一宮寺

一宮寺（いちのみやじ）

香川県高松市一宮町に位置する真言宗御室派の寺院、一宮寺は、神毫山大宝院と号し、四国八十八箇所霊場の第八十三番札所として広く知られています。本尊は聖観音菩薩で、その慈悲深いお姿は多くの巡礼者たちを魅了しています。また、讃岐一宮である田村神社に隣接しているという地理的な特徴も持ち合わせています。

歴史と変遷

寺伝によれば、一宮寺は天平年間（701～704年）に義淵によって法相宗の寺院として創建され、大宝院と名付けられたと伝えられています。その後、和銅年間には行基によって堂宇が改修され、讃岐一宮・田村神社の第一別当として一宮寺と改称されました。

空海（弘法大師）は、大同年間（806～810年）に伽藍を整備し、寺院を真言宗に改宗。高さ106cmの聖観音菩薩像を刻んで安置したことが、現在の寺院の姿を決定付ける大きな出来事となりました。

天正2年（1574年）には、阿波三好軍と香西氏の間の戦火によって焼失しましたが、宥勢大徳によって中興されました。歴史書『南海治乱記』にはこの戦火による焼失が記されていますが、一宮寺の公式ホームページには長曾我部元親の軍による焼失と記載されている点は注意が必要です。しかしながら、『讃岐一宮盛衰記』など、他の史料からは、長曾我部元親の支配下では被害を受けず、豊臣秀吉による領地没収によって被害を受けたとする説が有力です。天正期の四国各地の寺院で、長曾我部元親による焼失という伝承が多く見られますが、必ずしも史実と一致するとは限りません。

延宝7年（1679年）、高松藩主・松平頼常によって田村神社が両部神道から唯一神道に改められたことを契機に、それまで12あったとされる宮寺が廃止され、一宮寺だけが存続が許されました。これに伴い、神社と一体であった一宮寺は現在地に移転。別当寺としての役割を解かれ、聖観音菩薩像は一宮寺の本尊となり、讃岐一宮であった神社の四国八十八箇所83番札所の役割を引き継ぎました。明治初期の神仏分離よりも200年以上も前に、神仏分離が行われたという特異な歴史を持っています。

伽藍と境内

一宮寺には、仁王門、本堂をはじめ、大師堂、護摩堂、菩薩堂、納骨堂舎利羅などが配置されています。

本堂: 毎年8月10日には千日会が開催され、前立本尊が開帳されます。
大師堂: 奥には大師像が安置されており、予約不要で写経体験ができます（午前9時～午後4時）。毎年7月土用丑の日にはきゅうり加持が行われます。
護摩堂: 近年新築された護摩堂では、不動[[明王]]像を拝顔でき、毎月28日には護摩焚きが行われています。
菩薩堂: 阿弥陀如来と二十五菩薩が祀られています。
納骨堂舎利羅: 2020年12月に落慶した鉄筋コンクリート造りの建物です。

境内には、薬師如来の祠（地獄の釜と呼ばれ、悪いことをした人が頭を入れると抜けなくなると伝わる）、三基の石塔からなる一宮御陵（孝霊天皇、百襲姫命、五十狭芹彦命のものと伝えられる）、忠司の句碑などが存在し、歴史の深さを物語っています。西門から入ると、本堂、大師堂、護摩堂、納経所、鐘楼、一宮御陵へと順に巡ることができます。

アクセス

鉄道: 琴電琴平線 一宮駅下車 (徒歩約900m)
バス: ことでんバス 鹿角線 「一宮」下車 (徒歩約300m)
車: 香川県道12号三木国分寺線、高松自動車道 高松檀紙IC/高松西ICから約3.6km

前後の札所

82番札所 根香寺から約11.9km、84番札所 屋島寺まで約13.6km

一宮寺は、歴史と自然に囲まれた静寂な空間で、多くの巡礼者や観光客に安らぎと心の平安を提供しています。四国八十八箇所霊場巡礼の際には、ぜひ訪れてみてください。

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