ヴィクトル・ゴルバトコ

ヴィクトル・ヴァシリエヴィチ・ゴルバトコ氏は、ソビエト連邦時代に活躍した傑出した宇宙飛行士です。1934年12月3日に生まれ、2017年5月17日に逝去しました。彼は計3回の宇宙飛行を成功させ、その功績からソ連邦英雄の称号を二度受章しています。宇宙開発の最前線で重要な役割を果たした後、教育者としても多くの後進を指導しました。

ゴルバトコ氏は、現在のロシア南部、クラスノダール地方のヴェンツィ-ザリャという町で生を受けました。若くして航空の世界に進み、1953年にパヴログラツキー軍事航空学校で初等パイロット訓練を終え、1956年にはバタイスキー軍事航空学校を卒業し、本格的なパイロットとしての道を歩み始めました。彼の卓越した技量と適性は、やがてソビエトの宇宙計画の目に留まり、1960年3月7日、彼は名誉ある宇宙飛行士候補生として選抜されることになります。宇宙飛行士としての専門訓練と並行して、彼は勉学も続け、1968年にはジュコーフスキー記念空軍工科大学を卒業しています。この大学には後に学長として戻ることになります。

ゴルバトコ氏の宇宙飛行士としてのキャリアは、1969年10月12日に始まりました。これが彼の最初の宇宙飛行で、ソユーズ7号に搭乗し、約5日間（正確には4昼夜と23時間）を宇宙で過ごしました。二度目の飛行は、1977年2月のソユーズ24号ミッションです。この時は宇宙ステーション「サリュート5号」に滞在し、科学実験や観測任務を遂行しました。彼の三度目にして最後の宇宙飛行は、1980年6月に行われました。ソユーズ36号で打ち上げられ、宇宙ステーション「サリュート6号」にドッキング。帰還にはソユーズ37号を使用しました。このミッションでは、インターコスモス計画の一環として、ベトナム人宇宙飛行士であるファム・トゥアン氏と共に活動し、国際的な宇宙協力の一翼を担いました。

1982年に宇宙飛行士としての現役生活から退いた後も、ゴルバトコ氏は宇宙開発と航空科学への情熱を失うことはありませんでした。彼はモスクワにあるジュコーフスキー記念空軍工科大学の教授に就任し、長年の経験と知識を活かして多くの学生を指導しました。1987年には母校の学長に就任するなど、教育機関の運営においても重要な役割を果たしました。

宇宙飛行士、教育者としての顔を持つ一方で、ゴルバトコ氏は社会活動にも積極的に関わりました。1974年にはロシア・モンゴル友好協会の理事長を務め、国際親善に貢献しました。また、1989年3月の人民代議員選挙では当選を果たし、ソビエト連邦の最高意思決定機関の一つであった第1回最高会議のメンバーとしても活動しました。

ゴルバトコ氏は、1969年と1977年の二度にわたり、ソビエト連邦の最高栄誉であるソ連邦英雄の称号を授与されました。これは、彼の宇宙開発への貢献が国家によっていかに高く評価されていたかを示しています。彼の故郷であるクラスノダール地方ノバクバーンスクには、彼の功績を称える記念碑が建立されています。2003年に行われた除幕式で披露された銅像は、宇宙服をまといながらもヘルメットを外した姿で、彼の人間味あふれる面影を伝えています。晩年には、社会的な問題に対する姿勢を示すこともあり、2005年にはユコス社の元役員に対する制裁を求める嘆願書に署名した50名の著名人の一人となりました。

ヴィクトル・ヴァシリエヴィチ・ゴルバトコ氏は、ソビエト時代の宇宙開発を支えた英雄の一人であり、その大胆な宇宙飛行、教育者としての情熱、そして社会活動への貢献は、今なお多くの人々に記憶されています。彼の生涯は、困難な目標に挑戦し、国家と科学の発展に尽力した偉大な人物の軌跡を示しています。

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