ヴェルラム伯爵

ヴェルラム伯爵

ヴェルラム伯爵（Earl of Verulam）は、イギリスの伯爵位であり、連合王国貴族の爵位です。元々はラッキン準男爵（のちグリムストン準男爵）およびグリムストン子爵を前身とし、1719年にウィリアム・グリムストンが叙位されたことに始まります。数ある英国貴族の中でも、イングランド、スコットランド、アイルランドの爵位を併せ持ち、さらにグレートブリテン貴族および連合王国貴族の爵位も保有するという、非常に珍しい状態を維持しています。

歴史

ラッキン家の興隆

ラッキン家は、元々はエセックス地方に住むヨーマンでしたが、15世紀中葉から次第にジェントルマンを自称するようになりました。その祖であるウィリアム・ラッキン（William Luckyn, 1594-1660）は、リトル・ウォルサムに地所を購入するとともに、1628年頃にはイングランド準男爵位として、エセックス州リトル・ウォルサムの準男爵（Baronet, of Little Waltham, in the County of Essex）を得ました。

2代準男爵カペル（1622-1680）は、長期議会におけるハリッジ選挙区選出の議員を務めています。その孫にあたる4代準男爵ハーボトル（1683–1737）が男子なく死去すると、準男爵位は弟のウィリアムが継承しました。

グリムストン家の財産の継承

5代準男爵ウィリアム（1684–1756）は、準男爵を相続する以前の1719年にアイルランド貴族としてグリムストン子爵（Viscount Grimston）およびダンボイン男爵（Baron Dunboyne）に叙せられました。彼はさらに、大叔父にあたる第3代グリムストン準男爵の死に伴って地所と財産を相続した際、その姓を「ラッキン」から「グリムストン」に改姓しています。初代子爵は19人の子供をもうけ、爵位は存命の次男ジェームズおよびその子ジェームズ・バックナルの順で継承されました。

3代子爵ジェームズ・バックナル（1747-1808）は庶民院議員として活動後、1790年にグレートブリテン貴族爵位のハートフォード州におけるゴーレムベリーのヴェルラム男爵（Baron Verulam, of Gorhambury in the County of Hertford）を授けられたため、以降の歴代当主は自動的に貴族院における議席を確保することができました。

伯爵家としての歴史

その子であるジェームズ・グリムストン（1775-1845）は、襲爵の前年に母方のいとこからスコットランド貴族爵位のフォレスター卿を相続しています。彼は続く1815年には連合王国貴族としてヴェルラム伯爵（Earl of Verulam）に昇叙するとともに、あわせてグリムストン子爵（Viscount Grimston）を授けられました。そのため、初代伯以降の歴代当主は英国貴族の持ちうる5種類すべての爵位を保持する状態となりました。

2代伯ジェームズ（1809-1895）は、侍従たる議員やハートフォードシャー統監を務めたほか、熱心なボクシング愛好家としても活動しました。その孫にあたる4代伯ジェームズ（1880–1949）は電気工学技師であったことから、電気ケーブルメーカーのエンフィールドケーブル社を設立しています。その子である5代伯ジェームズ（1910-1960）も同社を率いる実業家でしたが、彼には子がなかったために爵位は弟のジョン（6代伯）が相続しました。

その息子である7代伯ジョン（1951-）がヴェルラム伯爵家の現当主であり、一族の邸宅であるゴーレムベリー・ハウスに居を構えています。一族のモットーは「節度あるは無難なり（Mediocria Firma）」です。

現当主の保有爵位

現当主である第7代ヴェルラム伯爵ジョン・ダンカン・グリムストンは、以下の爵位および準男爵位を有しています。

第7代ヴェルラム伯爵 (7th Earl of Verulam) (1815年)
第10代グリムストン子爵 (10th Viscount Grimston) (1719年)
第7代グリムストン子爵 (7th Viscount Grimston) (1815年)
第16代コーストーフィンのフォレスター卿 (16th Lord Forrester of Corstorphine) (1633年)
第10代ダンボイン男爵 (10th Baron Dunboyne) (1719年)
第8代ハートフォード州ゴーレムベリーのヴェルラム男爵 (8th Baron Verulam, of Gorhambury in the County of Hertford) (1790年)
* 第14代リトル・ウォルサムの準男爵 (14th Baronet, of Little Waltham, in the County of Essex) (1628/29年)

法定推定相続人は、現当主の息子であるグリムストン子爵（儀礼称号）ジェームズ・ウォルター・グリムストン（1978-）です。さらに、その息子のジョン・イニス・アーチー・グリムストン（2010-）が法定推定相続人の法定推定相続人となっています。

もう一度検索