ヴィーナ

ヴィーナの概要

ヴィーナ（ヒンディー語: वीणा、タミル語: வீணை、Veena, Vina）は、弦楽器の一種で、特にインドの伝統音楽において重要な役割を果たしています。特に南インド古典音楽、つまりカルナータク音楽などで多く用いられるこの楽器は、歴史的にもさまざまな進化を遂げています。ヴィーナは、古代インドで非常に多様な形態を持っていた弦楽器の総称でもあり、地域や時代によって相応の楽器が存在していました。

ヴィーナの構造

一般に知られるヴィーナは、全長約120センチメートルの長さを持ち、共鳴器となる部分は直径約50センチメートルの空洞の木や瓢箪（ひょうたん）で作られています。この楽器の中心には、約70センチの竿があり、7本の弦が張られています。また、棹には金属製のフレットが付いており、その数は楽器によって異なります。演奏者は基本的に弦をピックで弾いて音を出し、その微妙な音色を楽しむことができます。多くの場合、ヴィーナのヘッド部分にはドラゴンの装飾が施されています。

北インドと南インドのヴィーナ

インドの古典音楽は大きく分けて南インドのカルナータカ音楽と北インドのヒンドゥスターニー音楽に分類されますが、ヴィーナにもその違いが表れています。南インドのヴィーナは一般的にフレットが24個で、演奏者に向いているドラゴンの頭を持つのが特徴です。一方、北インドのヴィーナは「ビーン」と呼ばれ、フレット数は20から26個と変動し、ドラゴンの頭が演奏者と反対方向を向いていることが多いです。この違いを基に、北と南のヴィーナを見分けることが可能です。

ヴィーナの種類

1. キンナラ・ヴィーナ

干瓢の実を胴体に利用し、竹筒を棒として取り付けたもので、ルドラ・ヴィーナの原型とされています。

2. シャタタントリ・ヴィーナ

100本の弦を有するハープの一種で、ビルマの竪琴の起源とも言われています。

3. ルドラ・ヴィーナ

北インド古典音楽で演奏されるもので、シヴァ神に根ざした楽器です。肩に担いで演奏します。

4. サラスヴァティー・ヴィーナ

南インドの古典音楽で使われ、知恵と音楽の女神であるサラスヴァティーにちなんで名付けられました。ギターの形に似たものです。

演奏法と技巧

演奏者は床に座り、サラスヴァティー・ヴィーナを左膝に置き、胴は右膝の側に置いて演奏します。右手には金属製のプレクトラムをはめ、弦を弾くことで音を出します。また、左手はフレットを押さえ、弦を滑らせて特殊な装飾音（ガマカ）を演出します。これにより、ヴィーナは独自の豊かな音色を奏でることが可能になっています。特に南インドの伝統音楽においては、演奏者が様々な表現を行うために複雑な技巧を駆使しています。

現代におけるヴィーナの役割

今日のインド音楽界においても、ヴィーナは重要な役割を果たし続けており、その伝統は数世代にわたって受け継がれています。特にサラスヴァティー・ヴィーナやルドラ・ヴィーナは、それぞれの地域での音楽文化に深く根ざした楽器です。著名な演奏家たちがこの楽器の魅力を引き出し、世界中の聴衆にその音楽を届けています。

まとめ

ヴィーナは、古代インドの弦楽器の総称として、その歴史や文化が非常に豊かです。南北のスタイルの違いや、各種のヴィーナの特徴を理解することで、インド音楽の深い魅力に触れることができます。この楽器は、インド音楽の神髄を体現していると言え、その音色は今もなお聴く者の心を魅了し続けています。

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