ヴァリグ・ブラジル航空967便遭難事故:謎に包まれた太平洋上の悲劇
1979年1月30日、
成田国際空港から
ブラジルに向けて飛び立ったヴァリグ・
ブラジル航空967便は、
太平洋上で行方不明となりました。
ボーイング707-320F型
貨物機に搭乗していた乗員6名全員の消息は途絶え、機体は発見されることはありませんでした。この事故は、成田空港開港後初の遭難事故というだけでなく、多くの謎を残した未解決事件として、航空史に暗い影を落とす出来事となりました。
事故当日の状況
ヴァリグ・
ブラジル航空967便は、日本と
ブラジル間の定期貨物便として運航されていました。当日は、成田空港からロサンゼルス、
リマを経由し、サンパウロに向かう予定でした。しかし、荷物の積み込み遅れにより、予定時刻より2時間以上遅れて午後8時23分に離陸。銚子航空無線標識上空を通過後、午後8時53分に最後の交信を行い、その後消息を絶ちました。最後の交信は、
太平洋上で予定航路上の地点を通過したことを伝えるものでした。
徹底的な捜索と未発見の機体
事故発生後、日本政府は
海上保安庁、
海上自衛隊、
アメリカ軍の協力を得て大規模な捜索を実施しました。広大な
太平洋上を捜索しましたが、機体の残骸や遺留品は一切発見されませんでした。数日後、油の流出や
発泡スチロール片などが発見されましたが、事故機のものと断定できる証拠は見つかりませんでした。捜索は
2月5日に打ち切られ、機体は水深5000メートルを超える深海に沈んだと推定されました。
失われた芸術作品
事故機には、雑貨や自動車部品のほか、約1200
キログラムの絵画が積載されていました。その中には、日系
ブラジル人
画家マナブ間部の作品53点が含まれており、時価約20億円と推定されました。これらの作品は、日本と
ブラジルの移民70周年を記念する展覧会に出展されたもので、
ブラジルへの返還途中でした。貴重な芸術作品が失われたことも、この事故の大きな損失となりました。
解明されない事故原因
機体の残骸が発見されなかったため、事故原因は断定されていません。
乱気流、機体金属疲労、爆破、パイロットによる
自殺など、様々な推測がなされましたが、いずれも確証に欠けています。同様の
航空事故では、通常、機体の一部やフライトレコーダーなどが発見され、原因究明に繋がりますが、967便事故は異例なほど証拠が乏しく、未解決の謎として残っています。
結論
ヴァリグ・
ブラジル航空967便遭難事故は、未解決のまま現在に至っています。広大な
太平洋、深い海、そして当時の捜索技術の限界が、真相解明を阻んだと言えるでしょう。乗員6名の犠牲、貴重な芸術作品の損失、そして残された謎は、航空安全の重要性を改めて認識させる、痛ましい教訓となっています。この事故は、航空業界における安全対策の強化、捜索技術の発展に貢献する重要な事例として、これからも研究、議論されるべきでしょう。