ヴェストラン県

ヴェストラン県

ノルウェー西部に広がるヴェストラン県（ノルウェー語: Vestland）は、2020年1月1日に従来のホルダラン県とソグン・オ・フィヨーラネ県の大部分（ホルニンダールを除く）が統合されて設立されました。この新県は、広大な北海に面し、その境界は北をムーレ・オ・ロムスダール県、東をインランデ県、ヴィーケン県、ヴェストフォル・オ・テレマルク県、そして南をローガラン県と接しています。県の行政機能は、歴史ある都市ベルゲンに集約されており、県知事の執務室はソグンダールにあるヘルマンスヴェルクに置かれています。

ヴェストラン県の最大の魅力は、その類まれな自然景観にあります。無数のフィヨルドが海岸線に深く切れ込み、その背後には険しい山々が連なります。県内には、ノルウェーで最大、そしてヨーロッパ全体でも二番目の長さを誇るソグネ・フィヨルドが存在し、その壮大な姿は見る者を圧倒します。また、美しいハルダンゲル・フィヨルドや、ユネスコ世界遺産「西ノルウェーフィヨルド群」の一部として登録されているガイランゲル・フィヨルド、ネーロイ・フィヨルドなど、世界的に有名なフィヨルドが数多く点在しています。

フィヨルドだけでなく、この地域は他の地理的な特異点も有しています。ヨーロッパ大陸最大の面積を持つヨステダール氷河の一部が県域にかかっており、壮大な氷河地形を形成しています。さらに、ヨーロッパで最も深い湖として知られるホルニンダール湖もヴェストラン県内に位置しています。これらの自然の驚異に加え、交通インフラの面では、世界最長の道路トンネルであるラルダールトンネルが、県内の重要な東西を結ぶ動脈となっています。

言語と文化の面では、ヴェストラン県はノルウェー語の二つの公用筆記法のうち、ニーノシュクが支配的に使われている地域です。県当局も公用筆記法としてニーノシュクを採用しており、国内でニーノシュクを主要な公用筆記法としているのは、ヴェストラン県と北隣のムーレ・オ・ロムスダール県の二つだけです。県内に存在する43の基礎自治体のうち、実に41の自治体がニーノシュクを採用しており、中立としている自治体が二つあるものの、ブークモールを公用筆記法とする自治体は一つもありません。これは、この地域に根差した独自の言語的伝統を強く反映しています。

現在43の基礎自治体から構成されていますが、2020年の県設立に際し、旧ホルダラン県と旧ソグン・オ・フィヨーラネ県に属していた多くの自治体が再編・統合されました。例えば、旧ホルダラン県のヨンダルやオッダはウレスヴァンに、グランヴィンはヴォスに編入され、フューサとオースは合併してビョルナフィヨルデンが新設されました。旧ソグン・オ・フィヨーラネ県では、フローラとヴォーグスイがキンに、バーレストランとライカンゲルはソグンダールに統合されるなど、大規模な自治体再編が行われました。ただし、旧ソグン・オ・フィヨーラネ県のホルニンダールは、ヴェストラン県ではなくムーレ・オ・ロムスダール県のヴォルダに編入されています。

県内の交通網は、壮大な自然地形を克服するために工夫されています。欧州自動車道路であるE16号線が東西に、E39号線が南北に主要幹線として走っていますが、フィヨルドによって陸路が寸断される箇所が多く、これらの間を連絡するために頻繁なフェリーサービスが不可欠となっています。鉄道網としては、首都オスロと県庁所在地ベルゲンを結ぶ重要な大動脈であるベルゲン線が県内を通過し、そこから分岐してフロムへと向かう風光明媚なフロム線も運行されています。かつて存在したヴォスとグランヴィンを結ぶハルダンゲル線は、1989年にその役割を終えました。空路については、ベルゲン空港が国際線・国内線の主要拠点であり、その他にもフローレ空港、ソグナル空港、フォルデ空港、サンダネ空港、ストルド空港など、民間の定期便が利用できる空港が複数あり、国内外からのアクセスを担っています。

ヴェストラン県は、フィヨルド、山々、氷河、湖といった壮大な自然景観と、ニーノシュクを主とする独自の言語文化が融合した、ノルウェーでも特に個性的で魅力あふれる地域です。その圧倒的な自然美は、多くの観光客を引きつけ、地域の経済や文化に活気をもたらしています。

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