一塩化ヨウ素

一塩化ヨウ素：性質、反応、用途

一塩化[ヨウ素]は、塩素とヨウ素が1対1の比率で結合した無機化合物です。赤褐色の液体または結晶として存在し、α型とβ型の2つの同質異像（結晶構造）を持ちます。それぞれの融点はわずかに異なり、α型は27.2℃、β型は13.9℃です。β型は-10℃から5℃の間でしか安定的に存在しません。

生成と反応

一塩化ヨウ素は、ヨウ素の結晶に塩素ガスを反応させることで得られます。この反応は、次のような化学式で表されます。

I₂ + Cl₂ → 2ICl

反応で生じる茶色の蒸気を冷却することで、液体の一塩化[ヨウ素]]を得ることができます。また、塩素を過剰に加えることで、可逆的に三塩化[[ヨウ素]を生成することも可能です。

2ICl + 2Cl₂ ⇌ I₂Cl₆

一塩化ヨウ素は、多くの金属と激しく反応します。カリウム、スズ、アルミニウム、水銀、銅、砒素、赤リン、テルルなどは特に反応性が高く、塩化物とヨウ化物を生成します。一方、ナトリウム、マグネシウム、ニッケル、硫黄などとは穏やかに反応します。

[水]]に溶解すると加水分解し、次亜ヨウ素酸(HIO)と[[塩酸]を生成します。

ICl + H₂O ⇌ HIO + HCl

有機溶媒への溶解性も高く、無極性溶媒(四塩化炭素、二硫化炭素など)では褐色、有極性溶媒(メタノール、エーテルなど)では黄色を呈します。

物理的性質

外観: 赤褐色液体または結晶
融点: α型 27.2℃、β型 13.9℃
結晶構造: α型(針状)、β型(板状)
溶解性: 水、多くの有機溶媒に可溶

用途

一塩化ヨウ素は、主に以下の用途に用いられます。

1. ヨウ素価測定: ウィイス法による油脂のヨウ素価測定に用いられます。これは、油脂中の不飽和結合の量を測定する重要な分析手法です。

2. 有機合成: 芳香族ヨウ素化合物の製造においてヨウ素供給源として機能します。また、炭素-ケイ素結合の切断など、様々な有機反応に用いられ、重要な役割を果たします。

3. アルケンへの付加: アルケンの二重結合に塩素とヨウ素を含むアルカンを付加させる反応にも用いられます。この反応は、アジ化ナトリウムなどの存在下で行われることが多く、より複雑な有機化合物の合成に繋がります。

RCH=CHR' + ICl → RCH(I)-CH(Cl)R'

RCH(I)-CH(Cl)R' + NaN₃ → RCH(I)-CH(N₃)R'

安全性

一塩化ヨウ素は、強い反応性を示すため、取り扱いには注意が必要です。適切な保護具を着用し、安全な実験環境下で使用することが重要です。

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