ヴィッラ・アドリアーナ (ティヴォリ)

ヴィッラ・アドリアーナは、イタリアのティヴォリにあるユネスコの世界遺産に登録されている遺跡です。ローマの東約30kmに位置するティヴォリは、丘陵地帯にあり、温暖な気候と豊かな自然に恵まれています。古代ローマ時代から、この地は上流階級の避暑地として利用されていました。

ハドリアヌス帝は、118年からこのティヴォリの麓に広大な別荘、ヴィッラ・アドリアーナの建設を始めました。これは、121年に彼がローマ帝国の視察旅行に出る前のことでした。煉瓦の刻印を分析した結果、この別荘は2段階に分けて建設され、133年に完成したことが判明しています。別荘内には、皇帝が視察旅行で感銘を受けた各地の建築物や風景を模した建造物が数多く存在します。例えば、ギリシャのアテナイのアゴラの柱廊を模した「ポイキレ」や、エジプトのアレクサンドリアとカノポスを結ぶ運河を模した「カノポス」などがあります。

ヴィッラ・アドリアーナの敷地面積は1.2km2を超え、30以上の建物が点在しています。ハドリアヌス帝の死後、この別荘がどのように使われたのかは詳しい記録が残っていませんが、3世紀までは改造が続けられていたことが分かっています。その後、蛮族によって石切り場として利用され、廃墟となりました。

15世紀頃から、美術品を求めて、ピッロ・リゴーリオなどの人物がヴィッラ・アドリアーナの発掘を始めました。ピッロ・リゴーリオは、ティヴォリの丘陵に位置するエステ家の別荘を設計したことでも知られています。

ヴィッラ・アドリアーナは、その歴史的、文化的価値から、以下の登録基準を満たして世界遺産に登録されています。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作であること。
(2) ある期間を通じて、またはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関して、人類の価値の重要な交流を示すものであること。
(3) 現存する、または消滅した文化的伝統や文明の、唯一の、または少なくとも稀な証拠であること。

ヴィッラ・アドリアーナは、ハドリアヌス帝の壮大な構想と、ローマ帝国の繁栄を今に伝える貴重な遺跡であり、古代ローマの文化や歴史を学ぶ上で重要な存在です。その美しい景観と歴史的価値から、多くの観光客が訪れる人気のスポットとなっています。関連する場所としては、同じくティヴォリに位置するエステ家別荘も有名です。

参考文献としては、以下の書籍があります。

レモン・シュヴァリエ、レミ・ポワニョ著『ハドリアヌス帝ーー文人皇帝の生涯とその時代』（北野徹訳、白水社〈文庫クセジュ〉、2010年）
* 『建築家ル・コルビュジエの教科書。』マガジンハウス〈マガジンハウスムック〉、2009年。ISBN 978-4-8387-8568-1。

この遺跡は、ローマ帝国時代の建築技術や美術、そして皇帝の個人的な趣味を垣間見ることができる貴重な場所です。訪れる人々は、古代ローマの繁栄と、ハドリアヌス帝の文化的な関心の深さを感じることができるでしょう。

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