都一中

都一中（みやこ いっちゅう）

都一中とは、一中節における三味線方の名跡であり、代々都派の家元が継承してきました。その歴史は、江戸時代中期に初代都一中によって一中節が創始されたことに始まります。

各代の都一中

初代 都一中

慶安3年（1650年）に生まれ、享保9年（1724年）に没した初代都一中は、本名を恵俊といい、都太夫一中とも呼ばれました。浄土真宗本願寺派明福寺の住職の次男として生まれましたが、還俗して芸の道へ。当初は幇間として活動し、後に浄瑠璃太夫となりました。1706年には大坂の舞台にも出演しています。

師については諸説ありますが、山本角太夫に師事した説が有力です。近松門左衛門の兄であるという説は俗説とされています。多くの弟子を育て、中には二代目一中となった実子の若太夫や、豊後節の宮古路豊後掾などがいます。

二代目 都一中

初代都一中の実子である若太夫が、父の死後に二代目を襲名しました。その後、京太夫一中、京太夫和泉掾と名乗りましたが、生没年は不詳です。

三代目 都一中

寛保3年（1743年）に生まれ、文化3年（1806年）に没しました。初代の門下であり、都秀太夫千中の名で森田座などで活動しました。

四代目 都一中

初代の義理の息子であり、金太夫三中、吾妻路宮古太夫を経て二代目の没後に三代目を襲名しましたが、生没年は不詳です。

五代目 都一中

宝暦10年（1760年）に生まれ、文政5年（1822年）に没しました。本名は千葉嘉六。五代目以前との血縁関係や師弟関係は不明です。吉原で男芸者をしていましたが、吾妻路宮古太夫から五代目を襲名。中村座での評判は芳しくなく、河東節の三味線方である三代目山彦新次郎（後の初代菅野序遊）と新曲発表に力を入れました。

六代目 都一中

生年は不詳で、天保5年（1834年）に没しました。俗称は「大野万太」。五代目の門下であり、二代目都千中が六代目を襲名しました。

七代目 都一中

生没年不詳。俗称を「お菰の一中」といい、五代目の門下でした。栄中、河六、半中等を経て1847年に六代目を襲名しました。

八代目 都一中

嘉永元年（1848年）に生まれ、明治10年（1877年）に夭折しました。千葉屋（足袋屋とも）仙之助といい、六代目の従孫にあたります。若くして七代目を襲名しましたが、病弱のため早世しました。

九代目 都一中

生没年不詳。八代目の実子であり、千葉屋仙助を名乗りました。名跡を相続したのみで、実質的な活動はありませんでした。

十代目 都一中

慶応4年（1868年）に生まれ、昭和3年（1928年）に没しました。本名は伊東楳太郎。浅草花川戸の出身で、幼少から音曲に親しみました。1881年に十代目を襲名し、中村樓で襲名披露を行いました。日本演芸矯風会技芸員や東京音楽学校邦楽調査掛嘱託を務め、宮薗節家元を兼任した時期もありました。妻は月岡芳年の養女である小林きんです。

十一代目 都一中

明治39年（1906年）に生まれ、平成3年（1991年）に没しました。本名は小林清子。古曲会理事長を務めました。父は十代目都一中。幼少より長唄、河東節、宮薗節など幅広く邦楽を学び、都千朴の名で一中節の道へ。都一花、都一広に師事し、1947年に十一代目を襲名しました。芸術選奨文部大臣賞、文化庁芸術祭大賞、モービル音楽賞を受賞し、1984年には人間国宝に認定されました。作曲には「水の上」があり、LPレコード「一中節古典名作選」をリリースしています。

十二代目 都一中

十二代目については、別項を参照してください。

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