一戸直蔵

一戸直蔵について

一戸直蔵（いちのへ なおぞう、生年1878年8月14日 - 死亡1920年11月26日）は、日本の著名な天文学者であり、科学ジャーナリストとしても知られています。彼は日本において最初の変光星の観測者および研究者として、その名を刻んでいます。また、彼が創刊した『現代之科学』は反アカデミズムの立場を取り、科学の普及に広く貢献しました。

生い立ちと学問の道

青森県西津軽郡越水村吹原（現在のつがる市）の出身である一戸は、学問を嫌う父とすれ違い、家出という道を選びました。数々の試練を経て、東奥義塾を経て旧制第二高等学校に進学を果たしましたが、仕送りが途絶えたため一時的に郷土に戻り教員として勤めることになります。そして、1903年には東京帝国大学理科大学星学科を卒業します。

アメリカでの研究と帰国

その後、彼は東大大学院で天文学を学びました。しかし、私設天文台を建設することを自身の使命とし、1905年には私費でアメリカに渡り、シカゴ大学のヤーキス天文台に入ります。ここで、エドウィン・ブラント・フロストに天体物理学を、シャーバーン・バーナムやエドワード・エマーソン・バーナードから観測天文学について学びました。

ヤーキス天文台での2年間、一戸は熱心に観測を行い、変光星に関する多くの論文を発表しました。しかし、私設天文台の建設が彼の頭から離れず、1907年に帰国することを決意します。帰国後は文部省測地学委員会の嘱託となり、東京天文台の観測主任や東京帝大の講師も兼任するようになります。

天文学界の軋轢と独立

その後、私設天文台を台湾の新高山に設置することを図り、また東京天文台の移転についても提案しました。これにより、当時の東京天文台長である寺尾寿との対立が生じ、最終的には1911年に理学博士となるものの、寺尾との内部争いに敗れ、東大講師の職を解任され、東京天文台も退官することになりました。

ジャーナリズムの道と晩年

辞職後は大学の講師を続ける傍ら、現代之科学社を設立し、学術雑誌『現代之科学』を発行することになりました。この雑誌は英国の『ネイチャー』やアメリカの『サイエンス』をモデルにしていますが、一般の読者にとっては難解な内容が多かったため、経営は非常に厳しいものでした。過労から結核を患い、彼は「人生の最後とはコンナものだ」と語り、42歳で生涯を閉じました。

家族と後世の業績

一戸の父、一戸友作は豪農として知られ、村の戸長や郡会議員として名を馳せました。また、彼の妻であるイ子は政治家の娘であり、1904年に結婚し、一女五男をもうけました。一戸直蔵の業績を記念して、小惑星(5532)が彼の名にちなんで命名されています。

文献と評伝

一戸についての詳細は中山茂による『一戸直蔵』にまとめられており、彼の功績は日本のアマチュア天文史においても高く評価されています。また、彼の翻訳書としてはスヴァンテ・アレニウスの著作があり、多くの人々に影響を及ぼしました。

一戸直蔵は、科学の分野だけでなく、社会全体において重要な影響を持った人物として、今なおその業績が語り継がれています。

もう一度検索