一中節

一中節（いっちゅうぶし）とは

一中節は、浄瑠璃の一形態であり、古曲の一つとして国の重要無形文化財に指定されています。この芸術は、初代都太夫一中によって1670年代から1700年代初頭にかけて京都で創り出されました。彼は、従来の浄瑠璃にあたる長所を取り入れつつも、新たに温和で叙情的な表現を目指してこのスタイルを発展させました。

特徴

一中節の大きな特徴は、その上品で落ち着いたトーンです。使用される三味線は中棹で、全体を通じて優雅さや重厚感が表現されています。初めは上方の御座敷浄瑠璃として広まり、多くの人々に親しまれましたが、その後江戸に伝わり、歌舞伎の伴奏音楽としても活用されました。現代では、再び素浄瑠璃としての専門分野に集約され、特に東京での伝承が維持されています。

家元と名人たち

一中節の伝承は、家元制度によって引き継がれています。家元は歴代「都一中」を称し、現在は十二代目が在位しています。近年において名手として名を馳せた人物には、二代目都一広や都一いき、宇治紫文がいます。さらに、三味線の名手には十一代都一中が挙げられます。一中節の流派には、都一中を家元とする「都派」のほかに、箏の演奏に精通した「宇治派」や「菅野派」が存在し、それぞれ独自の活動を展開しています。また、一中節は1993年に重要無形文化財に指定され、関係者は総合認定を受けています。特に人間国宝として認定された者には、浄瑠璃が都一広（二代目）、都一いき、宇治紫文（七代目）などがあり、三味線では都一中（十一代目）、宇治文蝶がいます。2010年時点では、現役の名手として宇治紫文と宇治文蝶の二人が宇治派で活躍しています。

演目について

一中節には多くの演目があり、主に通称で親しまれています。以下に、いくつかの代表的な演目を紹介します。

• - ア行: 葵の上、安宅勧進帳、浦島、神楽高砂など。
• - カ行: 家桜傾城姿、岩根の松、絵島生島、お夏笠物狂など。
• - サ行: 塩竈、釈迦八相記、千手重衡、隅田川舟の内など。
• - タ行: 泰平船尽、高砂松の段、月影、道成寺など。
• - ナ行: 那須野、法の舟など。
• - ハ行: 橋弁慶、初音、花照姫道行、武勇万歳など。
• - マ行: 松襲、松島八景、恵の春、桃の寿など。
• - ヤ行: 山伏摂待、夕霞浅間嶽、熊野など。
• - ラ行: 頼光衣洗の段など。

一中節は、もともと上方の伝統芸能として根付いていましたが、その洗練された表現力は、現代の浄瑠璃の中で独自の地位を築いています。さらに、この芸術は、代々の家元や名手によって受け継がれ、後進にも影響を与え続けています。そのため、一中節は、伝統文化の重要な一翼を担い、今もなお多くの人々に愛されています。

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