義淵

義淵（ぎえん・ぎいん）

義淵は、643年に生まれ728年に没した奈良時代の法相宗の僧です。彼についての詳細な記録は『続日本紀』や『扶桑略記』に残されています。俗姓は記録によって異なり、一般には市往氏とされていますが、別の文献では大和国高市郡出身で阿刀氏と記されています。

人物と経歴

彼の出生については、両親が長年にわたって観音菩薩に祈願した結果授かった子供であるとされており、天武天皇によって皇子と共に岡本宮で育てられました。出家後、元興寺に入り、唯識と法相の教えを学びました。さらに、彼は龍蓋寺（現在の岡寺）や龍門寺を含む五つの龍寺を創建したことで知られています。

文武天皇の3年目（699年）、義淵は学問の成果を認められ、稲1万束を賜りました。また、大宝3年（703年）には僧正に任ぜられ、元正天皇や聖武天皇のもとで内裏に供奉する役割を果たしました。その後、727年には先代の功績が評価され、岡連の姓を賜り、兄弟に仕えることを許されたことも記録されています。

弟子と影響

義淵には多くの著名な弟子がおり、玄昉や行基、隆尊、良弁などが彼の教えを受けました。また、道慈や道鏡といった僧侶も義淵の門下で学び、彼の教えは多くの弟子に引き継がれていきました。

伝説的逸話

義淵に関連する伝説のひとつには、醍醐寺本の『諸寺縁起集』に記載された逸話があります。この話によると、義淵は修円と共に、憤怒のあまり悪龍に憑かれた大津皇子を調伏し、彼のために龍峯寺を建立したとされています。義淵の龍調伏伝説は、他にも多くの異なるバージョンが存在します。特に、龍に変じた人物が草壁皇子に変わるという逸話が伝えられており、龍門寺など、龍に名を冠した寺の縁起譚として広まっていきました。このような逸話は平安時代においても広汎に伝播し、多くの人々に親しまれていました。

彼の存在は、当時の日本において重要な宗教的な影響を与えただけでなく、その後の仏教の発展にも寄与するものでした。義淵は僧侶としての活動だけではなく、文化や伝承の面でも多くの足跡を残し、多様な逸話を通じて後世に語り継がれています。

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