ユゴス

ユゴス：クトゥルフ神話の謎めいた惑星

クトゥルフ神話において、ユゴス（Yuggoth）は、太陽系の果てに位置する謎めいた惑星として描かれています。その存在は、禁断の書物などに記されており、海王星の外側にあるとされていますが、冥王星であるという説や、全く別の惑星であるという説も存在します。太陽系外縁天体で、太陽系の惑星軌道面に対し垂直な軌道を描いて周回するという記述も見られます。

ユゴスの発見と正体

ユゴスの存在は、1930年にローウェル天文台が海王星の外側に新たな惑星を発見したことに関連しています。H・P・ラヴクラフトは、幼少期から天文学に深い関心を抱いており、自作小説『闇に囁くもの』でこの9番目の惑星をユゴスとして登場させました。1930年3月15日の手紙では、友人に「新惑星はユゴスかもしれない」と記しています。

しかし、冥王星が発見後、そのセンセーショナルな印象を失ったことや、ラヴクラフトの手紙自体がユゴスと冥王星の同一性を断定していないことなどから、後のクトゥルフ神話の作家たちは、ユゴスが冥王星とは別の惑星である可能性を考察するようになりました。2006年に冥王星が惑星の定義から外れたことで、この解釈はより現実味を帯びることとなります。

作中でのユゴスの描写

ラヴクラフトの『闇に囁くもの』では、ユゴスは太陽系の縁辺に位置する、暗黒の球体として描写されています。そこには黒い石で造られた塔が連なる巨大都市が存在し、奇妙な鉱物の大鉱床や、黒い川が流れ、巨大な橋が架かっています。太陽の光は星のように弱く、そこに住まう存在は光を必要としません。

ラムジー・キャンベルの『暗黒星の陥穽』では、地球とユゴスを繋ぐワープ装置が描かれています。ユゴスでは地球には存在しない特殊な金属（ラグ金属、トゥク＝ル金属）が産出され、トゥク＝ル金属は脳髄シリンダーの材料として用いられています。

ユゴスにはミ＝ゴ以外にも様々な種族が住んでいるとされています。ラヴクラフトの『永劫より』ではユゴス星人が言及されており、彼らはユゴスから古代ムー大陸に邪神ガタノトーアを連れてきたとされています。また、トラペゾヘドロンや、邪神グラーキ、ラーン＝テゴスなどもユゴスを経由して地球に到来したとされています。サクサクルース一族もユゴスに到来し、そこからツァトゥグァらが分派したとされています。

ルポフによるユゴスの描写

リチャード・A・ルポフの『2337年3月15日の発見』では、ユゴスは木星の2倍、地球の600倍という巨大な天体として描かれています。毎時80,000kmという高速で自転しているため、極地が扁平になった楕円形をしているとされています。表面は、鼓動する心臓のように収縮と膨張を繰り返す深紅の溶岩地殻で覆われ、都市は天井から釣り下がるように建設されているとされています。

ルポフの作品では、ユゴスの衛星についても言及されています。Nithonはミ＝ゴによって光を遮られる雲に覆われた衛星、Zamanはユゴスの月、ThogとThokは双子の衛星で、それぞれ黒い海とショゴスが住む衛星として描かれています。

ユゴスを題材とした作品

ユゴスは、多くのクトゥルフ神話作品で題材として扱われています。ラヴクラフトの『闇に囁くもの』『ユゴスよりのもの』、ラムジー・キャンベルの『暗黒星の陥穽』、マイケル・ファンティナの『Nithon』、リチャード・A・ルポフの『2337年3月15日の発見』、朝松健の『弧の増殖』などが挙げられます。また、ラヴクラフトの『永劫より』『闇をさまようもの』、クラーク・アシュトン・スミスの『神々の家系図』、ブライアン・ラムレイの『狂気の地底回廊』『ダイラス＝リーンの災厄』、ダニエル・ハームズの『エンサイクロペディア・クトゥルフ』など、多くの作品で言及されています。

結論

ユゴスは、クトゥルフ神話において重要な役割を担う、謎に満ちた惑星です。その正体や位置、そしてそこに住まう存在については、様々な解釈があり、今後もクトゥルフ神話研究者の考察が続けられていくでしょう。

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