ヴァイオリン協奏曲 (カバレフスキー)

ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 作品48

ドミトリー・カバレフスキー（Dmitry Kabalevsky, 1904-1987）によって1948年に書かれたヴァイオリン協奏曲ハ長調 作品48は、彼の創作活動において重要な位置を占める作品の一つです。この協奏曲は、同年に創立30周年を迎えたコムソモール（ソビエト連邦の共産主義青年同盟）を記念し、ソ連の若い世代、すなわち演奏家と聴衆の双方に捧げる意図をもって作曲されました。

作曲の背景

カバレフスキーは、このヴァイオリン協奏曲を皮切りに、ソ連の青年へ捧げる協奏曲の3部作を構想していました。本作はその第1弾として完成し、続く1949年にはチェロ協奏曲第1番が、そして1952年にはピアノ協奏曲第3番が作曲され、このユニークな3部作が完結します。これらの作品群は、一つの演奏会でまとめて演奏されることを想定して書かれており、いずれも演奏時間が約20分前後と、従来の協奏曲に比べて比較的コンパクトな規模にまとめられているのが特徴です。本作もまた、約15分で演奏される短いながらも内容の濃い作品となっています。

初演

作品の初演は、作曲された年の1948年10月29日、モスクワで行われました。ソリストを務めたのはイーゴリ・ベズロドニー、指揮はミハイル・テリアンが執り、モスクワ音楽院の学生オーケストラが演奏しました。

編成

この協奏曲は、独奏ヴァイオリンと以下の編成のオーケストラによって演奏されます。

フルート
オーボエ
クラリネット2
ファゴット
ホルン2
トランペット
トロンボーン
ティンパニ
トライアングル
小太鼓
タンブリン
シンバル
大太鼓
木琴
弦五部

構成

このヴァイオリン協奏曲は、標準的な3つの楽章から構成されています。

第1楽章：Allegro molto e con brio

ソナタ形式で書かれています。トランペットが主導する短いながらも印象的な序奏が奏でられた後、すぐに独奏ヴァイオリンが勢いのある律動的な第1主題を提示します。続いて、対照的に歌うような性格を持つ第2主題が現れ、一旦静けさの中へ向かいます。展開部では、独奏ヴァイオリンのピッツィカートが特徴的に用いられ、次第に音楽が高揚していきます。再現部では、独奏ヴァイオリンがさらに技巧的で激しいパッセージを披露します。

第2楽章：Andante cantabile

三部形式の緩徐楽章です。弱音器を装着した弦楽器による穏やかな伴奏の上で、独奏ヴァイオリンが深い叙情性を湛えた美しい旋律を奏でます。この旋律はフルートに引き継がれ、独奏ヴァイオリンはそれに応えるように対比的なメロディを加えます。中間部では、オーボエやファゴットが奏でるメロディと、独奏ヴァイオリンの躍動的なパッセージが組み合わされ、音楽が展開します。楽章の後半となる第三部では、まず合奏ヴァイオリンが冒頭の旋律を奏で始め、その後独奏ヴァイオリンが受け継ぎます。最後は独奏ヴァイオリンのフラジオレット（ハーモニクス奏法）によって、静かに幕を閉じます。

第3楽章：Vivace giocoso

ロンド形式によるフィナーレです。その構成はA-B-A-C-カデンツァ-A-B-Cという形をとります。ユーモラスで軽快なA主題が登場した後、歌謡的なB主題が続きます。これらの主題が展開された後、A主題が再現されます。続いて、民謡のような雰囲気を持つC主題が現れ、発展していきます。その後、技巧的なトリルや重音を用いた独奏ヴァイオリンのカデンツァが置かれます。カデンツァが終わると、フルートによって再びA主題が姿を現し、続いてB主題も再現されます。最後にC主題の要素を用いたコーダによって、一気呵成に華々しく曲を締めくくります。

全体として、この協奏曲は若々しいエネルギー、親しみやすい旋律、そしてヴァイオリンの技巧的な可能性をバランス良く追求した作品と言えるでしょう。特にソ連の青年音楽家たちにとって、格好の演奏機会を提供する作品として位置づけられました。その簡潔な構成と魅力的な内容は、今日でも多くの聴衆に愛されています。

参考文献

「最新名曲解説全集10 協奏曲III」（音楽之友社）
* オリンピア盤（OCD573）ライナーノーツ

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