ヴィルヘルム・ラインハルト・フォン・ナイペルク

ヴィルヘルム・ラインハルト・フォン・ナイペルク：波乱に満ちた軍人の生涯

ヴィルヘルム・ラインハルト・フォン・ナイペルク（1684年 5月27日 - 1774年 5月26日）は、オーストリアに仕えた貴族であり、軍人です。男爵から伯爵に陞爵し、最終的には元帥の地位にまで上り詰めました。

生い立ちと初期の軍歴

ナイペルク家は、シュヴァーベン地方を本拠地とする貴族の家柄です。父エーベルハルト・フリードリヒも軍人でした。ヴィルヘルムは1702年に軍に入り、着実に昇進を重ね、1716年には大佐に任命されます。彼は墺土戦争でプリンツ・オイゲンやメルシー伯の下で活躍し、その軍事的な才能を発揮しました。その後、四国同盟戦争が勃発すると、シチリアに転戦し、フランカヴィッラの戦いで負傷しました。

マリア・テレジアの皇配教育係

1723年、ナイペルクは少将に昇進すると同時に、カール6世から重要な任務を託されます。それは、皇女マリア・テレジアの皇配に内定していたロートリンゲン公国公世子フランツ・シュテファンの教育係というものでした。ナイペルクはフランツに数年間付き添い、1729年にフランツが公国継承のために帰国する際も同行しました。1730年にはルクセンブルク要塞の司令官に任命されますが、フランツの諸国宮廷訪問が始まると、その計画を立案し、再び付き添い生活を送ることになります。この間、1726年にはマリア・フランキスカ・フォン・ケーフェンヒュラーと結婚しています。

ポーランド継承戦争と対オスマン帝国戦争

1733年、ナイペルクは中将に昇進し、ポーランド継承戦争では北イタリア戦線に従軍します。ロンバルディアを巡り、フランス・サルデーニャ連合軍と激しい戦いを繰り広げました。1735年には歩兵大将に昇進し、1737年にはテメシュヴァール総督に任じられます。

同時期、バルカン半島では再び対オスマン帝国戦争が勃発しており、ナイペルクも主要な指揮官の一人として参戦しました。しかし、オーストリア軍は戦略の稚拙さ、士気の低さ、補給不足などにより大きな損害を被り、ベオグラードを含む広大な領土をオスマン帝国に割譲せざるを得なくなります。ナイペルクは、この戦争の責任を問われ、特に1739年のグロッカの戦いでの敗北後、本国の承認を得ずに不利な条件でベオグラード条約を締結したことが問題視されました。その結果、軍法会議にかけられ、グラーツ要塞に収監されることになります。

オーストリア継承戦争とモルヴィッツの戦い

1740年、カール6世が崩御し、マリア・テレジアが即位すると、ナイペルクは釈放されます。オーストリア継承戦争が勃発すると、シュレージエンに侵攻してきたプロイセンのフリードリヒ2世（大王）を迎撃する軍の指揮官に任命されました。

1741年、ナイペルク軍はプロイセン軍に対し、雪解け前の山地越えを実行し、その虚を突く作戦に出ます。しかし、モルヴィッツの戦いでフリードリヒ大王に敗北を喫してしまいます。敗戦の2日後、ナイペルクは元帥に昇進しますが、その責任を問われることになります。その後、ナイペルクは何とかナイセ以南のシュレージエンを確保し、プロイセン軍と睨み合いを続けますが、戦況を打開することはできませんでした。

クラインシュネレンドルフの密約と晩年

当時のオーストリアは孤立状態にあり、ベーメンにはフランス・バイエルン軍が侵入するなど苦戦を強いられていました。そこで、オーストリアはイギリスの仲介のもと、プロイセンとの秘密講和を決意し、その代表にナイペルクが指名されます。クラインシュネレンドルフの密約により、オーストリアは下シュレージエンの割譲を認め、プロイセンと停戦。ナイペルクは軍をベーメンに転進させますが、プラハが陥落したため、オーストリア軍は撤退を余儀なくされます。その後、ナイペルクは再びルクセンブルク要塞の司令官となり、南ネーデルラント戦線に異動しました。

ナイペルクはデッティンゲンの戦いにも参加しましたが、その後は第一線から退き、1753年には金羊毛騎士位を授与され、1755年には宮廷軍事委員会の副総裁に就任しました。1774年 5月26日に没しました。

人物評価

ナイペルクの評価は決して高くはありません。ベオグラード条約の責任問題やモルヴィッツの戦いでの敗北により、軍内外から厳しい非難を浴びました。しかし、フリードリヒ大王はナイペルクの作戦を評価しており、トーマス・カーライルも同情的に彼の更迭について記述しています。軍事指揮官としてのナイペルクについては、必ずしも否定的な評価ばかりではないようです。

家族

孫にナポレオン戦争時代に活躍したアダム・アルベルトがいます。また、娘のアウエルスペルク侯爵夫人マリア・ヴィルヘルミーナは大変な美人で知られていて、神聖ローマ皇帝フランツ1世の愛人との噂が流れ、若いころのシャルル・ド・リーニュ侯とは恋愛関係にあったという。

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