲家リチャード・ロジャースと作詞家ロレンツ・ハートという稀代のコンビ、通称「ロジャース&ハート」の生涯を大まかに基に描いています。
概要と背景
メトロ・ゴールドウィン・メイヤー（MGM）が手がけた、ブロードウェイの著名な音楽家たちに焦点を当てた伝記映画シリーズの第2作目に位置づけられます。このシリーズには、ジェローム・カーンを描いた前作の『雲流るるはてに』（1946年）のほか、バート・カルマーとハリー・ルビーに関する『土曜は貴方に』（1950年）、そしてシグマンド・ロンバーグを描いた『我が心に君深く』（1954年）があります。
本作では、ロレンツ・ハート役をミッキー・ルーニーが、リチャード・ロジャース役をトム・ドレイクが演じました。また、ジャネット・リー、ベティ・ギャレット、アン・サザーンをはじめとする多数のミュージカル俳優や歌手が出演しています。
この映画は、出演者であるミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランドにとって、これが最後の共演機会となった点、そして劇中にロジャース＆ハートによる珠玉の楽曲が多数使用されている点が特筆されます。ただし、当時の類似する他の多くの映画と同様に、物語は史実に基づきつつも、大幅な脚色が加えられています。
特に、パートナーシップの解消やハートの若すぎる死の背景となった、彼の抱えていた精神的な問題や自己破壊的な行動といった困難な側面は描かれていません。さらに、当時としてはタブーであったハートの同性愛についても、一切触れられていませんでした。
特異な演出とポスター
映画の冒頭では、リチャード・ロジャース本人であるかのような演出がなされています。ロジャース役のトム・ドレイクが一人で登場し、まるでロジャースとして自己紹介するかのように、ロレンツ・ハートとの共同作業の物語が始まることを告げます。
また、映画のポスターには、ミッキー・ルーニーを含む多くの主要登場人物の顔写真が掲載されていましたが、主演の一人であるトム・ドレイクの顔写真は掲載されず、名前も他の出演者より小さく記されているという、異例の扱いを受けました。
ストーリー（脚色版）
物語は、作詞家を志すラリーことロレンツ・ハート（ミッキー・ルーニー）が、自身の詞に曲をつけてくれる作曲家を探している場面から始まります。友人であるハーブ・フィールズ（マーシャル・トンプソン）の紹介により、ディックことリチャード・ロジャース（トム・ドレイク）と出会い、1919年にパートナーシップを結びます。しかし、なかなかヒットに恵まれず、ディックは一時的に音楽から離れて子供服販売業に就きます。
ラリーは、歌手のペギー・ローガン・マクニール（ベティ・ギャレット）に音楽的にも個人的にも強く惹かれます。やがて、ラリーとディックの作品がブロードウェイで上演されることになります。ラリーはペギーを主役にする約束をしていましたが、実際の主役はジョイス・ハーモン（アン・サザーン）が演じることになります。一方、ディックはジョイスに惹かれますが、彼女は若すぎると考えます。その後に出会った女性ドロシー・フェイナー（ジャネット・リー）からは、自身が年を取りすぎていると判断されます。
次々とヒット作、ヒット曲を生み出すロジャース&ハートですが、ラリーは成功を素直に喜ぶことができません。うつ病に苦しむラリーでしたが、ジュディ・ガーランドがロジャース&ハートの楽曲を使用した映画に出演することが決まり、事態は好転するように見えます。ラリーはカリフォルニア州に家を購入しますが、気分は晴れません。ディックはドロシーと結婚し、ラリーとの同居を提案しますが、ラリーは依然として落ち込んだままです。ニューヨークでロジャース&ハートの新作が上演されることになり、ラリーは観劇に向かいますが、劇場の前で倒れて息を引き取ります。その後、ディックはロレンツ・ハートへのトリビュート公演を行います。
主な使用楽曲
劇中では、ロジャース&ハートによる数々の名曲が使用されました。
Manhattan
There's a Small Hotel
Mountain Greenery
Where's that Rainbow?
On Your Toes
We'll Have A Blue Room
Thou Swell
Where or When
ザ・レディ・イズ・ア・トランプ (The Lady Is a Tramp)
I Wish I Were in Love Again
Johnny One Note
ブルー・ムーン (Blue Moon)
10番街の殺人 (Slaughter on Tenth Avenue)
With a Song in My Heart
制作、評価、興行
本作の制作予算は265万9,065ドルでした。アメリカ国内およびカナダでの興行収入は345万3,000ドル、海外での興行収入は109万9,000ドルを記録しました。しかし、巨額の製作費を投じたため、最終的には37万1千ドルの損失を計上する結果となりました。
アメリカン・フィルム・インスティチュート（AFI）からは、2004年に楽曲「ザ・レディ・イズ・ア・トランプ」が「アメリカ映画主題歌ベスト100」にノミネートされ、2006年には本作自体が「ミュージカル映画ベスト」にノミネートされるなど、後世の評価も得ています。
2007年には、ワーナー・ブラザースよりDVDがリリースされました。このDVDには、本編でカットされたペリー・コモが歌う「Lover」や「You're Nearer」などの特典映像が収録されています。
スタッフ
監督：ノーマン・タウログ
製作：アーサー・フリード
脚本：フレッド・F・フィンクルホフ
撮影：チャールズ・ロッシャー、ハリー・ストラドリング
この作品は、20世紀前半にブロードウェイで一時代を築いた作曲家リチャード・ロジャースと作詞家ロレンツ・ハートという稀代のコンビ、通称「ロジャース&ハート」の生涯を大まかに基に描いています。
概要と背景
メトロ・ゴールドウィン・メイヤー（MGM）が手がけた、ブロードウェイの著名な音楽家たちに焦点を当てた伝記映画シリーズの第2作目に位置づけられます。このシリーズには、ジェローム・カーンを描いた前作の『雲流るるはてに』（1946年）のほか、バート・カルマーとハリー・ルビーに関する『土曜は貴方に』（1950年）、そしてシグマンド・ロンバーグを描いた『我が心に君深く』（1954年）があります。
本作では、ロレンツ・ハート役をミッキー・ルーニーが、リチャード・ロジャース役をトム・ドレイクが演じました。また、ジャネット・リー、ベティ・ギャレット、アン・サザーンをはじめとする多数のミュージカル俳優や歌手が出演しています。
この映画は、出演者であるミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランドにとって、これが最後の共演機会となった点、そして劇中にロジャース＆ハートによる珠玉の楽曲が多数使用されている点が特筆されます。ただし、当時の類似する他の多くの映画と同様に、物語は史実に基づきつつも、大幅な脚色が加えられています。
特に、パートナーシップの解消やハートの若すぎる死の背景となった、彼の抱えていた精神的な問題や自己破壊的な行動といった困難な側面は描かれていません。さらに、当時としてはタブーであったハートの同性愛についても、一切触れられていませんでした。
特異な演出とポスター
映画の冒頭では、リチャード・ロジャース本人であるかのような演出がなされています。ロジャース役のトム・ドレイクが一人で登場し、まるでロジャースとして自己紹介するかのように、ロレンツ・ハートとの共同作業の物語が始まることを告げます。
また、映画のポスターには、ミッキー・ルーニーを含む多くの主要登場人物の顔写真が掲載されていましたが、主演の一人であるトム・ドレイクの顔写真は掲載されず、名前も他の出演者より小さく記されているという、異例の扱いを受けました。
ストーリー（脚色版）
物語は、作詞家を志すラリーことロレンツ・ハート（ミッキー・ルーニー）が、自身の詞に曲をつけてくれる作曲家を探している場面から始まります。友人であるハーブ・フィールズ（マーシャル・トンプソン）の紹介により、ディックことリチャード・ロジャース（トム・ドレイク）と出会い、1919年にパートナーシップを結びます。しかし、なかなかヒットに恵まれず、ディックは一時的に音楽から離れて子供服販売業に就きます。
ラリーは、歌手のペギー・ローガン・マクニール（ベティ・ギャレット）に音楽的にも個人的にも強く惹かれます。やがて、ラリーとディックの作品がブロードウェイで上演されることになります。ラリーはペギーを主役にする約束をしていましたが、実際の主役はジョイス・ハーモン（アン・サザーン）が演じることになります。一方、ディックはジョイスに惹かれますが、彼女は若すぎると考えます。その後に出会った女性ドロシー・フェイナー（ジャネット・リー）からは、自身が年を取りすぎていると判断されます。
次々とヒット作、ヒット曲を生み出すロジャース&ハートですが、ラリーは成功を素直に喜ぶことができません。うつ病に苦しむラリーでしたが、ジュディ・ガーランドがロジャース&ハートの楽曲を使用した映画に出演することが決まり、事態は好転するように見えます。ラリーはカリフォルニア州に家を購入しますが、気分は晴れません。ディックはドロシーと結婚し、ラリーとの同居を提案しますが、ラリーは依然として落ち込んだままです。ニューヨークでロジャース&ハートの新作が上演されることになり、ラリーは観劇に向かいますが、劇場の前で倒れて息を引き取ります。その後、ディックはロレンツ・ハートへのトリビュート公演を行います。
主な使用楽曲
劇中では、ロジャース&ハートによる数々の名曲が使用されました。
Manhattan
There's a Small Hotel
Mountain Greenery
Where's that Rainbow?
On Your Toes
We'll Have A Blue Room
Thou Swell
Where or When
ザ・レディ・イズ・ア・トランプ (The Lady Is a Tramp)
I Wish I Were in Love Again
Johnny One Note
ブルー・ムーン (Blue Moon)
10番街の殺人 (Slaughter on Tenth Avenue)
With a Song in My Heart
制作、評価、興行
本作の制作予算は265万9,065ドルでした。アメリカ国内およびカナダでの興行収入は345万3,000ドル、海外での興行収入は109万9,000ドルを記録しました。しかし、巨額の製作費を投じたため、最終的には37万1千ドルの損失を計上する結果となりました。
アメリカン・フィルム・インスティチュート（AFI）からは、2004年に楽曲「ザ・レディ・イズ・ア・トランプ」が「アメリカ映画主題歌ベスト100」にノミネートされ、2006年には本作自体が「ミュージカル映画ベスト」にノミネートされるなど、後世の評価も得ています。
2007年には、ワーナー・ブラザースよりDVDがリリースされました。このDVDには、本編でカットされたペリー・コモが歌う「Lover」や「You're Nearer」などの特典映像が収録されています。
スタッフ
監督：ノーマン・タウログ
製作：アーサー・フリード
脚本：フレッド・F・フィンクルホフ
撮影：チャールズ・ロッシャー、ハリー・ストラドリング
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