ヴァイオリン協奏曲第1番 (ラロ)

ヴァイオリン協奏曲第1番 ヘ長調 作品20

作品概要

エドゥアール・ラロによるヴァイオリンと管弦楽のための作品であり、彼の創作キャリアにおける重要な転換点となった一曲です。1872年に作曲され、演奏にはおおよそ24分を要します。

パリ音楽院を卒業したラロは、初期に多くの作品を発表しましたが、残念ながら広く認められるには至らず、この相次ぐ不成功に失望して、一時は作曲から距離を置いていました。30代の頃はヴィオラ奏者として室内楽演奏に積極的に携わっていましたが、1865年の結婚を機に再び作曲の筆を執ることを決めます。1866年から取り組んだオペラ『フィエスク』を皮切りに、再び精力的に作品を発表し始めました。

本作は、当時を代表する名ヴァイオリニスト、パブロ・デ・サラサーテのために書かれました。この協奏曲が1874年に初演されると、ラロはようやく念願の成功を手にします。この成功が大きな自信となり、後に『スペイン交響曲』やチェロ協奏曲といった、今日なお演奏される傑作を生み出す契機となりました。楽譜は初演が行われた同じ1874年に出版され、初演者であるサラサーテに献呈されています。

初演

本作の初演は、作曲から2年後の1874年1月18日、パリのコンセール・ナシオナルにて行われました。独奏は、この作品が献呈されたパブロ・デ・サラサーテが務めました。初演は大喝采をもって迎えられ、その年の5月には早くもロンドンでも演奏されるなど、高い評価を得ました。

編成

独奏ヴァイオリン
ピッコロ
フルート2
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン4
トランペット2
トロンボーン3
ティンパニ
トライアングル
弦五部（ヴァイオリン2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

楽曲構成

楽曲は伝統的な3つの楽章で構成されています。

第1楽章 Andante - Allegro

ヘ短調からヘ長調へと変化する、序奏を伴うソナタ形式の楽章です。4分の4拍子で書かれています。荘厳で重厚な管弦楽の響きと、それに呼応する独奏ヴァイオリンのやり取りによる序奏で開始されます。主部（Allegro）に入ると、独奏ヴァイオリンが第一主題を提示し、その後は管弦楽が間奏を奏します。続いて、独奏ヴァイオリンによって第二主題が提示され、華麗な装飾音を含む技巧的なパッセージが続きます。提示部の終盤には、低音弦楽器によって第三主題が現れ、これをヴァイオリンが繰り返す形で提示部が締めくくられます。展開部では主に第一主題の素材が用いられ、劇的に展開されます。再現部を経て、楽章の最後には序奏で聴かれた管弦楽の響きが戻り、高揚のうちに終結します。

第2楽章 Andantino

変ロ長調、三部形式の緩徐楽章です。6分の8拍子の揺れるようなリズムに乗って、独奏ヴァイオリンが叙情的で美しい旋律を歌い上げます。伴奏を務める弦楽器群は弱音器（ミュート）を使用し、柔らかく繊細な響きを作り出しています。この楽章は終止することなく、アタッカ（切れ目なく）で次の終楽章へと繋がります。

第3楽章 Allegro con fuoco

ヘ短調からヘ長調へと転じ、火のように速く情熱的に演奏されるべき終楽章です。三部形式を取り、2分の2拍子（アレ・ブレーヴェ）で進行します。管弦楽による力強い短い導入の後、独奏ヴァイオリンが技巧を前面に押し出した、情熱的かつ精力的な旋律を奏でます。中間部では、管弦楽による特徴的なリズムの短い間奏の後、独奏ヴァイオリンがやや内省的で歌うようなメロディを奏でます。第三部では第一部が再現され、独奏ヴァイオリンのパッセージはクライマックスに向けて一層の輝きを増します。最後は管弦楽が力強く締めくくり、全曲の幕を閉じます。

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